働き方改革

働き方改革とは? わかりやすく背景や目的を解説!

2016年頃から「働き方改革」という言葉をよく耳にするようになりました。多くの方々はピンときていなかったと思います。しかし、2018年7月6日に「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が成立したことにより、テレワーク、サテライトオフィス、長時間労働の削減、ワークライフバランス、と具体的な情報も皆さんに届く機会が増えたのではないでしょうか。

「働き方改革」という言葉が独り歩きしていた状態から、いまでは全員が真剣に向き合わなくてはいけないフェーズに突入しています。「Work x IT」でもこれまで様々な制度を紹介してきましたが、

「働き方改革ってそもそも何?」
「自分たちに関係あるの? 大企業だけじゃないの?」
「なぜやらなくてはいけないの?」

という疑問もまだまだ多いと感じています。改めてこのタイミングで、“働き方改革とは”をテーマに、その背景、目的、事例、法律の内容など紹介し、「何をすべきか」を提示したいと思います。

 

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1. 働き方改革の背景~日本社会の課題とこれから~

まず「働き方改革」が必要となった背景を紹介します。戦後の復興から高度経済成長などをつうじて、日本のGDPは人口の拡大とともに右肩上がりで上昇。1970年代には会社にすべてを捧げ、プライベートを犠牲にする“モーレツ社員”なる言葉も生まれました。

好景気が持続的に成長すると思われていた時代には、このような考え方が美徳とされていました(いまでは、“社畜”なんて言葉もありますが、当たらずとも遠からず)。この時期に、新卒一括採用、年功序列、終身雇用という現在までもつづく日本の雇用環境が形成されていきます。

しかし、1990年代にバブル経済が崩壊すると徐々にこのシステムは成り立たなくなり、加えて2000年前後のインターネットの普及により、劇的に働き方は変化が求められるようになります。このような技術革新やビジネスモデルの変化と日本が抱える少子高齢化、労働人口減少の問題が重なっていきます。では、ひとつずつ働き方改革が必要となった背景を見ていきましょう。

背景①労働人口の減少と少子高齢化

<総務省「人口の推移と将来人口」をもとに図を作成>

上記の図は、日本の人口推移と将来人口になります。介護や福祉では「2025年問題」などとも言われておりますが、2025年を境目に総人口の3割以上が65歳以上となります。定年退職の年齢を60歳から65歳までに引き上げるなどの施策もありましたが、今後日本の経済をささえる労働人口が大きく改善することはありません。

少子化の問題は後述する長時間労働とも無関係ではありません。晩婚化が進み、出生率に影響を及ぼし、育児・出産が正規雇用のハードルになるなどひとつひとつの要因が点ではなく線で結びついています。

また介護も同様のことが言えます。単純に労働人口が減る、介護・福祉の費用が膨大になるというだけではなく、30~40代の働き盛りの世代が介護によって、仕事を続けられなくなるという課題も生じます。

つまり従来のような働き方ではなく、テレワークやサテライトオフィス、フレックスタイムなど時間やオフィスにとらわれない働き方などが推進されているのは、このような背景があるのです。介護や育児と両立できる働き方、いわゆるワークライフバランスという言葉は重要視されているのも同様の理由です。

背景②長時間労働

日本社会に残る弊害のひとつです。「残業すれば残業するほど評価される」という価値観や、企業の使命は絶対であり、プライベートを犠牲にしなくてはいけないという精神論は古いということですね。「企業=殿様」「サラリーマン=武士」という例えが間違っていなければ、封建社会の精神構造は日本人特有のものなのかもしれません。良い悪いはおいといて、それでは時代にそぐわない、ということです。

閑話休題。「日本人は働き過ぎ」と言われますが、実際のところはどうでしょうか? OECDのデータを見てみましょう。

OECDが調査した加盟35カ国による一人当たりの年間平均労働時間を見ると、日本は21位となっています。途上国と先進国との差もありますので、一概には言えませんが、日本の1710時間は、意外にもアメリカの1780時間より労働時間は短く、おおよそカナダの1695時間と同じくらい。
また過去と比較すると2000年の日本の年間平均労働時間が1821時間でしたので、2017年までに111時間も労働時間を削減している結果となっています。
データ上ではこういう結果が出ていますが、実情をとらえているとは言えない部分もあるでしょう。労働基準法で定められた法定時間労働もこれまでは特別条項付きの36協定を結べば、無制限に労働することが可能で、過労死や自殺による問題や割増賃金の不払いなどが顕著です。

