働き方

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?事例とともに実現のポイントを紹介

歴史を振り返ると、人類は発明や革命が起きるたびに劇的な変化を生み出してきましたが、いま世の中では人類史に残る革命が起きつつあります。それが「デジタルトランスフォーメーション」です。

18世紀のイギリスで発生した産業革命は、石炭や蒸気機関を利用した動力源の開発により、爆発的な生産力の向上を成し遂げました。90年代には情報通信革命(IT革命)が叫ばれました。デジタルトランスフォーメーションは第4次産業革命とも言われています。「デジタルトランスフォーメーション」とは一体どのようなものなのでしょうか。

実は、すでに皆さんはデジタルトランスフォーメーションの真っ只中で生活をしています。スマートフォンの普及に始まり、AIスピーカーやIoT(インターネット・オブ・シングス=モノのインターネット)、AR、VR、キャッシュレスなど皆さんの暮らしもデジタル技術によって大きく変わっていることを実感されているのではないでしょうか?

このようなデジタルソリューションによる変革を、「Digital Transformation=デジタルトランスフォーメーション」、略して「DX」と呼んでいます。

今回は、「DX」の定義、もたらすビジネスへの変革を紹介します。

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ちょっと小話~なぜ略語が「DT」ではなく「DX」?~

「デジタルトランスフォーメーション」という単語は、日本人には一息では発音しにくいのではないでしょうか? それは欧米の方々も同様で、略して「DX」と呼ばれています。

「DTじゃないの?」という疑問は至極もっともですが、英語圏では“Trans”を“X”と略すことが多く、Digital Transformationを「DX」と呼びます。

すべてがデジタルになる?~DXの定義とは?

DXとは、デジタルソリューションによる変革を指します。さらに企業の視点に立つと、既存ビジネスの枠組みに、デジタル技術の駆使によって新たな価値を創造することを指します。DXは、2004年にスウェーデンのストルターマン教授が提唱した「進化し続けるITテクノロジーが人々の生活を豊かにする」という概念が初出と言われています。

しかし、もちろんこの変革は突然起きたわけではありません。IDC Japan株式会社によると、ITのプラットフォームには第1~第3まであるとしています。そして、現状は第2のプラットフォームから「第3のプラットフォーム」への移行段階だとされています。
 

【IDC Japan株式会社によるITプラットフォームの概念】

第1のプラットフォーム…従来のコンピューターシステム・メインフレーム・端末
第2のプラットフォーム…クライアント・サーバーシステム
第3のプラットフォーム…クラウド/ビッグデータ・アナリティクス/ソーシャル/モバイル

 
IDC Japan株式会社は、今後、「第3のプラットフォーム」へ急速に移行していくとしたうえ、「企業が第3のプラットフォームを利用して、新しい製品やサービス、ビジネスモデル、新しい関係を通じて価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」とDXを定義づけています。
 

「第3のプラットフォーム」とは? 世界のビジネスを変える4つの基盤

この「第3のプラットフォーム」の考え方はIDC Japan株式会社だけが提唱・予見していることではありません。米国の大手ITマーケティング・コンサルティング企業のガートナーは、「ソーシャル」「モバイル」「クラウド」「インフォメーション」の4つの力の結びつきである「Nexus of Forces」が、今後のテクノロジー・プラットフォームの基盤となると考察しています。

またIBMは、「ソーシャル(S)」「モバイル(M)」「ビッグデータ・アナリティクス(A)」「クラウド(C)」の4要素「SMAC」が、新しいビジネスモデルを創造し、従来のビジネスにも新しい価値を生み出すとしています。日本IBM株式会社は、「SMAC」に「セキュリティ(S)」を加えた、「SMACS」を提唱しています。

「ビッグデータ・アナリティクス」と「インフォメーション」をほぼ同義だと考えると、4つの要素がまったく一致しています。

オンラインとオフラインの主従が逆転する時代

2007年にApple製 初代iPhoneが発売されて以降、いまや誰もがスマートフォンを持つ時代になりました。ユーザーは常にモバイルを肌身離さず持ち歩いています。スマートフォン1台で情報取得から決済も可能となり、個人(消費者)がSNSを通して情報を瞬時に発信・シェア・共感を得ることができます。

これまでは「オフラインの生活空間に、オンラインの利便性が寄与」していましたが、IoTやセンシング技術、ウェアラブル技術が進むと現実空間の行動データを取得できるようになり、リアルな生活がオンライン中心となっていきます。

