生産性

アルムナイの意味とは?退職者を活用するメリットとポイント

労働人口の減少や人材流動化が進む昨今、優秀な人材の確保に悩む経営者も多いことでしょう。そんな中、近年注目を浴びているのがアルムナイの活用です。しかし、アルムナイと聞いても、具体的なイメージが湧かない方も多いはず。そこで今回は、アルムナイの意味や活用するメリットなどについて事例とあわせて解説します。

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アルムナイとは?

アルムナイ(alumni)とは、「卒業生」「同窓生」「校友」を表す英語です(「alumnus」の複数形)。転じて、企業においては「退職者、OB・OG」を意味しますが、退職者といっても、定年退職者ではなく、転職や家庭の事情等さまざまな理由による中途退職者を対象としています。

企業がこのアルムナイ(元社員)と継続的に接点を持ち、再雇用するしくみを「アルムナイ制度」と一般的に呼んでいます。アルムナイ制度は「カムバック制度」「出戻り制度」とも呼ばれ、自社の風土や組織体質を理解している優秀な人材を再雇用することで、採用の失敗を回避し、即戦力としての活躍を期待するものです。

もともとは外資系企業で盛んな制度でしたが、近年、日本企業にも浸透しつつあり、人事領域の注目を集めています。2018年3月にエン・ジャパンが行ったアンケート調査では、一度退職した社員を出戻りで再雇用した企業は72%と2年前に比べ5ポイント上昇。また再雇用した企業のうち約8割で、周りの社員の反応が「良い」と回答しました。

なおアルムナイ制度に対し、アルムナイの人々が集うコミュニティを「アルムナイネットワーク」といいます。外資系企業や経営コンサルティングファームなどによくみられる結びつきですが、日本でも今年1月にセプテーニグループがネットワーク結成を発表し、話題を呼びました。アルムナイネットワークでは、SNSやメールなどを通じて、セミナー開催やネットワークイベントの情報提供、他の退職者の近況などの情報発信が行われます。ネットワークによって作られた人脈は、企業にとっては優秀な人材を再確保する手段として、そして働く側にとっては再就職の情報を得る手段として、有益な情報交換の場になっています。

なぜアルムナイが注目されているのか

終身雇用制度や正社員神話が崩壊しつつある昨今、従来の給与や企業規模、知名度といった求職者が企業を選ぶ際の判断基準はゆらいでいます。一方で、働きがいや起業といった動機で退職や転職をする人は増加し、人口減少に伴う労働力不足や人材流動化とあいまって、多くの企業で人手不足が深刻化しています。

その結果、採用コストがかさみ、コストをかけて中途採用を強化しても、中途社員が企業風土や業務慣習になじめず、離職してしまうケースも少なくありません。さらに中途社員は主に即戦力、専門職として採用されるケースが多いため、ジョブローテーションさせるにも難しく、中途採用を強化しすぎると組織を硬直化させる恐れもあります。

これに対し、アルムナイ制度による採用の場合、企業とアルムナイ(元社員)が直接、雇用について交渉するため、採用コストを抑えることができます。また既に在職歴があることから、職場環境とのミスマッチを引き起こすリスクも少なく、組織に復帰しても柔軟に溶け込むことが期待されます。これらの理由により、アルムナイに注目が集まるようになっています。

アルムナイを活用するメリット

退職者に対して「去る者は追わず」が原則だった時代が終わろうとしている今、再活躍の期待をもって迎えられる存在がアルムナイといえます。では、アルムナイ採用を行う企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

ミスマッチが起きにくい

上述したとおり、中途採用者がどれだけ高い能力を持っていても、組織体質や企業風土、固有の慣習になじめるかどうかは別問題です。現場で採用してみないとわからないといった点で企業側の不安は払拭できません。しかしアルムナイ制度による採用の場合、対象者は元社員として社内に通じているため、ミスマッチの心配がなく、円滑かつスピーディに現場に溶け込むことが期待されます。

採用費や教育費等コストを削減できる

アルムナイは人材紹介会社や求人媒体を経由しないため、採用費を削減できることは大きなメリットです。求人票を出して応募がくるのを待つのではなく、企業から直接採用を持ちかけるダイレクトリクルーティングなどと同じく、低い採用コストで済みます。

また採用費だけでなく、これまでの経験を活かすことができることから、研修やOJTなどの教育費を抑えられることも大きなメリットです。何より、一度退職し、社外での豊富な知識・経験・ネットワークを携え戻ってくることで、自社の教育のみでは育みえない優秀な人材を確保できる点は、企業にとって大きなメリットです。

必要なタイミングで適切な採用を行うことができる

アルムナイ採用は、離職者と意図的につながりを保ち、定期的な情報交換をする中で適切なポストへの採用を図るという点がポイントです。企業の成長や事業の立ち上げ時のタイミングに合わせ、企業が必要とする時点でアルムナイ採用の声をかけることも可能になります。

離職者も企業側もお互いをよく知っているため、雇用するための不安材料が少ないのも特徴です。なおアルムナイ本人を再雇用するかどうかに関わらず、関係性を維持することで友人知人の紹介採用(リファラル採用)が可能、といったメリットもあります。

