働き方

新たな従業員満足度の概念「ウェルビーイング」とは?

政府が推進する改革によって、働き方が見直されています。長時間労働の是正やハラスメントへの対策、ダイバーシティ経営など企業が様々な取り組みをしていますが、従業員の「健康」に対する施策も注目されています。

平成26年の労働安全衛生法改正により、社員のメンタルチェックが義務付けられた(従業員50人未満の場合は努力義務)ことがきっかけとなり、2019年4月1日に施行された「働き方改革関連法」にも「産業医・産業保健機能の強化」が求められているため、社員の健康に配慮した「健康経営」がブームとなりつつありますが、「健康経営」を発展させた概念「ウェルビーイング」にも注目が集まっています。

今回はウェルビーイングの概念や、ウェルビーイングが企業に取り入れられている理由を解説。また、実際にウェルビーイングを経営に導入した企業の事例を紹介します。

ウェルビーイングの意味と健康経営の違い

ウェルビーイングは一般的に「幸福」と翻訳されており、主に社会福祉の領域で使われていますが、昨今ではビジネスシーンにおいても用いられる機会が増えてきています。なぜ企業でウェルビーイングの考え方が重要なのでしょうか?

元を辿ると「Well-Being」という単語は、1946年に採択された世界保健機関(WHO)憲章草案において、「健康」を定義する記述のなかで用いられました。

“健康とは、完全な肉体的、精神的及び社会的福祉の状態であり、單に疾病又は病弱の存在しないことではない。

HEALTH IS A STATE OF COMPLETE PHYSICAL, MENTAL AND SOCIAL WELL-BEING AND NOT MERELY THE ABSENCE OF DISEASE OR INFIRMITY.

外務省「世界保健機関憲章」より引用“

従来の「健康経営」では、身体的な健康面に重点を置いてきました。一方、ウェルビーイングでは身体だけでなく、従業員のモチベーションなど、精神的、社会的にも良好な状態になることが求められています。

◎健康経営とは?メリットや企業の取り組み事例、実現までのステップ

組織におけるウェルビーイングの重要性

労働人口が減少しているため、企業にとって優秀な人材の確保は重要な課題です。雇用体系も大きな変化を迎えています。日本で長く根付いていた「終身雇用制」も事実上崩壊し、「自分らしく働ける環境」へとニーズは多様化しています。

つまり会社を選ぶ基準として、給与や社会的認知度だけでなく、「いかに自分らしく、気持ちよく働けるか」「長期にわたって心身ともに健やかに、人間らしく働けるか」といった点を重視する人が増加しているのです。

そのため企業は、優秀な従業員に長く働いてもらうために「ウェルビーイング」に配慮し、労働者が働きやすい環境づくりに寄与することで、人材確保につなげながら、流出を防いでいかなくてはいけません。

従来の考え方では社会保険や定期検診など、健康管理はコストと捉えられていました。しかし、昨今では健康管理は「労働者を守り、投資するものである」という考え方に変化してきているのです。

従業員にとって自社の職場がどこよりも快適で一番生産性のある場だと感じられ、長く勤務したくなるような制度や、雰囲気、場所を作り出すことがウェルビーイングです。

ウェルビーイングは健康経営の考え方をさらに推し進め、社員のメンタルヘルスや仕事へのモチベーション、企業への愛情といったものまで含めた概念といえます。ウェルビーイングは経営サイドにとっても、従業員サイドにとってもメリットが大きいため、今後多くの企業が取り入れていくでしょう。

ウェルビーイングを経営に取り入れている企業の事例

ウェルビーイングを導入している企業は、どのように経営へ反映しているのでしょうか。今回は代表的な企業4社を紹介します。

PwC Japanグループ

グローバル企業であるPwCは「成功する人々はウェルビーイング(心身の幸福)を軽視しない。成功する組織はそこで働く人々がウェルビーイングを追求できるような環境を提供する」という考えのもと、世界規模でウェルビーイングを推進しています。

健康維持・増進活動の推進

歯科検診の補助、運動・睡眠・食事などのウェルビーイングセミナー、マッサージルームの設置など

メンタルヘルス対策の推進

年1回のストレスチェック、勤務制限・産業医面談・カウンセリングサービスなど職場復帰支援プログラム、メンタルヘルス研修など

PwC Japanグループは従業員一人ひとりが心身ともに健康であり、成長や幸福を感じることをウェルビーイング経営の最終目標としています。顧客への価値最大化のため、「資産」である従業員が最高の状態でパフォーマンスを発揮できる環境や制度を整備しているのです。

<参考>PwC Japanグループ『ウェルビーイング(健康経営)

株式会社ジュピターテレコム

株式会社ジュピターテレコムは「従業員と家族の幸福」という経営方針と「すべての人を大切にする」という行動指針のもと、従業員が主体的に健康保持・増進を意識する風土の醸成に取り組んでいます。