成立した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」でのひとつの目玉は、労働基準法の改正でした。約70年ぶりとなる労働法制の大改正は2019年4月から順次施行されます。時間外労働の上限や年次有給休暇取得の義務化などが盛り込まれています。労働時間は少しずつ減っていますが、“休まない”という問題は解消されていない側面もあります。

有給休暇の取得義務化へ。付与日数とその背景

もちろん長い時間を働けば価値が向上する時代ではありません。ざっくりと例えるなら、1時間を終わる作業をだらだらと残業して3時間かける。これは致命的です。そこでもうひとつの軸となるのが、労働生産性です。

背景③低い労働生産性

「生産性をあげろ!」
「生産性を意識して!」

なんて上司に言われてはいませんか? こんな指示があると、いかにも生産性が抽象的な言葉に聞こえてしまいますが、生産性はちゃんと定義され、計算で求められる定量的な数値なのです。生産性には主に2つがあります。

●物的生産性

物的生産性=産出量(金額 or 物量)÷人的投入量

労働投入量1単位あたりの産出量・産出額。生産物の価格は変動するため、生産現場などにおける純粋な生産効率を測るときには、金額ではなく物量で測定します。従来型の生産性はこちらを指すことが多いです。例えば、1つ5円の造花を1時間あたりで30個つくっていたのを、40個つくれるようになると生産性が向上したと言えます。

●付加価値生産性

付加価値生産性=付加価値÷人的投入量

付加価値とは、生産額(売上高)から原材料費、外注加工費、機械の修繕費、動力費など外部から購入した費用を除いたものです。サービスや商品には、消費者の心を動かすことが重要です。この計算式では、粗利に近い数字になりますが。純粋に従業員がどういう付加価値が高い仕事をしているかがわかります。

では、労働時間と同様にOECDのデータから日本の生産性を見ていきましょう。しかし、OECDの場合の労働生産性は下記の計算式から求めていますので、留意してください。

労働生産性=GDP(国内総生産)÷国の1年間の平均就業者数

<OECDの調査データをもとに図を作成>

日本の労働生産性は、35カ国中20位。1時間あたりの労働生産性は、1位のアイルランドの約半分。主要先進7カ国では1970年以降ずっと最下位です。日本は生産性が低いがゆえに、長時間労働をして経済大国としての立場をなんとか守ってきたとも言えるかもしれません。

さて、これからより少子高齢化が進んでいくなかで、経済成長をつづけていくためにはどうすればいいのでしょうか?今以上に長時間労働をするのではなく、労働生産性をあげていかなければいけないことがご理解できるはず。つまり「働き方改革」が必要なのです。

働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律

これまで日本の現状や課題を振り返ってきました。同時に働き方改革の目的も少しずつ見えてきたと思います。改めて、今回成立した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」の中身とその目的を見ていきましょう。

「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」は、雇用対策法、労働基準法、労働時間等設定改善法、労働安全衛生法、じん肺法、パートタイム労働法(パート法)、労働契約法、労働者派遣法の労働法の改正を行う法律の通称です。これに伴い、企業は2019年4月1日に施行される同法律に向けて対応が求められています。

