働き方

新型コロナウイルスで相次ぐテレワーク。導入ポイントやセキュリティ対策、助成金を解説!

東京都の報道発表により更新

2019年11月に発生した新型コロナウイルス。外出禁止や海外渡航禁止・自粛など各国で感染拡大を防止する対策が実施されています。

日本国内では、医療提供体制の整備や全国の小中高に臨時休校を要請するといった対策が実施される中、経済活動の停滞を緩和するために多くの企業が実施しているのが「テレワーク」です。

ICT技術を活用し、場所を選ばない柔軟な働き方を意味するテレワークは、オフィスでの人口密集を避け、自宅にいながら業務を継続できるため、感染症拡大の予防と同時に生産性向上に有効とされています。しかし、これまでテレワークを取り入れていなかった企業が急に実施すると、各種システムの導入や従業員の勤怠管理など多くの課題が発生するでしょう。

今回は、効果的なテレワークの実現に向け、導入ポイントやセキュリティ対策、政府や自治体による助成金について解説します。応急処置としてのテレワークではなく、継続的なテレワークの実施環境を整えることで、緊急事態が発生しても柔軟な対応ができます。

テレワークとは

テレワークとは、「tele=離れた場所で」と「work=働く」を組み合わせた造語で、主に「在宅勤務」「サテライトオフィス勤務」「モバイルワーク」の3つの業務形態に分けられます。

在宅勤務:自宅を就業場所として仕事をする勤務形態
サテライトオフィス勤務:企業の本社・本拠地から離れた場所に設置されたオフィスを就業場所として仕事をする勤務形態
モバイルワーク:顧客先や移動中、カフェなどを就業場所として仕事をする勤務形態

働き方改革の推進に伴い、労働生産性の向上や従業員の多様な働き方を実現するために注目されています。

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テレワークが必要な背景とメリット

テレワークが日本国内で注目されるようになった背景には、いくつかの要因があげられます。働く場所を柔軟に選択できるテレワークのメリットと合わせて紹介します。

労働人口の減少と多様な働き方の実現

少子高齢化を背景にした労働人口の減少により、企業は人材確保が困難になっています。そのため、企業には育児・介護の負担を抱える女性や高齢者も柔軟に働ける環境を構築した、新たな働き手の雇用が求められています。また、限られた人材で生産性を維持するためにも、デジタル技術の活用や従業員満足度を向上させる取り組みが不可欠です。

政府はこれらの課題を解決するため、2019年4月1日より「働き方改革関連法」を順次施行しました。働き方改革への注目が高まる中で、多くの企業が取り入れたのがテレワークです。テレワークはプライベートの事情や障がい等で会社を辞めざるをえなかった従業員の働く場所の自由度を高め、ライフワークバランスの実現や離職率の低下、通勤時間の削減を可能にします。

また、以前まではオフィスでなければできない仕事が大半でしたが、デジタル技術の進歩によって大半の業務がテレワークで可能となりました。

感染症など不測の事態への対応

現在、世界各国で猛威を振るう新型コロナウイルス。人との接触による感染の恐れから、企業はオフィス内の人口密集や満員電車といった通勤を避ける対策が必要です。また、台風や地震などの自然災害の影響から、オフィスへの通勤が困難になった場合、企業活動を止めないためにも遠隔からの業務が重要になります。

感染症や自然災害など、予期せぬトラブル時への対応として、人との接触機会を減らし在宅での勤務を可能にするテレワークは、その対策のひとつになります。

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テレワーク実現に必要なシステム


テレワークを導入するには、ICT技術の活用が欠かせません。遠隔からでも普段の業務と変わりないパフォーマンスを維持するためにも、テレワークに必要なシステムを紹介します。

