少子高齢化に伴い、労働人口が減少し続けている現代日本。企業は少しでも多くの人材を確保しようと、社員が働きやすい環境づくりに取り組み始めています。
そのひとつが、テレワークやモバイルワーク、サテライトオフィスなどオフィスにとらわれない働き方。育児や介護などのライフステージで「オフィスで働きたくても働けない」状況にある社員にとって、このような働き方は願ってもないものでしょうし、企業にとっても人材の流出を防ぐことができます。
◎モバイルワーク導入のメリットは? 営業職で見る業務効率化の例
しかし、オフィスにとらわれない働き方にもハードルは存在します。そのひとつが勤怠管理です。社員の行動を把握できるオフィスと違い、テレワークは社員の勤怠状況を把握することは難しいもの。「本当に働いているの?」と疑ってしまう……なんてこともあるかもしれませんし、そういう疑念が生まれてしまうと、テレワーカーにとっても居心地が悪くなります。
そんな不安を解決するため、テレワークを取り入れている企業はもちろん、多くの企業がクラウド上での勤怠管理を導入しています。クラウド上での勤怠管理は、給与計算や残業時間の把握など一元管理できるため、無駄を削減できるメリットも。
今回は、今後さらに求められるであろう、多様な働き方を取り入れるうえでも欠かせない「クラウド勤怠管理システム」のメリットを紹介します
働き方が多様化するにつれて勤怠管理にも変化が必要
テレワークとは、「tele/離れた場所」と「work/働く」をあわせた造語のことであり、厚生労働省は、「パソコンなどITを活用した時間や場所にとらわれない柔軟な働き方」と定義しています。2011年3月に発生した東日本大震災以後、総務省は首都圏での公共交通機関の運休時であっても業務を継続できることからBCP(事業継続性計画/Business Continuity Plan)の観点からもテレワークを推奨しています。「多様な働き方」は、出産や育児、介護といったライフイベント、新たなスキルや知識取得のための勉強と、仕事とプライベートのバランスを保つことが求められるようになったことからより一層求められるようになりました。
そんなテレワークは、働く場所や雇用形態により、形態が異なります。
【在宅勤務(終日在宅勤務)】
オフィスに出勤せず、自宅を就業場所とする勤務形態。病気や怪我、妊娠や育児でオフィスまで行くことが難しい社員も自宅で業務を進めることができます。
【モバイルワーク】
移動中や顧客先、カフェなどを就業場所とします。さまざまな場所でも効率的に業務に取り組めるため、外出する機会の多い営業部に最適です。
【サテライトオフィス勤務(施設利用型勤務)】
自社のオフィスではないオフィスや、遠隔勤務用の施設を就業場所とする形態です。サテライトオフィスは、地方で働きたい社員の希望を叶えることもできます。
これまでの日本の企業では、オフィスでの長時間労働は当たり前でした。しかし2018年6月29日に働き方改革関連法が可決・成立したように、政府は「従来の働き方を続けていては、企業はおろか日本の衰退を免れない」と考えています。だからこそ、「働き方改革」の一環として、オフィスに出勤せずとも勤務ができるテレワークを推奨しているのです。
多くの企業がテレワークの導入を進める一方、「これまでの方法では勤怠管理が難しくなる」というデメリットを課題に思う企業も珍しくありません。たしかに、テレワークは正確な勤務時間を把握できないため、社員から申請された勤務時間をもとに給与を支給する際に手間が発生することでしょう。総務省が発表している平成27年度情報通信白書でも、テレワークの導入を検討している企業の67.2%が「適正な労務管理」が行えるかどうかを課題としています。
クラウド上の勤怠管理システムが主流に
現在でもタイムカードとExcelで勤怠管理をしている企業も多いでしょう。ただ、タイムカードによる昔ながらの勤怠管理に固執する理由もないはずです。
そもそも、タイムカードで勤怠時間の集計を行おうとした際、どうしてもExcelに社員ひとりひとりのデータを手入力することは避けられません。社員数が増えれば増えるほど、その労力は多く必要となります。さらに手入力であれば、どこかでミスが発生する可能性も十分にあります。
そんなタイムカードでのデメリットを解決できるのが、クラウド上での勤怠管理それも、従業員や人事・総務、経営側と企業に関わるさまざまな立場にメリットがあります。