働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律の5つのポイント

  • 同一労働同一賃金
    正規と非正規の待遇差を解消することが狙い。給与だけではなく、賞与、福利厚生なども対象となっており、大企業は2020年4月、中小企業は2021年4月から対象となります。
  • 残業時間の上限規制
    これまで労働基準法のいわゆる“36協定”を労使間で合意していると、無制限に労働させることが可能でした。しかし、今回の法改正で特別条項付きでも「年720時間」「単月だと100時間未満」などの上限が設けられました。またこれまで大企業のみに適用されていた月60時間以上の割増賃金150%も中小企業に適用されます(2020年4月1日から)。違反すると、罰則として半年以下の懲役または30万円の罰金が科せられます。
  • 高度プロフェッショナル制度の導入
    残業時間の上限が設けられる一方で、年収1075万円以上の一部専門職は、労働時間の制限や残業代が発生せずに、成果によって評価される「高度プロフェッショナル制度=高プロ制度」も可決されました。年104日以上の休日取得義務はあるものの、過労死を招く恐れがあるとして、賛否両論が沸き起こりました。
  • 勤務間インターバル制度の普及促進
    勤務終了後、次の勤務開始まで一定時間以上の休息期間を設けることを「勤務間インターバル」といいます。労働者の健康確保やワークライフバランスを確保することが目的となっています。具体的には9時間以上の休息が望ましいとされています。
  • 産業医・産業保健機能の強化
    事業者から産業医に対し、その業務を行うために必要な情報を提供することとするなど、企業が従業員の健康をより適切に管理するために、産業医・産業保健機能の強化を図ります。

このように法律が定められていますが、要はなにが求められているのかというと、これまで繰り返し述べてきたように「長時間労働の抑制」「労働生産性の向上」「ワークライフバランスの確保」であると言えます。

<可決された法律の詳細はこちらをご参照ください>
働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案の概要 | 厚生労働省
働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律 | 参議院

働き方改革の背景や現状の課題をこれらの法整備でどうやって解決するのか?いちばんの問題はここになります。それこそ国から企業に「残業するな」「労働生産性をあげろ」と言われている構図は、一般社員が上司から指示されているのと似ています。

残業規制や割増賃金などは企業経営にとって死活問題となるでしょう。しかし、後述しますがそのような体質の企業は、今後労働力が減少していくなかで、新しい人材や労働力を確保しづらくなります。

では、どのように対策をしていけばよいのでしょうか? 政府は、その解決策のひとつとして「ICTの活用」を挙げています。次項より具体的に見ていきます。

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働き方改革を推進する具体的な対策

シンプルな解答を出すとしたら、労働生産性をあげることで労働時間を削減することができます。そのためには「無駄」を洗い出す必要があります。

例えば、満員電車にギュウギュウ詰めになりながら、通勤するのは生産性が高いのか?という疑問。または外勤が多い営業職が打ち合わせや報告のために、わざわざ帰社して、また外に出る。また、育児や介護をしながら在宅で仕事をするには?といった疑問を解決するのが「テレワーク」に代表される“オフィスにとらわれない働き方”です。

テレワーク

テレワークとは「ICTを活用し、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」と定義されています。リモートワーク、モバイルワーク、サテライトオフィス(詳細は後述)もこの概念に含まれます。

在宅勤務が代表例で、例えば、育児や介護で出社できない、時短でしか働けないといった方が効率よく働くことができるので、これまでそういった事情で離職せざるをえなかった人たちの流出を防ぐことができます。また外勤が多い職種では、移動時間を削減することが可能。

さらに台風が接近するなどの災害時は無理に出社せずに、在宅勤務を奨励することで従業員の危険から守ることもできるうえ、通常時と同様に勤務することも可能です。

オフィス改善を促進するフリーアドレスを導入するメリットと課題について
テレワーク導入のメリットと課題とは? ~専門家に聞いた事例とホントのこと~

フリーアドレス

フリーアドレスとは、オフィス内で従業員の座席を固定せずに空いている席に自由に座るスタイルです。業務効率の観点からのメリットは、コミュニケーションの活性化を挙げることができます。壁やしきりがない状態で仕事をするため、普段はなかなかコミュニケーションが取れない他部署とも接する機会が増えるため、アイデア創出の一助となります。

経営の観点から見ると、スペースコストの削減が大きなメリットとなります。テレワークとの相性が非常によいことも特徴のひとつ。テレワーク導入後に席の稼働率を調査して、70%ほどでしたら従業員の80%ほどのデスクと席を用意すればいいことになります。人事や経理など席を固定した方がいい部署は、固定席。外勤が多い部署は、フリーアドレスと部分的に導入するチームアドレスという手法もあります。