Web会議システム

従来は、会議のために社外からわざわざオフィスに戻ったり、顧客との打ち合わせのため場所をセッティングするなど会議のために多くの工数を割いていました。

しかし、Web会議システムを活用すれば、PCやタブレットなどのデバイスから場所にとらわれない会議・コミュニケーションが可能になります。現在は複数のデバイスで画面共有やチャットもできるシステムが登場しているため、テレワークを活用する従業員の業務効率を格段に向上させるでしょう。

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各種クラウドサービス

ICT環境の構築で重要になるのは、社外からでも業務に影響が出ないシステムやアプリケーションの活用です。インターネットを介してどこからでも利用できるクラウドサービスは、テレワーク実現において欠かせません。基幹システムをクラウド化したサービスは、遠隔から従業員の勤怠管理やタイムリーな経営管理、請求・支払い管理を実現。またコミュニケーションクラウドサービスの活用で、従業員同士のシームレスなコミュニケーション、データの送受信・共有も可能になります。

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ノートPC

テレワークで使用するPCの条件として、コンパクトなサイズ、軽量であること、長時間持続可能なバッテリーがあげられます。そのため持ち運びに適したノートPCは、テレワークの実現に重宝するでしょう。普段からノートPCを社内PCとして使用している企業でも、これからテレワークを導入する企業は、職種によってもノートPCの必要要件が異なるため、慎重な検討が必要です。

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テレワーク実現に必要なセキュリティ

テレワーク導入に細心の注意を払うべきが、セキュリティです。社外での業務は、企業の重要なデータを含むPCやシステムを持ち出すことになるため、情報漏えいのリスクがあります。Web会議やクラウドサービスの活用には、インターネットの接続が欠かせないため、外部からの不正アクセスやサイバー攻撃に注意しなければなりません。ここでは、テレワーク導入前に把握しておきたいセキュリティ対策を見ていきましょう。

BYOD促進にも役立つ「リモートアクセス」

リモートアクセスとは、自宅や外出先などオフィス外から社内ネットワークやPCに接続すること、またはそれを実現するITシステムを指します。リモートアクセスは、社内システムにアクセスするため、社外にデータを持ち出さずに業務を行え、情報漏えいのリスクを低減できます。

また、近年は端末購入の初期コストを抑えられることから、個人所有端末をビジネス利用するBYOD(Bring Your Own Device)を認める企業が増加しています。BYODは私用の端末としても利用するため、情報漏えいのリスクが拡大。リモートアクセスの活用は、個人所有の端末にもデータを保存せずに作業を行えるため、BYODの促進にもつながります。

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セキュアな通信環境を構築「VPN」

VPNとは、「Virtual Private Network」の略語であり、日本語では「仮想専用線」と訳されます。インターネット上に仮想の専用線(プライベートネットワーク)を設けることで、安全なセキュリティ経路を通ったデータのやり取りが可能です。そのため、盗聴や改ざんなどの脅威から企業のデータを守り、安全にインターネットを利用できます。

交通機関やカフェなどで導入されている無料公共Wi-Fiを使用する方は多いのではないでしょうか。しかし無料Wi-Fiは公衆向けのサービスであり、暗号化されていない、認証レベルが低いなど、セキュリティ上のリスクがあります。VPNを利用することで、無料Wi-Fiでも通信内容は暗号化され、セキュリティを強固にした環境で無料Wi-Fiの使用が可能です。

VPNとは?インターネット接続の安全性を高めるVPNについて解説

個人情報・顧客情報の漏えいを防ぐ「シンクライアント」

シンクライアントとは、ユーザーが使用する端末(クライアント)の機能を最小限にし、多くの処理をサーバで行うシステム分類を指します。アプリケーションやOSを使用した際のデータがサーバ側に保存され、クライアント端末に表示される情報はあくまでイメージ画面です。サーバとの接続を切れば閲覧できなくなるため、個人情報や顧客情報などの漏えいを防ぎます。ただし、テレワークなど社外でのシンクライアント活用にはインターネットへの接続が必要になるため、リモートアクセスやVPNを導入し、さらなるセキュアなシステム環境の構築をおすすめします。