リアルとデジタルの境界を問わず、一般ユーザーの行動データを蓄積できるようになると、ビッグデータが実現します。そのビッグデータをAIが解析することにより、一般ユーザーのニーズや行動予測を正確に把握できるようになります。

ここまでフェーズが進むと、マーケティング、営業プロセス、販売活動は自動化・自律化していくと予想されています。

デジタルトランスフォーメーションという概念が注目を集め始めたのは、デジタルテクノロジーを駆使して、既存事業に進出したデジタルディスラプターの存在です。

では、実際にどのような革新的なサービスが生まれてきたのか、具体的な事例を見ていきましょう。

DXの象徴であるデジタルディスラプターの事例

これから紹介する企業は、すでに多くの方が実際に使用したり、耳にしたりされたことがあるものばかりです。そして、まったく新しいビジネスモデルというよりは、既存のビジネスに大きな変革をもたらしたものが多く、それらをデジタル・ディスラプター(創造的破壊者)と呼びます。

そして、彼らこそがDXの体現者、象徴とも言えます。

海外企業の成功事例

現在普及しているITテクノロジーを活用したサービスのほとんどが、米国をはじめとする海外企業の取り組みです。代表的なデジタル・ディスラプターの成功事例を見ていきましょう。

【Amazon.comの例】

デジタル・ディスラプターの代表格であり、全世界の流通小売業に巨大なインパクトを与えたのがAmazon.comです。当初は書籍の取扱を中心としたインターネット書店でしたが、ユーザーファーストを徹底したUIやレコメンデーション機能、カスタマーレビューなどの機能が圧倒的な支持を獲得し、爆発的にシェアを拡大していったのはご存知の通り。

【Uber・Lyftの例】

Uberは「自動車で移動したい人」と「車を所有しており、空き時間がある人」をマッチングする配車・カーシェアリングサービスで、世界のタクシー業界にデジタル・ディスラプションを起こしました。サービスはアプリに集約されており、徹底的に無駄が省かれています。GPSでユーザーの位置情報を正確に把握し、車の到着時間も適確に伝えてくれます。決定的なのはUberが車を一台も保有していないことです。“モノからコトへ”を見事に体現しています。LyftやGrabもUberと同様のサービスを展開し、競争を繰り広げています。

【Airbnbの例】

2008年に旅行者と物件所有者をマッチングする、いわゆる民泊サービスを始めたのがAirbnb(エアービー・アンド・ビー)です。当初はホテル・宿泊施設の脅威とされていましたが、サービスの拡大とともに城や島などスペシャルな宿泊体験など、旅行先ならではの体験やグルメのマッチングも展開をするようになりました。現在は世界192カ国でサービスを展開しており、既存の旅行業界のディスラプターとなっています。

【WeWorkの例】

昨年、日本にも進出を果たしたアメリカのスタートアップであるWeWorkは、商業不動産のディスラプターとして話題です。「Work × IT」でも何度か登場していますが、コワーキングスペースやシェアオフィスなどのスペースを低料金で提供するサービスがメインとなります。ビジネスに必要な設備は整っているため、リーンスタートアップや企業のサテライトオフィスとして活用されています。そのワークプレイスに人々が集まることによって、新たな価値創造が生まれる場として注目を集めています。

【Houzzの例】

その名の通り、リフォーム、リノベーション、インテリアなどの情報提供、提案、交換を通して、ユーザーの好みに合う設計士、インテリアコーディネーター、工務店などをつなげるプラットフォームです。“住宅×IT”のデジタルトランスフォーメーションに成功した例で、全世界4000万人以上が利用しています。

【Spotifyの例】

スウェーデン発の音楽業界のディスラプターです。サブスクリプション型(月額定額制)の聴き放題というサービスで、CDやダウンロードが主流だった音楽業界を根本的に変えました。特定の楽曲に対価を払い視聴できるのはもちろん、レコメンデーション機能や著名人のプレイリスト機能などが充実し、新しい音楽に出会える体験を提供しています。

【Netflixの例】

映像ストリーミングサービスの最大手です。もともとはオンラインでのDVDレンタルを行っていましたが、通信技術の革新に伴いストリーミング配信を開始し、全世界でシェアを拡大。これまでのレンタルDVDショップに訪れ、返却をしなくてはいけないというプロセスがなくなりました。既存作品の配信だけではなく、オリジナル作品も製作し、数々の話題作を生み出しています。Amazon Prime VideoやHulu、dTVなども同様です。

日本企業のDX事例は?

