働き方

フリーアドレスオフィスのメリットと導入のポイント

「出社したら、入り口に置いてあるパソコンでダーツシステムにアクセスし、席種を選択。すると、システムが自動で今日の働く席を決めてくれる」。

そんなふうに1日が始まるのが、カルビー本社の毎朝の光景です。

通常、オフィスの仕事風景として思い浮かべるのは、毎朝自分の決まった席について、パソコンを起動して、黙々と仕事をしている様子でしょう。しかし、現在注目されている「フリーアドレスオフィス」を導入している企業では、社員に決まった固定席はありません。その日の業務内容に合わせて、オフィス内の自由な席を選び、周囲とコミュニケーションしながら仕事をします。

この記事では、フリーアドレスオフィスのメリットや導入のステップや、生産性向上のための工夫などを解説します。

ワークプレイスの変化と対策

導入が拡大するフリーアドレスオフィスとは?

フリーアドレスオフィスは、社員が固定席を持たず、オフィス内の自由なスペースで働くスタイルです。1990年代後半より、外資系企業やIT企業で導入され始め、働く場を変えることで生産性向上を目指す手段として、注目されています。

世界最大級の事業用不動産サービスおよび投資顧問会社であるCBREが2018年に発表した特別調査「フリーアドレス 導入によるオフィス構築の変化」では、フリーアドレス の導入率は2015年から2018年で約1.6倍になっています。

業種別では「IT」が70%ともっとも高く、地域別では東京23区が47%で地方都市の31%を大きく上回っています。またフリーアドレスオフィスを導入した理由で、上位を占めたのは下記の3つです。

【フリーアドレスオフィスを導入した理由】
●生産性向上
●フレキシブルな働き方の促進
●コストの削減・抑制

<参照元:CBREが特別レポート「フリーアドレス導入によるオフィス構築の変化」を発表 | CBRE

フリーアドレスオフィスのメリット


フリーアドレスを導入する代表的なメリットを5つ紹介します。

1.生産性の向上

フリーアドレスオフィスは、生産性の向上が期待できます。自由なスペースで仕事をすると言っても、無秩序なわけではありません。フリーアドレスでは、集中スペースや2人席、3〜4人の会議室やカフェスペース、コミュニケーションスペースなどオフィスを機能ごとに区切るのが一般的な考え方です。

つまり誰にも邪魔されずに作業に集中したいケース、雑談などをしながらアイデアを出したいケースなどその日の作業に応じて、効率が良い執務スペースに変えるというのがフリーアドレスオフィスの本来の在り方です。社員それぞれが考えて行動をするようになるため、セルフマネジメント向上も期待できます。

2. オフィスコストの削減

オフィスの省スペース化もフリーアドレスのメリットです。例えば、日中は外回りの営業が主業務で、オフィスに人が少ないという会社なら、人数分の席は必要ありません。フリーアドレスオフィスにすることで、オフィス面積を削減して、省スペースでもより多くの人が働くことができます。

また、社員の増減や部署異動などがあっても、固定席を移動する手間はありません。部署に関わらず、自由な席に座れるので、レイアウトの変更や、電話回線、電源、LAN設備などを変更するコストもおさえられます。

3.コミュニケーションの活性化

自由に席を移動できることから、コミュニケーションが活性化します。部署や役職に関係なく、現在関わっている業務やプロジェクトに応じて、近くに座る人を決めることができます。これにより、コミュニケーションの活性化が図れるだけでなく、部署を横断するチームやプロジェクトの編成も容易になります。

また部署間での連携に課題がある企業は多く存在します。フリーアドレスによって、これまでコミュニケーションが希薄だった他部署の方との接点が増えます。自社のサービス理解が深まったり、自部署の課題に対して異なる視点でアドバイスをもらえるなどさまざまな効果が生まれるでしょう。

4.オフィスのクリーン化とセキュリティ意識の向上

固定席の場合、意識的に整理整頓をしておかなければ、机の周辺に資料や私物が増えていきます。乱雑なデスクでは気持ちの部分でもリフレッシュができませんし、紙の資料が見つからないなど業務上にも支障が出ます。

フリーアドレスを導入したオフィスでは、業務が終わったら私物は個人用ロッカーなどに片付けます。そのため、どのスペースにも社員の私物はほとんどなくなり、オフィス内をクリーンに保つことができます。紙媒体の資料が放置されることがなくなるので、情報漏えいにも効果があります。

5.ペーパーレスとテレワークとの親和性が高い

上記の理由から紙資料の使用が減少するため、オフィスのペーパーレス化を推進できます。そのため、印刷やコピーにかかるコストが削減されるメリットもあります。総務省が2015年に発表した「ワークスタイルを変えるオフィス改革の試行的取組」では、総務省行政管理局にてオフィスの改修を行った結果を報告しています。それによると、「レイアウト変更前と比較し、個人席周辺の文書量が約8割減」「約7割の職員がレイアウト変更前と比較し、業務がやりやすくなったと回答」「カラープリント・カラーコピー数がレイアウト変更前の約半分になった」などの効果が得られています。

またテレワークとも好相性です。外勤の営業やテレワーカーが一定層いる場合、席の占有率を一定の期間で調査してみましょう。もし、100席あるオフィスでの平均占有率が70%だった場合、多く見積もっても80席分のスペースがあれば通常業務に支障は出ないでしょう。20席分を共有スペースにしたり、もしくはもう少し手狭なオフィスに引っ越すなど選択肢も増えます。

