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5Gでビジネス・働き方はどう変わる? 3つの特徴から読み解く通信変革

2020年から商用化・実用化が予定されている5G(第5世代移動通信システム)。2019年9月に大手通信キャリアがプレサービスを開始し、あらゆる業界が5Gを活用したビジネスチャンスを模索しています。

5Gの特徴は「高速大容量・低遅延・多数同時接続」の3つ。5Gは、国をあげて推進しているDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させ、社会インフラを大きく変える可能性を秘めています。

今回は、そんな5Gの特徴を徹底解説。5Gの実用化でビジネスや働き方にどのような変化が生まれるのかを紹介します。

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?事例とともに実現のポイントを紹介

ちょっと小話~5Gの「G」とは?~

5GのGは「Generation=世代」の頭文字です。5th Generationの略称であり、日本語で第5世代移動通信システムを意味します。1G・2G・3G・4Gに続く新しい通信規格です。

5Gとは ~移動通信システムの歴史~

現在、一般的となっている移動通信システムが4Gです。5Gは、4Gに次ぐ移動通信システムとなります。1Gから始まった移動通信システムは、これまで約10年のサイクルでその性能が進化し、対応するデジタル端末やサービスも大きく変化しています。ここでは移動通信システムの歴史と各「G=世代」で生まれた特徴的なサービスを振り返りながら、5G時代に期待されているサービスやライフスタイルの変化を紹介します。

1G:アナログ携帯の誕生

80年代に登場したのが、アナログ無線技術を活用した1Gです。ショルダーフォンや自動車電話が初めての携帯電話として登場。通話専用の回線で、メールやインターネットの利用はできませんでした。

2G:データ通信の普及

1Gから2Gへの大きな変化は、通信方式がアナログからデジタルに変化したことです。1999年にはNTTドコモがiモードをリリースし、携帯電話でのメールやインターネットの利用が可能になりました。携帯電話でのデータ利用が日常的になると、ユーザーはさらなる通信の高速化を求め、そのニーズに沿うように3Gの技術開発が進みました。

3G:世界基準の高速化通信規格

1G・2Gは地域別に異なる技術を用いた通信サービスだったため、海外での利用はできませんでした。しかし2000年代に登場した3Gは、ITU(国際電気通信連合)が定めた「世界標準の高速通信モバイルネットワーク」です。通信速度は飛躍的な高速化をとげ、通信速度は数kbps ~14Mbps まで向上。最大数kbpsが限界だった2Gと比較すると、通話やインターネットの利用はより快適に行えるようになりました。3Gの通信規格は3.5世代、3.9世代と年を重ねるごとにその性能が向上。特に3.9世代はLTE( Long Term Evolution)と呼ばれる後の4Gに近い移動通信システムとして登場。2008年にはソフトバンクが国内初のiPhoneをリリースし、多くの人が音楽やアプリゲーム、動画の視聴をスマートフォンで楽しむようになりました。しかし、映像の円滑な送受信には3G以上の通信速度が必要となり、通信規格へのさらなる機能向上が求められるようになりました。

4G:スマホ時代の到来

4Gの登場は、まさにスマートフォン時代の幕開けを意味します。50Mbps~1Gbpsの通信速度をほこる4Gは、動画配信サービスやモバイルゲームのような大容量コンテンツを普及させました。スマートフォン上の新サービスは次々に生まれ、今や利用者の拡大とともに巨大な市場へと成長しています。

5Gへの期待

1~4Gまでの歴史を振り返ると、新たな移動通信システムの登場にともない、革新的なサービスや製品が誕生しています。時代の流れとともに普及するサービス・製品は、通信規格へさらなる高い性能を求めるため、成長のサイクルを生んでいるのです。では、実用化される5Gには、どのような期待が集まっているのでしょうか。

そのひとつがIoT(Internet of Things)の普及です。「モノのインターネット化」を意味するIoTは、これまでインターネットとは無縁だったモノや人をつなぎます。例えば、エアコンや冷蔵庫などの家電製品やスマートスピーカーなど、IoT化したモノからは、その稼働状況や消費電力といったデータを収集できます。しかし、これまで予想もしていなかったあらゆるモノがインターネットに接続されることで、発生するデータ通信は膨大に。より高速で遅延のない、多くのIoT化されたモノとの接続が、移動通信システムに求められるようになったのです。その要件を満たすのが5Gになります。

IoTと5Gによって収集された膨大なビッグデータは、あらゆる場面での消費者ニーズの把握につながり、新しいビジネスやサービス・製品開発のきっかけとなります。通信インフラとも言える5Gの登場は、私たちのライフスタイルを大きく変え、各産業のデジタルトランスフォーメーションを加速させます。

5G「3つの特徴」を4Gと比較

5Gの特徴は「高速大容量通信・低遅延・多数同時接続」の3つです。ここでは、現行の移動通信システムである4Gと比較しながら、その性能を見ていきましょう。

高速大容量通信

5Gの通信速度・通信容量は、4Gと比べ劇的に向上。
通信速度は、4Gでは下りが最大1Gbps程度だったのに対し、5Gでは最大20Gbpsの通信速度が実現される予定です。つまり、4Gの20倍も早くなります。さらに通信容量は約1000倍近くまで増加します。