デジタル技術を活用することで、従来の産業の在り方を変えるというDXの概念がご理解いただけたと思います。そのような世界的な潮流のなかで、先述した企業はダイナミックな成功事例ではありますが、日本の企業でもDXによって既存産業の価値観を華麗に変えています。

【医療分野でのDX事例/大塚デジタルヘルス】

精神科医療に対するデジタルソリューション事業を行うため、大塚製薬と日本アイ・ビー・エムが設立した合弁会社である大塚デジタルヘルス。精神科医療では、これまで症状や病歴などの医療情報は数値化されにくいこともあり、カルテは自由記述で蓄積されていました。その膨大な記録を、アイ・ビー・エムが開発した人工知能技術「Watson(ワトソン)」で言語解析、データベース化することに成功。データベースを共有することで、約400万人弱と言われる精神疾患患者の症例の絞り込みや治療に反映することが期待されています。

<参考:https://www.mentat.jp/jp/

【教育分野でのDX事例/ベネッセコーポレーション】

“赤ペン先生”で有名な「進研ゼミ」や「こどもちゃれんじ」を提供してきたベネッセコーポレーション。紙媒体を使った通信教育システムのイメージが強かった同社ですが、2014年度からタブレットを活用した「チャレンジ タッチ」を導入しています。親のスマートフォンで学習状況を確認でき、勉強した分だけごほうびがもらえるなどゲーム感覚で楽しめるようになっています。

<参考:https://customers.microsoft.com/ja-jp/story/benesse-azure-professional-services-japan-jp

【旅行業界でのDX事例/JTB】

旅行業界で国内最大手のJTBは、デジタルトランスフォーメーションに力を入れると同時に、事業再編を行い5年間で約1000億円の投資をすることを2018年に発表しています。例えば、AIを搭載したチャットボットのインバウンド向け観光支援アプリ「JAPAN Trip Navigator」の開発。土地勘のない観光客に英語や繁字体でナビゲートでき、観光客の行動データを分析してサービスにフィードバックしています。また店舗での接客を効率化するために、RPAの導入やディスプレイを活用したリモート接客も展開。今後は、バーチャルな体験による“移動しない旅行”も計画しているそうです。

<参考:https://www.travelvoice.jp/20180528-111711

【交通・運輸業界のDX事例/日本交通】

UberやライドシェアなどMaaSのサービスが拡大するなか、タクシー業界でDXに踏み込んだのが日本交通です。同社の基幹業務システムを開発していた子会社である日交データサービスをJapan Taxiへ改名。同社以外のタクシー会社も利用できる配車プラットフォーム・アプリを開発。またタクシーにタブレット端末を設置した動画広告の展開など、乗車料金だけにとどまらない収益システムの構築を目指しています。

<参考:http://www.nihon-kotsu.co.jp/about/release/170301.html

【フリーマーケットの例/メルカリの例】

C2Cをターゲットにした個人間での中古販売という新しいビジネスモデルを確立したメルカリ。匿名発送システムの採用や、これまで利用されていたPCでのインターネットオークションを、スマホ専用アプリの開発で操作の簡便化を実現しました。また、同社では2019年にスマホ決済サービス「メルペイ」を開始。メルカリでの売上ポイントをメルペイ残高として使用できるなど、既存サービスだけで完結しないシステムを構築しています。

上記に共通しているのが「顧客中心主義」。ユーザーの利便性を第一に考え、デジタル体験を効果的にサービス化しています。日本での新しい価値創造には、顧客中心主義がポイントになるかもしれません。

モノからコトへ。新しい価値創造。5G、IoT、AIの活用がさらに進む

あくまで一例ではありますが、彼らに共通しているのは、新しい商品(モノ)を開発しているわけではないということです。これまで物理的なモノの所有や購買からデジタルを媒介にする、もしくはプラットフォーム化している特徴があります。そのプラットフォームには、Amazon.comの例に漏れず、消費者の行動データが蓄積されていきます。