- 【従業員のメリット】
- オフィスだけでなく、テレワーク先でも出退勤時間が記録できる
- アプリと連動していることが多いので、操作が手軽
- 有給申請をはじめとする各種申請が煩わしくない
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【人事・総務のメリット】
- 集計が自動化されるため、作業時間を大きく短縮できる
- タイムカードは法律により3年間の保管が義務とされているが、勤怠情報がデータであれば保管費がかからない
- 集計も自動的に行われるので、ミスが起きにくい
- 【経営側のメリット】
- タイムカード購入費やレコーダー故障時の修理費、集計にかかる人件費といったコストの削減につながる
- 残業時間を超えそうになった場合、アラートで知らせてくれる機能もあり、社員の残業時間調整を行える
勤怠管理の考え方改革
テレワークには多くのメリットがある一方、やはり気になるのは「勤怠時間に嘘偽りがないか」、「誰がどのように管理するか」といった疑問でしょう。疑いたくはないものの、「人事の目が届かない場で、勤怠処理だけして遊んでいるのでは?」という疑いを持ってしまうかもしれません。
ただ、もともとテレワークは「働き方改革」の一環。「在宅だからこそ働ける」、「短時間であれば働ける」といった課題を解決し、少ない人材でより高い生産性を求めることや長時間労働の削減が目的です。
そして、クラウド上による勤怠管理は、社員の生産性を向上し、多様化する働き方をサポートしてくれます。多様な働き方を推進することで、従業員が働かなくなるのではないか? という考え方も理解できますが、隠れて残業していないか? 長時間労働をしていないか? という管理方法にシフトチェンジをするべきです。そして、実際に最新のクラウド勤怠管理ではパソコンとマッチングすることで、遠隔でも労働時間を把握することが可能です。残業代の抑止は経営者にとっても喜ばしいメリットでしょう。
長時間労働が慢性的になっていると、当然ながら従業員のメンタルヘルスは損なわれます。そのような企業と残業が少なく、多様な働き方が可能な企業を比較するとどうでしょうか? どちらの企業で働いてみたいと思うでしょうか? クラウドでの勤怠管理は、決して厳しく勤務時間を管理するだけのものではありません。長期的なビジョンでとらえると、メリットの方がはるかに大きいことが理解できるのではないでしょうか。
おすすめの勤怠管理システム
勤怠管理システムを導入するにしても、さまざまなサービスが日に日にリリースされていることから「どれを選んだらいいの?」と悩んでしまうかもしれません。
だからこそ、「本当に欲しい機能が備わっているのか」、「予算内に収まるか」といったポイントを踏まえ、慎重に選ぶことが大切です。多くのクラウド勤怠管理システムは無料プランが用意されているので、まずは気になるシステムを試してみるのがよいでしょう。
※各システムに記載しているおすすめの事業規模は「Work x IT」編集部の見解です。
【IEYASU勤怠管理】(中小企業向け)
IEYASUは、すべての機能が完全無料のまま使える勤怠管理システムです。打刻等は無料版でも可能ですが、有料版でも月額3,800円(39名まで)から1,000社以上のサポート経験により培った人事・労務のノウハウが詰まったICカードでの打刻や残業アラート、各種書類の申請など機能が充実しています。
【HuRAid勤怠分析/フレイド勤怠分析】(中規模〜大企業向け)
勤怠情報や過去に行ったストレスチェック、性格診断テストを分析し、潜在化している就労状況を見つけ出すことに長けた「HuRAid勤怠分析」。初期費用は20万円〜となっていますが、社員1人1人の4ヶ月後の退職確率を算出するなど、勤怠管理にとどまらない使い方をすることができ、従業員満足度や健康経営に直結した勤怠管理が可能です。
【シュキーン】(中小企業向け)
「シュキーン」はPCやスマートフォンのブラウザがあれば、追加の準備もなくすぐに始められる勤怠管理サービス。利用人数が10人までであれば、月額料金無料で使用することもできます。また、チーム単位で平均労働時間をグラフ化できるため、働き過ぎの部署が一目瞭然。労働時間をもとに人員を異動し、バランスを保つよう手配することも可能です。
【KING OF TIME/キングオブタイム】(事業規模問わず)