そんななか、従業員一人ひとりが心も身体も健康な状態でいきいきと活躍できる職場環境を実現するため、2018年に「健康経営宣言」とともに「ウェルビーイング・プロジェクト」を始動しました。

法定項目を超える健康診断

35歳未満の従業員に対しては定期健康診断の予約を代行、35歳以上の従業員に対しては人間ドックの受診を義務化など

健康増進・生活習慣病予防に向けた各種施策

メタボリック・シンドローム、糖尿病対策、乳がんセルフチェック支援、運動習慣の改善プログラム、プロトレーナーによる運動体験イベントなど

コミュニケーションの活性化

例年、従業員やその家族が約2,000名参加するフットサル大会や野球大会

<参考>株式会社ジュピターテレコム『健康経営

株式会社イトーキ

株式会社イトーキは、組織の生産性と創造性向上による新たな価値創造と、ウェルビーイングの実現を目的として、新しい働き方「XORK Style(ゾーク・スタイル)」に取り組んでいます。「XORK」という名称は、これまでの働き方「WORK」を次の次元へと進化させることを表現するため、アルファベット順でWの次にくる“X”とWORKをかけ合わせた造語です。具体的には、以下の2つを導入しました。

「Activity Based Working」

Activity Based Workingとは、高い自己裁量により、いつでも、どこでも、誰とでも働けるという考え方です。従業員の活動を「10のふるまい」に分類し、それぞれの活動に対応して生産性と創造性を最大化する環境を整備しました。活動ごとのバランスや時間配分をベースにした空間配備設計を行うことで労働時間の短縮にもつながります。

「WELL Building Standard」

WELL Building Standardは、能動的かつ自由な働き方を実践する社員の心身を健全に保つというウェルビーイングの概念にもとづく空間品質基準です。環境・エネルギー性能に加えて、建物内で暮らし、働く居住者の健康・快適 性に焦点を当てています。特に居住者の身体に関わる評価ポイントについては、環境工学の観点だけでなく、医学の見地からも検証されており、評価項目は①空気、②水、③食物、④光、⑤フィットネス、⑥快適性、⑦こころ、の7つのカテゴリーです。

株式会社イトーキの取り組みについてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

◎フリーアドレスのその先へ! ABWとWELL認証を組み合わせた未来のオフィス

<参考>株式会社イトーキ『ITOKI TOKYO XORK

株式会社アシックス

「もし神に祈るならば、健全な身体に健全な精神があれかし、と祈るべきだ(“Anima Sana in Corpore Sano”)」が社名の由来である株式会社アシックスは、ウェルビーイングを推進する「ASICS Well-being」体制を立ち上げています。

  • 道具がなくても、自分の席で5分で出来るリフレッシュエクササイズの講習
  • 従業員によるリレーマラソン大会の実施
  • アスリート飯をコンセプトにした低カロリー高栄養素のメニュー提供
  • シャワー完備のスポーツ施設

スポーツ用品を販売している企業らしく、運動にフォーカスした取り組みが特徴的です。

<参考>アシックス株式会社『アシックスの健康経営

ウェルビーイングを取り入れて働き方改革も促進

日本のビジネスシーンは働き方改革の途上であり、まだまだ改善するべき課題は数多くあります。なかでも健康経営やウェルビーイング経営は比較的取り入れやすい施策です。ウェルビーイングは働き方改革と関係する取り組みも多いため、良いシナジーが生まれる可能性もあります。

「お金がたくさん稼げれば幸せ」から「プライベートも豊かにしたい」という考え方に移り変わったように、人々の「幸福」は時代とともに変化していきます。したがって、ウェルビーイングに関する施策は一度取り入れた後も変化させていかなければなりません。トレンドだから、ほかの企業も導入しているからといった理由で導入するのではなく、従業員、ひいては会社の「幸福」についてしっかり考えたうえでウェルビーイングの施策を取り入れましょう。

働き方改革最新事情

いよいよ働き方改革は”法律”

2019年4月より「働き方改革関連法」が順次施行されています。
ここ数年、世間では「業務効率化」「生産性向上」「デジタル化」などと叫ばれてきた一方で6割以上の企業が働き方改革に対して、未対応となっています。
なぜ働き方改革が必要なのか?またどのように進めていけばいいのか?
改めて今後の「働き方改革」に迫っていきます。

  • いよいよ働き方改革は”法律”
  • ”2025年の崖”とは
  • 2025年までに迎える代表的なDX
  • 中小企業はデジタル化が遅れている
  • 育児や介護をしながら働ける現場つくり

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一方で6割以上の企業が働き方改革に対して、未対応となっています。
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主な内容

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