そういった意味では、キャッシュレスは大きなきっかけとなりました。クラウド上での会計管理やスマートフォンでの決済など、多岐にわたるサービスが展開されており、消費税増税のタイミングでキャッシュレスも急速に普及しました。モバイル端末ひとつで現金を持たずに決済できるため、デジタルプラットフォームと決済システムを連携することで、これまでの商流をデジタル変革することができ、新たなエコシステムを構築することができるのです。

この新たなエコシステムが生むのは一般消費者の視点で語ると、利便性や購買プロセスの変化になります。サービスや商品を提供するビジネスサイドの視点でも計り知れないメリットがあります。

さらに2020年には5Gの商用利用が日本でもスタートします。5Gによって、大容量高速通信、複数台接続、低遅延が実現できるため、製造業におけるIoTや運送業におけるドローン輸送、自動運転などビジネスが大きく変わると言われています。

特にIoTはフィジカルなモノから行動データを取得できるため、前述のようにオフラインとオンラインの主従が逆転するのも目の前だと言えるでしょう。

今後の競争を生き残るにはDXは必須


事例で紹介した企業やサービスはあまりにも巨大なため、イメージがつきにくいかもしれません。しかし、DXは現在進行系で急速に進んでいます。AI(人工知能)やIoT、コグニティブシステム、ロボティクス、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)など「第3のプラットフォーム」の次の段階も現実となりつつあります。

IDC Japan株式会社が2017年4月に発表した「国内デジタルトランスフォーメーションの成熟度ステージ分布」では、従業員1000人以上の国内企業の約半数が標準基盤化の段階にあるとしています。

<IDC Japan株式会社「国内デジタルトランスフォーメーションの成熟度ステージ分布」より作成>

企業戦略としてDXに取り組んではいるものの、まだ革新的な製品やサービスの創出には至っていないということです。独自のイノベーションを生み出しにくいのは、人材が少ないという日本の土壌も関係しますが、先述のようなディスラプターになろうと思ってもなれるわけではありません。

また、2018年9月に経済産業省が発表した「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」では、今後国内でDXが進まない場合、最大で年間12兆円もの経済損失が生まれると試算しています。市場競争の敗者にならないためにも、国内企業はスピード感をもったDXへの取り組みが求められるのです。

数字で見るデジタルトランスフォーメーション

日本マイクロソフト株式会社が2018年2月に発表した調査によると、今後「デジタルトランスフォーメーション」は加速していき、日本経済に大きく寄与することを予測しています。

【日本マイクロソフト株式会社によるデジタルトランスフォーメーションの経済効果調査】

  • 2021年までに日本のGDP(国内総生産)の約50%をデジタル製品やデジタルサービスが占める
  • 2021年までにデジタルトランスフォーメーションは、日本のGDPを約11兆円、GDPのCAGR(年平均成長率)を0.4%増加する
  • デジタルトランスフォーメーションのリーディングカンパニーは、フォロワーと比較して2倍の恩恵を享受

 
とんでもない規模の数字が並んでいますが、いま社会、生活の構造全体が大きな変革をしていることがわかるでしょう。

DXが推進されるメリットの一方で、経済産業省は日本のデジタルシフトの致命的な遅れを報告しています。それが「2025年の崖」です。

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経産省の「DXレポート」とは?

世界と比較しても、日本のDXは遅れています。前述の経産省の「2025年の崖」では、切迫感を持って日本の現状をレポートしています。端的に言うと、世界で急速に進むDXに対して、このまま遅れをとっていると競争に勝てなくなるという指摘です。

2025年の崖

DXの必要性を多くの企業が認知していないという背景もありますが、中堅・大企業も旧来型のITシステムのままでおり、このままだと保守運用だけで莫大なコストがかかり、新しいITシステムへの移管がさらに難しくなると指摘されています。

“2025年の崖”を要約。 経済産業省「DXレポート」への対策とは?

小規模な経営のデジタル化からスタートするのも大事

むしろ急務なのは経営層のIT・デジタル化と言えるでしょう。独自のサービスを生み出さないにせよ、競合他社が業務効率化を目指し、例えば、クラウド上の会計システムやナレッジの蓄積、顧客のデータ管理、ペーパーレス化、リモートワーク・モバイルワークなどの多様な働き方を進めていると大きく溝をあけられることになります。

本来的なDXは、各企業が最適なITシステムを構築してデータをビジネスに活用することです。DXのスタート地点は、部分最適や業務効率でも良いですし、一定のメリットもあるでしょう。しかし、ツールやサービスを導入する際には必ずその先のゴールや目標を明確にしなくてはいけません。

DXを進める攻めのIT投資とは?

