働き方

離職率の計算方法や平均値、高い企業、低い企業の特徴は? 定着率をあげるためにやるべきコト

超高齢社会を迎えた日本。2025年には最も人口が多い1947年〜1949年生まれの人々、いわゆる“団塊の世代”の年齢が後期高齢者である75歳以上に到達し、さまざまな社会問題が発生します。

そのひとつが生産年齢人口の減少による労働力不足です。2025年には15歳から64歳の生産年齢人口は全人口の60%を下回ることが確実視されています。企業は社員に対し、「お前の代わりなんていくらでもいる」なんて古臭いことを言える立場ではないどころか、「限られた人材からいかに社員を確保するか」「社員の定着率を上げ(離職率を下げる)、長く働いてもらうにはどうするか」「限られた人的リソースで、いかに生産性を向上させるか」が求められているのです。
今回は、今後の企業の命運を左右する離職率について、計算方法や平均値を解説し、離職率が高い企業、低い企業の特徴をまとめます。

離職率の定義と計算方法

離職率とは、ある時点の企業の在籍人数に対し、一定期間(一般的には1年、あるいは3年)のうちにどれだけの人が退職したかを示す割合のことです。離職率の高低から、その企業に社員がどれだけ定着しているかがわかるため、離職率は新入社員が企業を選ぶ指針のひとつにもなります。

生産年齢人口が減少している現在、離職率は企業にとって、未来を左右する非常に重要なファクターとなります。

しかし、「全従業員のうち、1年間で退職した社員の割合」や「新卒社員の3年以内の離職率」など、比較する期間や基準によって算出される数値や意味が異なってきます。また、離職率が高い=悪い企業の図式は必ずしも成り立たないことも理解しておきましょう

離職率の計算方法

では、実際に離職率の計算方法を確認しましょう。厚生労働省によれば、離職率の計算式は以下になります。

離(入)職率=「一定期間内の離(入)職者数」÷「1月1日現在の常用労働者数(年齢階級別は6月末日現在の常用労働者数)」×100

具体的な例を挙げましょう。

例1)2019年1月1日時点で100人の社員が在籍、同年に5人が退職しているA株式会社の場合

「一定期間の離職者数=5」「1月1日現在の常用労働者数=100」となるので、
「5÷100×100」の計算が成立し、離職率は5%となります。

例2)A株式会社が8人の新卒社員を採用したものの、3年以内に5人が退職していた場合

計算式は単純です。全体の新卒入職者の3年以内の退職者数が出ているので、「5÷8×100」となり、離職率は62.5%です。

では、この数字をどのように判断すればいいのでしょうか?

日本企業の離職率の平均値は14.9%

では、日本企業の平均離職率とA株式会社の離職率を対比してみましょう。

厚生労働省「平成29年雇用動向調査結果」よると、日本の平成29年度の離職率は14.9%。平成27・28年の離職率はともに15.0%であり、リーマンショックが起きた翌年の平成21年離職率が16.4%となっています。

<出典:厚生労働省「平成29年雇用動向調査」をもとにグラフを作成>

業種別の離職率を見ると、全体平均を大きく上回る業種・下回る業種が存在することがわかります。離職率が最も高いのは「宿泊業、飲食サービス業」(30.0%)、次いで「生活関連サービス業、娯楽業」(22.1%)、「サービス業」(18.1%)とつづきます。

一方で離職率が最も低いのは「複合サービス事業」で7.7%。ついで、建設業の8.4%、製造業の9.4%となっています。人手不足や不人気産業と指摘されることが多い建設業は、意外にも離職率は低い結果となっています。

A株式会社の場合、日本企業の平均離職率を比較するより、自社の産業別の平均離職率を目安とした方が、高低を正確に把握することができます。

新卒の離職率が重要な理由

上記で説明した離職率は、すべての年齢を含めた数値となっています。下記のグラフのように年齢によって離職率にはバラつきがあります。

<引用:厚生労働省「平成29年雇用動向調査」

上記は男性の年齢別離(入)職率になります。60歳以上の離職率が高くなっているのは、定年退職の離職を含んでいるためですが、18歳以下と20〜24歳は飛び抜けて離職率が高くなっています。この年齢は、いわゆる高卒、大卒の新卒者がメイン。大卒の3年以内の離職率に着目されるのは、25歳以上から定着率も高くなり、離職率が低くなるデータがあるためです。