フリーアドレスに関しては、下記で詳しく説明しているので、ぜひご覧ください。

フリーアドレスのメリットと導入のポイント
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サテライトオフィス

サテライト=衛星の言葉通り、企業の本社や本拠地から離れた場所に設置されるオフィスのことです。主に「都市型」「郊外型」「地方型」に分けることができ、コワーキングスペース「WeWork」などのシェアオフィスもそのひとつ。例えば、郊外にサテライトオフィスを設立する目的としては、通勤時間の削減による育児・介護との両立が考えられます。

総務省も推進している地方型はもっと踏み込み、多様な働き方を受け入れることになります。地方創生に貢献しながら、自然に恵まれた環境で子育てやプライベートをおくりたいというニーズに応えることもできます。またその土地での雇用や機会創出にもつながります。

サテライトオフィスとは?そのメリットとデメリットを解説

フレックスタイム

かなり一般的になってきたフレックスタイム制度。コアタイムなどの設定は必要ですが、多様化する働き方が求められている現在、従業員の裁量で勤務時間を決められるのは大きな効果があります。

テレワークの制度があっても、育児や介護などの諸事情で午後からなら勤務できる、のようなケースも少なくありませんが、しっかりとした社内制度と勤怠管理が求められるようになります。

WEB会議、ビジネスチャットなどのコミュニケーションツール

テレワークやフリーアドレスなど場所を選ばない働き方を推進するなかで、WEB会議やビジネスチャットは必須のツールと言えるでしょう。テレワークをしている従業員が会議のためだけにわざわざ出社するようなことがあっては、本末転倒です。また出張費の削減にも直結します。コミュニケーションのプライオリティを精査して、無駄な会議や交通費を削減することは生産性だけではなく経営面にもメリットがあります。

メールではなく即時性が高く、簡易に使えるチャットとWEB会議のシステムは働き方改革を為すにあたって必要不可欠なツールと言えるでしょう。

ペーパーレス

WEB会議などが普及してデータの共有もクラウド上で行われるようになると、ペーパーレス化は格段に進みます。もちろんコストの削減に直結しますし、資料保管のスペースも減少します。

紹介してきた制度やツールは、独立して取り入れるより、複合的に取り入れた方が効果を発揮します。またそのどれもがITツールの利用なしには実現しにくいものです。IT化を進めていくうえで、少なからず初期投資は必要ですが、中長期でみると回収できるはずです。また現在は働き方改革を推進して一定の成果を収めた企業には、厚生労働省より「時間外労働改善助成金」が支給される制度もあります。企業文化にもよりますが、労働生産性を向上するための対策を一考するタイミングは今しかないと言えるでしょう。

働き方改革の成功事例~大企業~

すでに様々な企業が独自の働き方改革を進め、多くの成功事例があります。ここでは、どのような事例があるのかを紹介していきます。まずは誰もが知っている大企業の事例から見ていきましょう。

カルビー株式会社

在宅勤務を全社へ本格導入するにあたり、まず同社では労働者への周知を徹底することから着手。在宅勤務をわかりやすくマニュアル化し、上司から部下へ働きかけるとりくみを実施しました。また、人事・労務体制を整備するために、在宅勤務をする際のルールを徹底。さらに、業務プロセスの見直し・社内雰囲気の改善に向け、スケジュールのオープン化し、上司が率先して在宅勤務をする雰囲気を醸成したとのこと。結果的に通勤によるストレスから解放され、集中力がアップした社員が増加したそうです。(※1)

ヤフー株式会社

育児や介護が必要な従業員を対象に、土日の休日に加え1週あたり1日の休暇を取得できる「えらべる勤務制度」を導入(現在、全社員対象の週休3日制を検討中)。また月5回までテレワークを認める「どこでもオフィス」や副業の許可やコワーキングスペース「LODGE」を開設、「全館フリーアドレス」など社外と積極的にコミュニケーションを取るなど先進的な取り組みを行っています。従業員満足度が、生産性向上につながるという姿勢がしっかりと見える施策ではないでしょうか。(※2)