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テレワーク助成金をうまく活用しよう

テレワークの実現には、各種システムの導入やセキュリティ対策が求められるため、コストがかかりますが、企業のテレワーク導入を支援する様々な助成金を活用することで、コストを抑えることができます。いくつか代表的な助成金を紹介します。

時間外労働等改善助成金(テレワークコース)

時間外労働等改善助成金とは、厚生労働省が2020年4月1日から中小企業に導入される時間外労働の上限規制に向け、長時間労働の見直しのために、働く時間の縮減に取組む中小企業事業主を対象に助成金を支払う制度です。

もともと5つのコースから制度内容が分かれていましたが、新型コロナウイルスの拡大を背景に、新型コロナウイルス感染症対策を目的とした取組を行う事業主を支援する特例コース「新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース」を時限的に設けています。

対象事業主 新型コロナウイルス感染症対策としてテレワークを新規(※)で導入する中小企業事業主
※試行的に導入している事業主も対象となります
<対象となる中小企業事業主>
労働者災害補償保険の適用中小企業事業主であること
助成対象の取組 ・テレワーク用通信機器(※)の導入・運用
・就業規則・労使協定等の作成・変更
・労務管理担当者に対する研修
・労働者に対する研修、周知・啓発
・外部専門家(社会保険労務士など)によるコンサルティング 等
※ パソコン、タブレット、スマートフォンの購入費用は対象となりません
主な要件 事業実施期間中に
・助成対象の取組を行うこと
・テレワークを実施した労働者が1人以上いること
助成事業の実施期間 令和2年2月17日~5月31日
支給額 補助率:1/2(1企業当たりの上限額:100万円)

(厚生労働省「時間外労働等改善助成金」を参考に作表)

事業継続緊急対策助成金(東京都)

事業継続緊急対策助成金とは、東京しごと財団が新型コロナウイルス感染拡大防止のため、都内の中堅・中小企業等に対し、テレワーク導入時に必要な機器やソフトウェア等の経費を助成するものです。対象事業者や対象経費は以下になります。

助成対象事業者 1.常時雇用する労働者が2名以上999名以下で、都内に本社または事業所を置く中堅・中小企業等
3.都が実施する「2020TDM推進プロジェクト」に参加していること
※その他にも要件があります。詳細については募集要項をご確認ください。
助成事業の実施期間 支給決定日以後、令和2年7月31日までに完了する取組が対象です
助成対象経費 1.機器等の購入費(例:パソコン、タブレット、VPNルーター)
2.機器の設置・設定費 (例:VPNルーター等機器の設置・設定作業費)
3.保守委託等の業務委託料(例:機器の保守費用)
4.導入機器等の導入時運用サポート費 (例:導入機器等の操作説明マニュアル作成費)
5.機器のリース料(例:パソコン等リース料金)
6.クラウドサービス等ツール利用料(例:コミュニケーションツール使用料)
※助成対象となる機器等には指定がありますので、募集要項をご確認ください。
助成金対象額 250万円
助成率 10/10

(東京しごと財団雇用環境整備課「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」を参考に作表)

まとめ

新型コロナウイルスを機に、テレワークを「一時的」に導入している企業は多いのではないでしょうか。しかし、テレワークの活用は感染症への対策効果以外にも、従業員の多様な働き方推進にもつながります。今後デジタル技術の進歩により、クラウドサービスやノートPCといった各種システム・ツールの利用はさらに進み、強固なセキュリティ環境の構築も必要になるでしょう。企業は一時的な対策としてテレワークを導入するのではなく、デジタル化社会に適応するための先行投資として、継続したテレワークの活用やその他デジタル技術の導入を検討するべきといえます。

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※本ページに記載されているシステム名、製品名は、一般に各開発メーカーの「登録商標あるいは商標」です。