IoTやビッグデータに代表される情報技術の急速な発展をきっかけに、世界規模で産業構造やビジネスモデルに大きな変化が訪れています。

日本では少子高齢化の影響により、労働人口の減少に伴う生産性の低下が避けられない状況にあります。少ない人員でこれまで以上の生産性を得るには、最新技術を活用するためのIT投資が欠かせません。

しかし、現状日本のIT投資は、基本的にバックオフィス業務を効率化する「守りのIT投資」が主であります。一方IT先進国のアメリカでは、業績を伸ばす、顧客満足度を上げるための「攻めのIT投資」が行われてきました。

社内業務の効率化やコスト削減をはじめとする守りのIT投資も重要ですが、今後は国内だけでなく、厳しい国際競争を勝ち抜くためにも、デジタル技術を活用したビジネスモデルの変革や新たな価値を創出する戦略的な攻めのIT投資が求められています。

経済産業省では、東京証券取引所の上場会社の中から、新たな価値の創造、経営革新、収益水準・生産性の向上をもたらす積極的なIT利活用に取り組んでいる企業を「攻めのIT経営銘柄」として選定・公表しています。(2020年以降は「デジタルトランスフォーメーション銘柄2020」という名称に変更)

攻めのIT投資への転換は、国をあげての課題・取り組みであるとわかります。

DXのロードマップを把握しよう

経済産業省では、企業がDXを推進するにあたり、「DX評価指標」を定めました。
「DX推進のための経営のあり方、また仕組みに関するもの」、「DX実現のために基盤となるITシステム構築に関するもの」の大きく2つに分かれた構成に対し、35項目からなる定性指標で、企業は自社のDX推進度を客観的に把握できます。

DX評価指標の項目はこちらから

このようにDXを推進する前段階の、自社の現状を把握する「準備期間」をDXレポート内で描かれている「DX実現シナリオ」では「システム刷新:経営判断/先行実施期間」と呼ばれ、2020年までの取り組みとしています。つまり未だにDXを進めずに現状の把握もできていない企業は、既にDXを推進している企業と比べ大きく出遅れていることになるのです。

DX実現シナリオによれば、2020年以降のロードマップを「システム刷新集中期間(DXファースト期間)【2021~2025】」としています。具体的なポイントは下記の2点です。

・経営戦略を踏まえたシステム刷新を経営の最優先課題とし、計画的なシステム刷新を断行(業種・企業ごとの特性に応じた形で実施)
・不要なシステムの廃棄、マイクロサービスの活用による段階的な刷新、協調領域の共通プラットフォーム活用等により、リスクを低減

<経済産業省「DX実現シナリオ」より引用>

DXレポートでは、旧来型システムを使用し続けることで生まれる、保守運用にかかる莫大なコストが課題として提示されていました。2020年以降は、旧来型システムを新システムへ刷新する取り組みが、企業が国内外の競合他社に淘汰されないための重要なポイントになるのです。

「経営戦略を踏まえたシステム刷新」、つまり前項で述べた「攻めのIT投資」にもつながる取り組みです。

経済産業省のサポート体制のもと、これまで多くの企業はDXを推し進めてきました。2020年現在、未だにDXを推進できていない企業は、すぐに自社のビジネスモデルや使用しているシステムを見直す必要があるでしょう。

DXが実装されなくてはDXレポートのシナリオ通りになる

「DXレポート」の内容にもありますが、DX推進が遅れると年間で最大12兆円もの経済損失が生まれると予測されています。レガシーシステムの保守運用にコストがかかる他、外的要因も大きく影響しています。

デジタル大国・中国や世界の動きから遅れている

2019年にアリババが行った「独身の日」の1日の売上が4兆円を超えたことや、デジタル人民元が実現間近など、急速に中国はデジタル大国化しています。アメリカのGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazonの4社)に対し、中国を代表するIT企業の4社はBTAH(Baidu/バイドゥ、Alibaba/アリババ、Tencent/テンセント、Huawei/ファーウェイ)と称され、デジタル分野で世界を二分する勢力となっています。

個人情報保護やプライバシーの懸念もありますが、顔認証も普及し始めており、小売店やホテルなどは無人化が進んでいます。すべての産業で日進月歩の最新デジタル技術が導入されており、産業の構造も急速に変化しています。