<引用:厚生労働省「平成29年雇用動向調査」

女性の年齢別離職率も確認しましょう。60歳以上と24歳以下の離職率が高いのは男性と共通ですが、女性は男性より結婚・出産・育児というライフステージの影響が顕著に現れています。25歳〜39歳までの離職率が15%以上と高くなっていることがわかります。

離職率が高い業界・企業の特徴

つづいて、離職率が高い企業にはどのような共通点があるのでしょうか? 具体的な特徴を3つに分けて紹介したいと思います。

休暇がなかなか取得できない

休みをあまり取れない企業は、当然ながら離職率が高い傾向にあります。たとえば、離職率が最も高い「宿泊業・飲食サービス業」は、長期の休暇や年末年始に休業日を設けることが難しい業界です。同様に「教育・学習支援業」は、休日であっても部活や補講のために出勤する必要があります。その結果、身体を壊して退職を余儀なくされる人も少なくありません。

そして、休みを取ろうとした人を「みんな働いているのに……」と非難する旧態依然とした企業は、まだまだ多く存在します。「忙しいあまり、休みを取れない」、「休むことを“悪”とみなす」企業は、まさに劣悪な労働環境。従業員満足度が下がり、離職率が上昇することは確実です。

◎年次有給休暇の取得義務への対応とは?有給消化率と従業員満足・労働生産性の関係

人を育てる環境がない

離職率の高い企業では、人材を育成する環境が整っていません。それどころか、社員が辞めることを見越して、最初から多くの人数を採用する企業すら存在します。そんな企業の狙いは、離職率にある程度反映されているため、就職活動中の学生や転職希望者の間では避けられる要素のひとつにもなっています。

多様性のある働き方ができない

これまでの日本企業では、「女性は結婚したら辞める」「出産したら辞める」「親の介護で辞める」といったプライベートの面で、仕事を辞めざるを得ない人が多く存在しましたが、現在では男女問わず、出産や育児、介護など個人のライフステージに合わせて、働ける企業が増えています。例えば、テレワークやフレックス制度、時短勤務から企業に託児所が併設されているなど、勤務形態の柔軟化に関する制度が多く存在します。これまでは、「企業の環境に個人が合わせる」時代でしたが、今後は「個人の環境に合わせた勤務形態を選択できる企業」。つまりダイバーシティ経営の有無が、人材確保、定着率、従業員満足度に直結します。

離職率が低い業界、企業の特徴

では、次に離職率が低い業界や企業の特徴を見てみましょう。基本的には、離職率が高い企業の特徴の真逆と言えますが、その他にも特筆すべきことがあります。

休暇を取得しやすい

日本は有給休暇があっても、なかなか取得できない実情があります。その背景にあるのは、「自分だけ休むのが申し訳ない」、「そもそも業務が多すぎて休む余裕がない」といった理由です。そんな職場の空気を改善し、有休取得を奨励する企業は従業員満足度も高く、離職率の低下につながっています。勤務時間はしっかりと勤務したうえで、プライベートを充実させる……ワークライフバランスが整った企業こそが、働きがいのある企業と評価されています。

風通しの良い職場環境作りに取り組んでいる

退職の理由として、「職場の人間関係に関する悩み」を挙げる人も少なくありません。そのため、一部の企業では座席を固定せずにさまざまな社員とコミュニケーションを取れるよう促すフリーアドレス、ランチや飲み会の費用を一部負担する制度など、社員間のコミュニケーションを活発にするための制度を取り入れています。社員間のコミュニケーションが活発だと、メンバーのモチベーションが高まったり、良好なチームワークが育まれます。

選考の精度が高い

そもそも、離職率の低い企業はミスマッチを防ぐべく、選考の精度が高い傾向にあります。その方法のひとつは、早期で退職した社員の選考情報を振り返り、反省を次に活かすこと。たとえば「早急な採用が求められていたため、適性が見極められなかった」、「お互いの求めるものが微妙にすれ違っていた」といった点が出てくるかもしれません。また、業務内容や会社の理念を丁寧に説明することも重要です。面接時と入社後のイメージが異なっていたあまり、早急に「ここは合わない」と判断して退職される……なんてことも少なくなるはずです。

評価制度が明確

離職率が低い企業で働く従業員は、ひとりひとり正当に評価されています。これまでの日本企業では「年功序列」の考え方が根強く、どれだけ高い業績を出したとしても、正当な評価を得ることは容易ではありませんでした。しかし、年齢や勤続年数に関わらず、従業員個人を評価、賃金や職位が上がることは従業員のモチベーションアップにもつながります。

「離職率が高い=悪い企業」と決めつけるのは早計!

