組織

企業の成長には、中核社員の介護離職率減少が鍵!

超高齢化社会と高齢化社会との違いを明確に理解している方は、そんなに多くないかもしれません。高齢者の定義は様々ですが、人口統計においては65歳以上を高齢者とて計算します(厳密に言うと、65歳以上を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と言います)。そして、高齢化社会(全人口の7%以上が高齢者)、高齢社会(全人口の14%以上が高齢者)、超高齢化社会(全人口の21%以上が65歳以上)と呼び方が変わります。

全人口の21%以上を65歳以上の方が占めている日本。同じように高齢化率の高い国として挙げられるアメリカ合衆国、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデンに肩を並べるどころか、どの国よりも先に「超高齢化社会」に突入しているのが現状です。

今回は、超高齢化社会から増加が予測される「介護離職」について、その現状と企業における対策を紹介していきたいと思います。

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2025年問題。景気を支える労働者の数が減る日本

では、超高齢化社会に突入するとどういう影響が考えられるのでしょうか。2025年には、団塊の世代が後期高齢者となり、高齢者の割合は30%に達するのは確実で、介護や看護が必要な人口は急速に増加。厚生労働省によれば、医療保険給付は約54兆円に膨れ上がります。さらに年金などの社会保障費は150兆円に増えると言われており、このような問題を「2025年問題」と言います。

医療・介護の問題から様々な社会問題が発生することが危惧されており、そのひとつが「介護離職」にともなう労働人口の減少です。この超高齢化社会の波が、企業にとって重要な戦力である中核社員を「介護離職」へと追い込んでいるのです。あとたった7年後の未来です。企業も早急に打開策を講じる必要があります。

介護離職者数9万9000人

上記は、2016年10月から2017年9月までに総務省が行った調査結果です。2012年調査時の10万1000人と比べても、ほぼ横ばい。年代別では40代が18%、50代が37%と、介護離職者の半数以上を占めています。

また、仕事と介護を両立している人の数は346万人。いつ会社を退職して介護に専念しなければいけなくなるかわからない介護離職予備軍もたくさんいるのです。そうした現状を打開するために、国が2015年に公表した緊急対策「介護離職ゼロ」。この具体的な取り組み内容や現状をご紹介します。

高齢者人口の増加は要介護者の増加に起因

介護者の多くは、両親の介護をしているため、40〜50代の企業の中核を担う労働者が6割以上で、企業の管理職や職責の重い仕事に従事している方も少なくありません。こうした現状を解決するためにスタートした「介護離職ゼロ」。仕事と介護を両立できる社会の実現を目指して、法制度や高齢者施設の整備が進行しています。

法制度の中でも要介護状態にある家族1人につき最大93日までの休みを3回に分けて取得できる「介護休業制度」は、両親の健康状態が急変した際などまとまった休みが必要な場合に便利です。その他にも、要介護状態の家族1人につき1年で5日の休暇を取得することが可能な制度もあります。

しかし、このような制度を使いたくても利用しづらい、というのが介護者の本音であり、日本社会の現状ではないでしょうか。「会社に迷惑をかけてしまう」「制度を利用しづらい」といった後ろめたいなどの理由や「制度を会社が認めてくれない」など就業意欲があるのに離職せざるおえない介護者が、特に中核社員で増えているのです。

これは、労働人口が減少している企業側にとっても大きな損失なのは火を見るよりも明らかですが、旧態依然とした日本の働き方を美徳する風習もいまだ根強いのも事実。介護離職者を減らす介護休業制度の浸透や新たな働き方への取り組みが今、企業には求められています。

介護と仕事の両立や介護離職後の苦悩

では、次に介護と仕事の両立の難しさや「介護離職」をした側の苦悩・苦労について言及します。

両立できるかどうかは企業側の対応に左右する

介護と仕事の両立をする難しさのひとつは、着替えや食事、排泄などの介助や介護サービス・施設への送迎、入退院の手続き、金銭の管理など時間的に拘束されることにあります。

しかし、後述するテレワークやフレックスタイムなど多様な働き方が認められている企業であれば、クリアにできる要因が多いのも事実です。就業規則等に縛られ、結果として欠勤・有給休暇の取得が多くなってくると、身体的・精神的ストレスが増大し、介護離職の原因になります。

「介護うつ」を発症するケースも多い

仕事と介護の両立に悩み、直面するかもしれないのが「介護うつ」。介護に追われることで不安や焦りが増幅。そうした状況が精神面へ影響を及ぼし、気分が落ち込みやすくなってしまいます。また離職前にも介護と仕事の両立が出来ずに「うつ」を発症してしまい、結果的に離職してしまうケースも存在します。

介護経験者でなくては、なかなかこのような事情を理解するのが難しいものです。離職を防ぐためには、周囲の理解が必要です。まずは企業としてしっかりと相談相手になる必要があります。そして、介護サービスの利用を勧めるなど、離職せずに仕事と介護を両立できる環境づくりに努めることも大切です。介護うつ発症を引き起こす原因は、未然に防げることがたくさんあります。