Netflixがレンタルビデオ・DVD業界はおろか一般市民の余暇の過ごし方を一変させ、Spotifyが音楽の楽しみ方を変えたようにどの産業でもディスラプターが、国内ではなく世界中から生まれる時代となっています。

DXが進まない原因

日本企業でDXが進まない理由はさまざまですが、代表的な例を2つ解説します。

原因①:ツール・サービスの導入が目的化している

働き方改革と同時に各種業務支援ツールも大きく普及しています。もちろんツールを利用することで業務効率化を期待できるので、働き方改革も促進します。しかし、DXと働き方改革はイコールではありません。例えば、クラウドサービスを導入することが目的化してしまい、十分に活用できないなどはよくある例ではないでしょうか。顧客データや業務プロセスのデータなどを取得後、どのようなITシステム基盤を構築し、その上でどのようなビジネスモデルに変えていくのか。ゴール設定が重要になります。

原因②:IT人材の不足

原因①でゴールの設定が重要だと説明しましたが、経営トップ層に明確なビジョンがなければ推進は進みませんし、いざ着手となるとIT人材がいない、という課題があります。データ基盤が構築できても、データサイエンティスト、アナリストが必要になります。社内での育成と社外からの招聘を同時に進めていく過程で、組織全体の意識をデジタルシフトしていかなくてはDXの推進は難しいでしょう。

DXを実現するための課題とポイント

では、DXを実現するためには具体的にどのようなアクションを起こせばいいのでしょうか。ここでは経産省のガイドラインをもとにステップを紹介します。

経営層や現場の意識改革と現状把握

まずは自社の「DX評価指標」を知ることが大切です。つまり現状把握です。経産省のサイトでは、客観的に企業のDXの度合いをはかれる項目が活用できます。評価指標は6段階で診断されます。まずは下記サイトより「DX評価指標」を把握しましょう。

DX評価指標の項目はこちらから
自己診断入力サイトはこちらから

6段階のDX度を把握したら、次のレベルにあがれるようにアクションプランを作成しましょう。専門人材がいない場合は、第三者機関か、ITベンダーやコンサルタントに相談するのがよいでしょう。

可能なところから小さく始める

本稿で挙げたような事例は、非常に規模が大きいのですが、フレームワークや概念としては参考にできたのではないでしょうか。予算も限られている中小規模の企業は、可能なところから優先順位をつけて、少しずつ変革していくのがよいでしょう。何も対策をせずにいると、“2025年の崖”を乗り越えることはできません。

2020年 DXの最新動向

一般社団法人日本CTO協会は、2020年4月10日に「DX動向調査」の結果を発表しました。調査の結果、高成長するデジタル企業には「経営レベルの技術理解とデータ活用」、「高品質と改善速度の両立」、「開発者環境への積極投資」という3つの特徴が見られました。

役員の中にソフトウェア技術者出身がいることで、組織体系を生かしながらDXを推し進めているほか、クラウドサービスの使用による高品質とスピードの両立、キャリア選択や成長機会を拡大する環境の提供など、DX拡大に積極的なデジタル企業には共通点が見られます。

コロナで進むDX

世界規模で猛威を振るう新型コロナウイルスの存在は、DXを推進する重要性を高めています。

その理由は、感染予防として「非対面」と「無人化」のニーズが急激に増加したことにあります。実際にオフラインで行っていた業務もオンラインで行う、機械やロボットに代替させることが必須となりました。

もしもコロナ禍を過ぎたとしても、今後の私たちの暮らしは「アフターコロナ」「ウィズコロナ」を意識したものとなり、元に戻ることがない可能性も考えられます。だからこそ、DXの推進はますます急がなければならない状況といえるでしょう。

こうした状況に置かれながらも、在宅勤務やオンライン授業、オンライン診療などを可能にしたのは、Web会議システムがあってこそ。同じくオンライン上でもコミュニケーションを取れる環境にしたのは、チャットをはじめとするビジネスコミュニケーションツールです。

新型コロナウイルスの影響により、従来であれば対面で行う業務、実施そのものが目的となり形骸化していた業務で発生していた無駄な時間やコストが、DXにより改善され始めています。その流れは世界規模で今後も拡大していくことでしょう。

<参考>
Meet the 2017 CNBC Disruptor 50 companies
【解説】デジタルトランスフォーメーション
Gartner

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