離職率が高い企業は、人材の入れ替わりが激しい企業です。ただ、それを一方的に「悪い企業」、「働きづらい企業」と決めつけるのは早計です。たしかに、離職率が低い企業には、良いイメージがあるかもしれません。その反面、「定着率が高い」、「平均勤続年数が長い」のは、人の流れが停滞化している証拠でもあります。
安定しながらも、成長率が伸びない企業は若手社員の成長を妨げます。どんなに高いパフォーマンスを出す若手社員でも、「上が詰まってるから昇進できない」と判断すれば、活躍の場を求めて別の企業に流れてしまうでしょう。そうなれば、結果的に企業には年齢の高い社員だけが残り、組織の活気はなくなってしまいます。
そう考えると、離職率が高い企業は決して悪いことばかりではないのです。定職率の高さに一喜一憂するのではなく、従業員が満足して働けるのか、やりがいを持って働いているのかに注目すべきです。

企業の成長には、従業員満足度が重要

近年、従業員の満足度の指標は、“ES”(Employee Satisfaction)として可視化されています。どんな社員でも、共通して求めているのは「職場への満足度」です。職場に満足している社員は前向きに仕事に取り組んでおり、従業員の生産性やパフォーマンスの向上につながります。やりがいに満ちた企業は外部からも魅力的に見えるため、「ここで働きたい」という求職者や転職希望者も増加する可能性もあります。また、社員満足度が高い企業には、社員同士で競い合う文化があり、新たなイノベーションが生まれることも。実際にこのESを上昇させ、業績アップを果たした企業の事例を見てみましょう。

1 on 1ミーティング/ヤフー株式会社

近年、さまざまな企業の間で注目されている1 on 1ミーティング。これは文字通り、上司と部下による1対1の面談です。ヤフー株式会社では、この1 on 1ミーティングを2012年から積極的に取り入れています。1 on 1ミーティングは、部下から業務の進捗や希望を聞くチャンス。もしも職場や業務について部下が不満を持っていた場合、異動や働き方の変更などを提案することもできます。ただ、最初から離職率の低下を目的とするのではなく、部下のモチベーションを高め、部下に「気にかけてもらっている」と印象付けて信頼関係を構築するといった段階があって初めて意味があります。

社内通貨/株式会社じげん

株式会社じげんは、感謝の気持ちとともに、社内通貨を送る制度を取り入れています。この制度は、月に1度、社内通貨とともに感謝の気持ちをメッセージカードで伝えるというもの。手書きのメッセージを直接送るのは、オフラインでの深いコミュニケーションを重視したとのことです。社内チャットなど便利なコミュニケーションツールが主流になる一方で、ヒューマンタッチなコミュニケーションの重要性を考慮した施策と言えるでしょう。社内通貨は、社内におけるコミュニケーションを可視化する方法のひとつです。離職率低下を目指し、社内で表彰制度を設けてモチベーションをアップさせる企業もありますが、組織を活性化させるのは、決して業績に貢献した社員だけとは限りません。どんなに些細であっても、誰かから感謝された社員は愛社精神や向上心が芽生えます。

女性支援制度/株式会社サイバーエージェント

出産・育児のライフイベントを経ても、女性が長く継続して働くことができる職場環境を目指しているサイバーエージェントは、2014年より女性支援制度「macalon(マカロンパッケージ)」を導入しています。「ママ(mama)がサイバーエージェント(CA)で長く(long) 働く」という略称です。この制度は女性特有の体調不良の際に月1回取得できる特別休暇“エフ休”、子どもの急な発病で看護が必要になったときに在宅勤務ができる“キッズ在宅”など、女性社員からの要望を受けて設けられたもの。優秀な社員に長く働いてもらえるためには、社員のニーズを聞き、制度として取り入れるのも満足度を上げるうえで重要です。

企業はいつまでも「選べる立場」ではない!従業員満足度を上げるための施策を考えよう

労働人口の減少により、企業と従業員の関係性は変化を続けています。企業に定着してもらうためには、社員の満足度を上げ、「ここで働き続けたい」と思ってもらうことが求められています。労働環境の改善や福利厚生の見直し、コミュニケーションの活発化を行い、社員が長く働ける環境づくりを目指しましょう。

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<参考>
労働統計要覧 | 厚生労働省
雇用同行調査:調査の結果 | 厚生労働省

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