企業のブランディング向上に寄与する

自社にマイナスの企業評価を下す退職者が増えると、企業のイメージダウンや信用の失墜につながります。SNSが普及した今、口コミの拡散によりいったん企業イメージが悪化すると、信頼回復はとても困難です。しかし、アルムナイとして離職者と友好な関係を保つことによってそのようなリスクを軽減できます。

逆にいえば、離職者との好ましい関係は、企業イメージの向上につながります。離職後も製品やサービスを継続して使用するなど、アンバサダー的役割として企業へメリットをもたらし、時には企業顧客という立場に変化するケースも考えられます。他にも、離職者が転職したり起業したりして活躍することに伴い、前職の企業の価値は上がり、特に人事採用としてのブランディングにもなりえます。

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アルムナイ制度を運用するポイント

メリットの多いアルムナイ制度ですが、導入していても利用する社員が少なかったり、制度利用者へのサポートが不十分だったりなど、制度運用が完全に整っていない企業も少なくありません。多くの社員に活用してもらうためには、どのようにアルムナイ制度を運用すればよいのでしょうか。以下、具体的にポイントを紹介します。

復職するための条件を明確にする

「辞めてもまた復帰できるんだ」との誤解は、安易で軽率な離職を招きかねません。誰でも無条件に復職できるわけではないと明示しておくことは大事です。再雇用を認めるためのスキル・経験・在職期間といった採用基準を明確に規定しましょう。

受け入れ体制を整える

採用基準などの条件だけではなく、受け入れ側の体制も整える必要があります。「一度退職した社員が復職する」ことが、社内で心理的な抵抗や軋轢を生まないよう、十分注意する必要があります。受け入れる側の社員との面談の場を用意したり、再度雇用する時のフローに現場の従業員を入れたりするなど、両者間にわだかまりが生じずコミュニケーションがとれるような機会を設けましょう。

アルムナイ制度があることを周知する

社内にアルムナイ制度があることを周知しましょう。退職者には最後の面談時に伝えることを忘れず、また社内のイントラネットなどに掲載したりして案内しましょう。かつては離職者が冷たい視線にさらされる風潮もありました。時代が変わったことを、離職を検討している社員はもちろん、そうではない社員に対しても公にすることは大切です。「社員を大切にする組織だ」と安心感を与えることにもつながり、社員との信頼関係も深まります。

アルムナイ制度を導入する企業の事例

続いて、すでにアルムナイ制度やネットワークを活用している企業の事例をご紹介します。

アクセンチュア

アクセンチュア中途退社者を卒業生と呼び、サイト「アクセンチュア・アルムナイ・ネットワーク」を通じて、対面やオンラインで強い関係を維持しています。このサイトでは、アクセンチュアが手掛けるビジネスの宣伝が可能なことに加え、アムルナイの再就職情報に関するサポート情報を広く提供し、アルムナイがいつでもアクセンチュアに戻ってこられる体制が整備されています。ネットワークには現在40以上の国と地域で20万名のメンバーが登録しており、年間150以上のイベントが開催され、現役社員とOB・OG、離職者の積極的な交流の機会が設けられています。

セプテーニグループ

セプテーニグループは2018年1月、アルムナイ・リレーション・プラットフォームを導入し、セプテーニグループ・アルムナイネットワークを構築したことを発表。同時に、アルムナイ向けページを公開しました。セプテーニグループ独自のAI型人事システムを用いたキャリア開発カウンセリングを実施する他、グループ情報の提供、業務委託・業務提携に関する情報の共有を行い、ビジネス面におけるパートナーシップを構築するとしています。

ヤフー

ヤフーは、退職した3,000人を「モトヤフ」と名付け、2017年にアルムナイを開始しました。本社の食堂にモトヤフを招いて情報交換や外部から見た社内体制の改善点などを話しあっています。また会社が公式に非公開Facebookグループを作り、アルムナイ同士が自然とつながれるような仕組みをつくっています。

サイボウズ

サイボウズでは、退職したエンジニアが集まるイベントを実施したことがあります。エンジニアの採用をめぐっては各社の競争が激しく、課題になっている企業が多いのが現状です。自社での勤務歴があり、さらに外で経験を積んだエンジニアの再雇用に、サイボウズが着眼した取り組みといえます。

まとめ

終身雇用が当然だった時代は終わり、転職市場がこれまでにない活況を呈するなど、日本の労働市場は大きな曲がり角を迎えています。その中で人材不足に悩む企業が生き残っていくためには、従来の採用を見直すことも必要です。いったん退職した社員が知識と経験を身につけてもう一度戻ってこられるよう、門戸を開放する「アルムナイ制度」。海外同様、今後、日本企業に広く定着する可能性もありそうです。

<働き方改革に関するこちらの記事もチェック!>
企業がフリーランス人材を活用するメリットとコツ、事例を紹介
生産年齢人口とは?推移と予測
離職率の高い企業、低い企業の特徴は?多様化社会を生き抜くために必要なコト

<参考>
出戻り社員(再雇用)について | エン・ジャパン
アルムナイ | BizHint
経営者が注目する「アルムナイ」とは? | アルムナビ
アルムナイ制度とは?運用方法や退職者再雇用のメリットを解説 | TUNAG
「アルムナイ」とは?人材難の今、人と企業の関係性を“点”ではなく“線”で考える!| HR NOTE

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