味の素株式会社

週4回(月の上限なし)のテレワーク制度「どこでもオフィス」、コアタイムを設けないスーパーフレックスタイム、育児休暇、育児時短勤務などワークライフバランスの確保に重点を置いた施策が目立つ味の素株式会社。もっとも特徴的なのは、1日の所定労働時間をグローバル基準である7時間を目指していることでしょう。2020年までに所定労働時間7時間を目指しており、2018年時点では7時間15分。今後もワークスタイル変革を断続的に行っていくとのこと。(※3)

ソフトバンク株式会社

スーパーフレックスタイムとテレワークの導入で文字通り「場所と時間に限定されない働き方」を実現しています。その他にも毎週水曜日の「ノー残業デー」や時短勤務、アニバーサリー、リフレッシュなど多彩な休暇制度も充実しています。また副業もOK。ありとあらゆる制度はすでに導入済みで、なにかしらの問題点が生じたら、高速で解決。「そんなことやったら、うちの会社は利益が下がっちゃうよ……」という声も聞こえてきそうですが、このような制度に適応し、成果にフォーカスした評価制度が整備されているため、サボると査定は下がります。社内意識の統一も働き方改革には欠かせません。(※4)

イケア・ジャパン株式会社

「同一労働同一賃金」の概念を取りいれたもっとも早い事例と言えるのではないでしょうか。2014年に全従業員の7割を占めるパートタイム労働者全員を短時間勤務社員としました。これには同社が大切にしている「ライフパズル」という視点を重視した結果、生まれたものです。「ライフパズル」とは、人はライフステージによって、出産や介護など仕事以外に力を注ぐ時期と、キャリア構築のためにがんばりたいなどの時期があり、そのパズルを積み上げる責任と主導権は本人にあるという考え方です。イケアの発祥であるスウェーデンでは一般的な考え方のようですが、いままさに日本もダイバーシティ経営や人材・働き方の多様性を認めるフェーズにあります。(※5)

日本航空株式会社(JAL)

これまで自宅など会社が認めた場所での「テレワーク」が認められていた同社ですが、2017年7月より「ワーケーション」という制度を導入しました。仕事(work)と休暇(vacation)を組み合わせた造語で、国内外のリゾート地や帰省先、地方などで最大2カ月間(!)休暇先で仕事をすることが認められています。その他、「時差Biz」「テレワーク・デイ」「障害者テレワーク」などの取り組みを行っています。(※6)

中小企業が取り組むべき働き方改革

大企業で成功している働き方改革の事例を紹介しましたが、中小企業ではどうでしょうか? 基本的には大企業と同じく、「長時間労働の是正」「労働生産性の向上」「ワークライフバランスの確保」が目的になります。

中小企業では大企業ほど予算を投資できない面があるかもしれませんが、トップダウンでの意識改革や社員への浸透などを考えると、改革を断交しやすい環境にあると言えます。事例とともに見ていきます。

①まずは現状把握
まずは現状を把握しなくてはいけません。従業員の労働時間、残業時間、有給休暇の取得率などを調べてみましょう。働き方改革に成功した中小企業は、まず課題点を抽出し、ひとつずつ解決する道を選択しています。例えば、従業員10人の株式会社クラフトは、年次有給休暇取得率の100%を目指しました。トップメッセージを発信し、有給休暇の取得率を見える化。相談窓口を設置し、適正な業務量を把握するなどの体制づくりをした結果、残業時間を50%削減し、有給取得率を40%アップさせることに成功しました。(※7)

②トップからの改革の意識を従業員に伝える
株式会社クラフトと同様に中小企業では、従業員が少ない分トップからのメッセージが届きやすくなっています。経営者自らが、企業体質を変えるという宣言を行うことは、中小企業が働き方改革を進めるにあたって必要不可欠なステップです。三洋化学工業株式会社(従業員数58人)は、「社員だけではなくその家族も幸せになってほしい」とのメッセージを伝えました。企業視点の働き方改革ではなく、従業員目線の働き方改革というのも重要です。公平な「人事評価制度」を整備し、社外にもワークライフバランスの確保の理解を求めた結果、有給取得率を47.7%から76.7%まで上げることに成功。(※8)