<参考:ワークスタイルを変えるオフィス改革の試行的取組:総務省

フリーアドレスオフィスに必要なモノ


フリーアドレスのメリットを知って、導入を検討したいと思ったとき、知りたいのは必要な設備です。

ノートパソコン

まず必須なのは、ノートパソコンです。自由に席を移動するのにデスクトップパソコンを持ち歩くというわけにはいきません。個人で作業中のデータをすべてノートパソコンに入れられるからこそ、フリーアドレスは実現可能なのです。

社内では、ネットワークへの接続はWi-Fi経由で行うことにしておくと、自由な移動が可能になります。プリンターの利用もネットワークから行えるので、パソコン側に接続ポートの充実や周辺機器はほとんど必要ありません。タッチパッドの操作に慣れない場合には、マウスがあると便利でしょう。小型のBluetoothマウスならば、持ち歩いての利用もしやすくなります。

営業職などで、外出する機会もあるなら、持ち運びやすいモバイルタイプのノートパソコンがあるといいでしょう。LTEを搭載していれば、外出先からのネット接続もスムーズです。

デスク

続いて、デスクです。オフィスや業務の内容にもよりますが、フリーアドレスオフィスでは、円形テーブルや長机などを使用する例がよくあります。複数人が着席できるので、コミュニケーションやコラボレーションが円滑になりますし、人数の増減にも対応可能です。

また、フリーアドレスでは必要な資料をロッカーから取り出し、デスクまで移動します。そのため、デスクにはかばんフックや、書類を置くためのフリーカートなどもあると便利です。見落としがちなところですが、こうした工夫をしておくことで、より快適に仕事をすることができるようになります。

配線や設備

机には電源タップが必要です。手元を照らすための照明器具も必要です。ネットワークの接続では、LANケーブルよりもWi-Fiを導入した方が、より機動的な作業が可能になるでしょう。

ファイリングシステムやロッカー

大型の設備では、このほかに、ファイリングシステムが必要です。共有の書類などはファイリングし、誰でも閲覧可能にしておきましょう。また、個人に帰属する書類などについては、個人ごとに割り当てられたロッカーに保管しておきます。必要な資料やツールを出して作業し、終了したら、それぞれの収納場所に収めることにより、オフィス内を整頓できます。

内部にコンセントが付属するロッカーを採用すると、退社時にノートパソコンを充電しておくことができます。これで、翌日はすぐに業務を始められます。

その他必要な設備

自由な場所で仕事をできる環境では、不審者の入室に注意して、情報漏えい対策をする必要があります。IDカードによる入退出管理が可能なオートロックのドアなど、入退出管理システムも必要です。

設備を配置する際には、“余白”を作ることも重要です。予約不要のフリースペースをいくつか作っておくことで、思い立ったらすぐに、柔軟にミーティングを開くことができます。また、窓際をオープンにしておいたり、ゆったり座れるソファーを配置したりしておけば、ちょっとリラックスしてアイデアを出し合えるコミュニケーションスペースとして活用できます。

フリーアドレスオフィス導入のポイント


さまざまなメリットがあり、普及が拡大するフリーアドレスオフィス。ここでは導入のポイントを解説します。

ルールの整備

導入したものの、仲が良い社員同士が集まり、座る席が決まってしまい、結局は固定席化してしまい、生産性が下がるという例もあります。

冒頭紹介したカルビー本社のように、ランダムに席を決める手法を取り入れるなど、実態にあった運用方法の検討も必要です。また、業務内容によって向き、不向きがあることを知っておきましょう。例えば、日中は外回りが多い営業職なら、必要な席数を調整可能なフリーアドレスは最適でしょう。企画部門など、柔軟に他部署との交流が必要な場合にも、フリーアドレスは最適です。

そういうケースでは、全社でフリーアドレスではなく一部の部署だけ固定席を持たないグループアドレスという考え方もあります。本来の目的である生産性向上からブレない運用を心がけましょう。

ABWという考え方

フリーアドレスオフィスを実現するためにヒントとなるのが、「Activity Based Working=ABW」という概念です。社員それぞれの活動にふさわしいワークプレースをオフィスに用意をして、社員自らが業務に応じて使い分ける考え方です。

フリーアドレスオフィスで生産性向上を実現させるには非常に参考になるはずです。ぜひ下記の記事を参考にしてみてください

◎フリーアドレスのその先へ! ABWとWELL認証を組み合わせた未来のオフィス

フリーアドレスオフィスの導入は企業風土も見極めて

フリーアドレスの実現は、会社や部署にとってかなり大きな改革となります。実現前には、一度、各部署にもアンケートを行った上で、実際の業務をシミュレーションして、フリーアドレス化が適切かどうかを確認しておく必要があります。
そして、何よりも大切なのは、経営陣や管理職側で明確な目的意識と、旧来の働き方を完全に置き換える覚悟を持つことが必須です。もちろん、オフィス環境を完全に置き換える際には、コストや労力が必要です。オフィスの移転や、フロアの移動などのタイミングで、検討してみてはいかがでしょう。

ワークプレイスの変化と対策

テレワークの普及によって「働く場所=オフィス」というワークプレイスに対する固定概念が変化し、働く場所の多様化は進んでいる。一方で、働く場所が自由になることで生じる、PC環境、セキュリティー、社内制度の問題。
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  • 働く場所の多様化に伴って、オフィスの役割が変化
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本書では新しい働き方が抱えるこれらの問題を、「自宅」「サードプレイス」「オフィス」という3 つのワークプレイスを軸に考察。問題点を洗い出し、制度・設備導入担当者が打つべき、次の一手を掲載している。

主な内容

  • テレワーク実施者の約90%が自宅での業務を経験
  • 一般企業の社員もサードプレイスを利用する時代に
  • 働く場所の多様化に伴って、オフィスの役割が変化
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