介護離職すると再就職は困難、経済的困窮もつづく

次に介護離職をしてしまったケースの問題について指摘します。それは、再就職です。三菱UFJ&コンサルティングが介護離職した40代〜50代(約3000人)を対象にした調査によると、社会に復帰しようとしても、介護離職前のように正社員として再就職できる人は49.8%。全体の24.5%が介護を終えても無職のままです。

また介護期間の平均は約5年と言われています。なかには、10年以上の介護に直面する方もいるのです。そうした方々の収入源の確保は難しく、要介護者の年金だけが世帯収入という場合も少なくありません。

自己都合退職でも介護が理由であれば、失業保険の給付を受けることはできますが、最大で150日しか受給期間がありません。労働人口が減少しているにもかかわらず、労働意欲のある人が困窮していく……。このようなことが近い将来待ち受けているかもしれません。

この数値を見てもわかるように、再就職の険しい道のりが待ち受けているのです。再就職支援は、これからの日本にとって大きな課題になっています。

離職を選択せずに介護と仕事を両立するために

今後、企業の経営・成長戦略において、人材確保がもっとも重要な課題になりますが、離職者を減らすことも大きなメリットとなります。介護は、現在直面していない方でも将来的には関わる問題です。

優秀な人材がどういう企業で働きたいと感じるか?それはワークライフバランスが確保でき、多様な働き方が実現できる企業になるはず。介護と仕事、育児と仕事などライフステージによって働き方を選択できる、そのような働き方が理想ではあります。そのような従業員が働きがいを創出するために、現在多くの企業が導入している制度を紹介していきます

時間的余裕を生み出すテレワーク

仕事と介護を両立するためには、オフィスだけの勤務では解決できないことがあります。そこで、導入が進んでいるのが「テレワーク」。ICT (情報通信技術)を活用して、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方の総称で、厚生労働省も普及拡大に力を入れています。

「話し声などに邪魔されずに業務に集中できる」「タイムマネジメントの意識向上」「自律・自己管理力アップ」「介護・育児との両立が可能」というのがメリット。今まで通勤に取られていた時間を使えるため、心に余裕を持つことができます。精神的に苦労の多い介護に適している働き方として、テレワークの導入を検討している企業は増えています。

●テレワークとは?「働き方改革」を推進する一手

介護との両立もしやすいサテライトオフィス

サテライトオフィスの「サテライト」は「衛生」という意味で、本拠地から衛生のように各地に存在するオフィスのこと。「都市型」「郊外型」「地方型」に分けられ、それぞれにメリットがあります。

特に仕事と介護の両立を目指している介護者には、通勤時間の削減や在宅勤務では難しい仕事への集中ができるのもサテライトオフィスの魅力です。企業にとって重要な中核社員の確保にも繋がるため、サテライトオフィスの設立が進んでいます。

●サテライトオフィスとは?そのメリットとデメリットを解説

就業意欲を大切にするフレックスタイム

各企業の就業規則から外れない範囲で始業と終業時間を決めて働ける「フレックスタイム制度」。家族の介護をしなければいけないが、午後からなら働ける方などにとって、フレックスタイムでの勤務は両立しやすいメリットがあります。

就業意欲が高い従業員がいつまでも働き続けられる環境は、離職率の低下にも直結。しっかりと勤怠管理をしなければいけませんが、導入するメリットはとても大きい働き方です。

ツールひとつで広がる可能性

時間や場所に限定されない働き方の実現には、ITツールの導入が欠かせません。例えば、デスクトップパソコンでは不可能だった移動が、ノートパソコンやタブレットでは可能。情報共有もクラウド上で行うことで、在宅勤務もサテライトオフィスでの勤務も気軽にできるようになります。

同時にクラウド勤怠管理システムの導入も働き方の可能性を広げてくれる。ツールひとつで仕事と介護の両立が、より具体的に実現できるのです。制度だけではなく、ツールも含めて導入を検討することが、介護に追われている社員のサポートに繋がります。

競争力の高い企業であるために働き方改革を!

成長企業であるためには、優秀な人材の確保が必須です。時間を掛けて培ってきたノウハウを活かし、大きな成果をもたらしてくれる。そんな中核社員の介護による離職は、企業として避けなければならないこと。超高齢化社会の波は確実に押し寄せてきます。だからこそ、今後に備えて早め早めの労働環境の整備を進めなければいけません。

先ほどご紹介したような「テレワーク」や「サテライトオフィス」「フレックスタイム」などの導入が、介護離職率の減少に繋がる。それは、高い競争力を持つ企業であり続けられることも意味しています。ITツールの導入やICT環境の構築によって様々な場所で多様な働き方ができるようになる現代だからこそ、働き方改革を行っていく価値はとても高いのです。

<参考>
日本の超高齢社会の特徴 | 健康長寿ネット
平成 29 年就業構造基本調査 結果の概要 | 総務省統計局
第519回 介護離職者数、政策前とほぼ変わらず!介護休業制度を利用しづらくさせる原因は「職場の空気」? | みんなの介護
平成 29 年就業構造基本調査結果 要約 | 総務省
雇用保険や失業給付などをFPに相談 | 保険クリニック

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