③女性が働きやすい環境づくり
中小企業経営者の不安のひとつに継続的な人材雇用があるでしょう。新しい人材を確保しても、働きやすい環境、働きがいのある環境を創出しなければ定着もせず、せっかくの事業拡大のチャンスを逃してしまうことにもなりかねません。有限会社COCO-LO(従業員数69名)は、事業所内に託児所を設け、短時間勤務制度や休暇制度など女性が働きやすい環境づくりを推進。結果として、休みやすい職場づくりに成功し、若手人材の確保、業績の向上、出産後復帰率100%を実現。一方で、時間を制限して豊富な知識をもつ、シニアを継続的に再雇用することで、経験の伝承や長時間労働を削減した例を多くあります。「1億総活躍社会」の体現する例と言えます。(※8)

④ITツールの導入・ICT環境の構築
制度よりまずはツールを導入するという考え方も存在します。主に少人数のベンチャー企業やスタートアップ企業では効率性を求めるのは当たり前。情報共有は基本的にクラウド上で行われますし、ペーパーレスやフレックスタイム、テレワークという制度も構築しやすい環境にあります。またこれまで紹介してきた事例や制度にもITツールの導入が欠かせないものであることは、ご理解いただけると思います。時間や場所に限定されない働き方をするには、クラウド勤怠管理システムは欠かせませんし、デスクトップパソコンではなく、ノートパソコンやタブレットの導入も不可欠でしょう。ツールひとつで、劇的に働き方に変化を生むこともあるので、現状把握をした後にツールの導入を検討してみるのもよいでしょう。

働き方改革のカギは、従業員満足度の創出と環境づくり

働き方にも様々な取り組みが存在しますが、その代表的なものを紹介してきました。そのどれもがITツール、ICT環境の整備が必要なものばかりです。

以前より指摘されていることではありますが、テクノロジーによって労働生産性をあげるという考え方の一方で、どうすれば従業員が働きがいを感じることができ、企業に定着してくれるか? という視点も重要です。

今後、労働人口が減少していくなかで、人材確保はより激しい競争となります。そのなかで多様な働き方を選択できない企業には当然人が集まりませんし、定着率も低くなります。

2019年4月から働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律が順次施行されていきます。企業が継続的成長をしていく上で、ハード面でもソフト面でも早急な対応が求められていると言えるでしょう。

<参考>
※1…働き方・休み方改善ポータルサイト 働き方改革取組事例 | 厚生労働省
※2…UPDATE JAPAN ヤフーのCSR
※3…味の素グループ サステナビリティデータブック2017
※4…ソフトバンク株式会社 プレスリリース2017
※5…nomad journal
※6…JAPAN AIRLINEプレスリリース
※7…大阪労働局「働き方改革宣言」
※8…厚生労働省「中小企業の働き方改革」

働き方改革最新事情

いよいよ働き方改革は”法律”

2019年4月より「働き方改革関連法」が順次施行されています。
ここ数年、世間では「業務効率化」「生産性向上」「デジタル化」などと叫ばれてきた一方で6割以上の企業が働き方改革に対して、未対応となっています。
なぜ働き方改革が必要なのか?またどのように進めていけばいいのか?
改めて今後の「働き方改革」に迫っていきます。

  • いよいよ働き方改革は”法律”
  • ”2025年の崖”とは
  • 2025年までに迎える代表的なDX
  • 中小企業はデジタル化が遅れている
  • 育児や介護をしながら働ける現場つくり

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いよいよ働き方改革は”法律”

2019年4月より「働き方改革関連法」が順次施行されています。
ここ数年、世間では「業務効率化」「生産性向上」「デジタル化」などと叫ばれてきた
一方で6割以上の企業が働き方改革に対して、未対応となっています。
なぜ働き方改革が必要なのか?またどのように進めていけばいいのか?
改めて今後の「働き方改革」に迫っていきます。

主な内容

  • いよいよ働き方改革は”法律”
  • ”2025年の崖”とは
  • 2025年までに迎える代表的なDX
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