初期費用0円・社員1人につき月額300円と、安価なコストで導入できる「KING OF TIME」。1ヶ月の残業時間や遅刻日が規定値を超えた際には、集計値に色をつけて表示させるアラート機能、有給の申請がすぐにできる休暇管理機能は低コストでありながら使い勝手の良いサービスといえるでしょう。また他の給与、人事関連のクラウド型サービスとも連携が可能な点も嬉しいポイント。
【IDリンク・マネージャー長時間残業抑止】(大企業向け)
株式会社富士通エフサスが提供する「IDリンク・マネージャー」は、徹底して生産性向上にコミットしています。勤怠管理システムと連携し、パソコンを制御することで申請のない残業を抑止、定時退社促進のメッセージや強制的なシャットダウンも可能なので、無駄な残業を削減し、仕事の効率化を図ります。
【ジョブカン勤怠管理】(事業規模問わず)
1ユーザーにつき200円/月から始められ、サポート体制が整備。出勤管理はもちろん、休暇・申請管理、工数管理など機能も充実しており、様々な事業形態や規模に合わせてカスタマイズできるため万能性があります。また工数管理機能もあるため、業務改善の一助となるでしょう。
【jinjer勤怠】(事業規模問わず)
36協定に基づいた異常値の検出、労働時間超過、打刻漏れのアラート機能や勤怠状況による社員モチベーションの可視化など働き方改革に直結する機能が搭載されています。PC、スマホ、タブレット、ICカートはもちろんApple WatchやGoogle HomeなどGPS機能と連動した打刻も可能。
【Touch On Time】(事業規模問わず)
指紋認証、ICカード認証、従業員ID+パスワード認証、指静脈認証、Webブラウザなど多様な打刻方法を選べるため、様々な業態に対応できます。就業規則は会社ごとに異なるため、自社にフィットしたシステムを導入できると、従業員の負担も少なくなりそうです。初期費用もかからず、1ユーザーあたり300円/月で導入可能です。
PCそのものを買い換えるのも一手
テレワークはオフィス外で勤務する以上、情報漏えいのリスクが高まることは避けられません。テレワークの導入コストを抑えようと、社員の私物PCの利用を認めたところ(いわゆるBYOD)、セキュリティソフトがインストールされていなかったためにトラブルが発生した……という事態を防ぐためにも、テレワークのためのPC購入を検討するのも良いでしょう。
◎BYODとは? 企業が知っておくべきメリットとセキュリティーリスクを解説(前編)
◎BYODとは? 企業が知っておくべきメリットとセキュリティーリスクを解説(後編)
◎企業が検討するべきBYOD導入における課題とその解決方法
仕事をするのが自宅のみであれば、デスクトップPCでも問題ありません。しかし、サテライトオフィスやモバイルワークの場合、場所や時間を選ばずに持ち運ぶことができるPCであることが大前提です。すべてのデータをクラウド上でやり取りすることからある程度のスペックも必要です。また、多くのメーカーから働き方改革に特化した機能を兼ね備えている製品もリリースされているので、一考する価値がありそうです。
ところで、皆さんの中にはWindows7を使っている方もいるかもしれません。しかし、Windows7のサポート完全終了まで2年を切っていることをご存知でしょうか。サポートが終了すれば、セキュリティ関連のプログラムは更新されず、情報漏えいを防ぐことは難しくなります。コストばかりを重視するのではなく、セキュリティ面も念頭に入れながら、タイミングを見てPCを買うことをおすすめします。
◎制度導入にあたって知っておきたい!テレワークに欠かせないPCの要件とは
まとめ
社会的な背景もあり、働き方改革が喫緊の課題となっている日本。従業員にとっても、多様な働き方ができるのはメリットになるでしょう。
テレワークは人材の確保としても有効に思われていますが、それを実現させるためにはクラウドでの勤怠管理が欠かせません。集計を簡略化させることはもちろん、「長く働かせることを避け、社員1人ひとりの心身を労わる」ためにも導入を検討してはいかがでしょうか。
<参考>
ICTによる新たなワークスタイル―テレワークの可能性 | 平成27年度情報通信白書(総務省)
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