低遅延

ただ速くなるだけではなく遅延の少ないデータ通信であることも5Gの特徴です。4Gの遅延が10msだったのに対し、5Gは1ms。データ遅延は10分の1まで改善されます。たとえば、これまでタイムラグがあったリアルタイムの動画配信も、ストレスなく映像や音声を楽しめるのです。

多数同時接続

5Gの同時接続台数は、4Gの100倍。1㎢内で端末100万台の同時接続が可能になるのです。多くの人が集まるスタジアム内やイベント会場で「電波がつながりにくい」といったこともなくなります。多くのデジタル端末と接続できることは、その分膨大なデータ収集を可能に。例えば複数台のカメラを設置・接続することで、人の動きを監視し、従来は認識できなかった消費者の動向把握や、防犯対策にもつながります。

  4G 5G
高速大容量通信 上り:数百Mbps 下り:1Gbps 上り:10Gbps 下り:20Gbps
ダウンロードに10分かかっていたデータも、約30秒で受信完了
低遅延 10ms 1ms
リアルタイムの動画配信もストレスなく視聴可能
多数同時接続 1万台 100万台
人が密集した場所でも円滑なデータ通信が可能

5Gを支える3つの技術要素

4Gから大きな進歩を遂げた5G。どのような技術が5Gを支えているのでしょうか。

ビームフォーミング

スマートフォンは携帯キャリアが設置した基地局が発する電波を受けることで通信しています。この基地局からの電波を特定の位置、つまりスマートフォンの位置に向けて集中的に飛ばすことで、通信の高速化・安定化を図る技術がビームフォーミングです。

ビームフォーミングは電波が減衰しやすい高周波の帯域でより有効とされています。5Gは4Gよりも高周波の帯域を使用しているため、ビームフォーミングの恩恵が期待できるのです。

エッジコンピューティング

エッジコンピューティングは分散コンピューティングとも呼ばれる技術です。従来はクラウドで行っていた処理を、データの生成元となるスマートフォン・PCなどのデバイスに近いエリアにエッジサーバを配置して行うというものです。

5G時代になると、デバイスからは大量のデータが高速でサーバに送られることになります。そうした大容量データをクラウドサーバで処理すると、大きな負荷がかかり遅延などの原因になってしまいます。

クラウドとデバイスの間に設置されたエッジサーバにデータを分散し、処理を行うことでクラウドの負荷を下げ、通信処理を効率化できるのです。

グラント・フリー

スマートフォンは基地局と通信してデータのやりとりを行っています。その際、一つの基地局に大量のスマートフォンとの通信が集中すると、通信がうまくいかないことがあります。

5Gでは4Gよりもさらに大量のデータがやりとりされるため、この点が懸念されています。そこで注目されている技術が国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の提唱するグラント・フリーです。

グラントとは事前許可のこと。従来はスマートフォンと基地局が通信を行う際、周波数や利用時間といった様々な情報をやりとりして基地局が事前許可を出してから通信していました。グラント・フリーはそういった事前許可を出すことなく、いきなりデータを送信することで通信を効率化する方法です。

ローカル5Gとは?

ローカル5Gとは、地域や産業の個別のニーズに応じて地域の企業や自治体等が自らの建物内や敷地内でスポット的に構築できる5Gシステムのこと。大容量データを高速で安定的に通信できる5Gの特徴を、スマートフォンだけでなく様々な分野で活用しようという試みです。

たとえばスマートファクトリーやスマート農業、建築現場での重機遠隔操作、防災現場での活用などが想定されています。これまで同様の取り組みには主にWi-Fiが使用されてきましたが、5Gに置き換えることで通信の安定化を期待できます。

すでにNECやパナソニック、東芝といった企業がローカル5Gを活用したスマートファクトリーサービスへの参入を発表しています。

5Gで生まれるビジネスチャンス

5Gが開始されると、現行の通信環境は劇的に変化します。ストレスのないデータ通信は私たちの暮らしをさらに豊かにするでしょう。では、5Gがビジネスで活用されると、どのようなサービス・製品が生まれるのでしょうか。5Gによるビジネス変革を紹介します。

高度な映像技術の活用

5Gの活用で、4K・8Kといった高精細映像の伝送が可能になります。テレビ局では、4Gの通信環境では困難だった4K・8Kのリアルタイム映像を中継できるようになり、より臨場感あふれるコンテンツを視聴者に届けることが可能になります。またスタジアムでのスポーツ観戦やライブ会場では、マルチアングルと呼ばれる多角視点での撮影で、好きな選手やアイドルをさまざまな方向から手元のデジタル端末で視聴できます。また撮影した映像はリアルタイムに共有できるため、大容量映像の同時配信が可能に。視聴者に新たなエンターテイメント体験を提供できるようになるのです。

乗り物はモビリティサービスに

5Gは交通産業においても大きな変革をもたらします。電車・バスなど、公共交通機関の交通情報をリアルタイムに収集・分析できるようになります。5G時代の交通は、目的地まで「移動する」ための最適な移動手段を組み合わせた「モビリティサービス」へと変化します。また5Gは自動運転技術を加速。人は運転する必要がなくなり、車は移動する部屋・空間となります。目的地までの時間をどのように過ごすか、新たなサービス・製品開発に向け、自動車産業を超えた多くの企業の参入が予想されます。

IoTの推進で変わる提供価値

5Gで進むIoT(モノのインターネット化)によって、従来はモノの機能や価格で勝負していた企業も、データを活用したサービスの提供が可能になります。例えば、建設機器や農機器といったモノを販売するメーカーがあげられます。IoT化されたモノを販売することで、販売後の製品の稼働状況をデータとして収集。故障による事故の防止や、買い替え時期といった価値ある情報をサービスとして提供できるようになるのです。

5Gビジネスを進めるポイント「BtoBtoX」とは?

5Gビジネスの鍵を握ると見られるのが「BtoBtoX」です。BtoBは「Business to Business」の略称で企業同士のビジネスを表す言葉です。BtoBtoXはこの企業同士のビジネスの先にX、つまり一般の消費者や企業を顧客として置いたビジネスモデルのこと。企業同士がコラボレーションして新たな価値を生み出し、それを消費者や企業に届けるというわけです。

5GビジネスはこのBtoBtoXのビジネスで真価を発揮します。たとえば携帯キャリアが5Gの特性を生かしたソリューションを開発し、他の様々な分野の企業に提供して新たなビジネスにつなげるといった流れです。

NTTドコモの「5Gオープンパートナープログラム」やKDDIの「KDDI DIGITAL GATE」、ソフトバンクの「5G×IoT Studio」など、すでに携帯キャリアは5Gによる新ビジネス創出に向けた取り組みをスタートしています。

5Gを活用した新しいビジネスの創出には、自前主義のシステム構築ではなく、上記のように5G技術を要する大手通信キャリアをパートナーに加えた試みが成功の鍵となりそうです。

5Gで変わる働き方

ここまで5Gの特徴やビジネスの変化を紹介してきましたが、より身近な私たちの「働き方」にはどのような恩恵をもたらしてくれるのでしょう。3つ紹介します。

ストレスフリーなWeb会議

すでに多くの企業で導入が進んでいるWeb会議やテレビ会議。現行の4Gでは音声・映像の途切れが発生することもありましたが、5Gの活用によって、タイムラグのないストレスフリーなWeb会議・テレビ会議を実現できます。大画面でも高画質を保ち、多くの端末から1つの画面を共有した情報交換も可能に。今後あらゆる端末から場所を選ばない遠隔会議が浸透すれば、移動時間の削減やペーパーレスといった業務効率化が期待できます。

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「どこでもオフィス」の推進

現在、リモートワークやテレワークなど、場所を選ばない働き方が浸透しつつあります。5Gが上記で紹介したWeb会議といった顔を認識しながらのコミュニケーションや情報共有を可能にし、遠隔から業務を行う従業員も「まるで同じ空間で一緒に働いている」感覚を体験できるでしょう。現在はVRを活用した仮想オフィスの開発も進んでおり、まさにどこでもオフィス化が現実になろうとしています。業務の進捗確認やコミュニケーション不足といったリモートワーク・テレワークの課題も解消されると期待されているのです。

テレワークとは?「働き方改革」を推進する一手

クラウドサービス、リモートアクセスの円滑化

どこでもオフィスの推進にともなって重要なのが、円滑なクラウドサービスの利用とリモートアクセスです。現在DaaS(Desktop as a Service)やSaaS(Software as a Service)といったクラウドサービスを導入している企業は多いのではないでしょうか。リモートワーク、テレワークで働く従業員にとって、クラウドサービスの円滑な利用は業務効率に直結します。また社外にいながら社内のデータを活用できるリモートアクセスも、5Gによってストレスなく利用できるでしょう。

VDIとDaaS(クラウド型)の違いは? 比較ポイントを徹底解説!!
テレワーク実現に必須となるリモートアクセスとは?

まとめ

IoTの普及、働き方の変化など、時代の流れに沿うように開発が進められている5Gの開始も、いよいよ間近となりました。企業にとっては、業務効率化だけでなく新しいサービスや製品、ビジネスモデルの創出といった大きなチャンスであることに間違いはありません。今後のデジタル社会を勝ち抜いていくには、「単に移動通信システムが新しくなる」と他人事ですませるのではなく、5Gへの対応はもちろん、5Gを活用するためのデジタル端末の整備や柔軟な働き方が鍵になります。

働き方改革最新事情

いよいよ働き方改革は”法律”

2019年4月より「働き方改革関連法」が順次施行されています。
ここ数年、世間では「業務効率化」「生産性向上」「デジタル化」などと叫ばれてきた一方で6割以上の企業が働き方改革に対して、未対応となっています。
なぜ働き方改革が必要なのか?またどのように進めていけばいいのか?
改めて今後の「働き方改革」に迫っていきます。

  • いよいよ働き方改革は”法律”
  • ”2025年の崖”とは
  • 2025年までに迎える代表的なDX
  • 中小企業はデジタル化が遅れている
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主な内容

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