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企業が検討するべきBYOD導入における課題とその解決方法

執筆者:鈴木 直人

個人が所有する“何か”を業務利用する場合、BYOX(Bring Your Own “X”)と呼びます。このBYOXの「X」には様々な言葉が当てはまります。具体的には、スマートフォンやタブレットなど、私物のデバイスを社内に持ち込んで作業するBYOD(Bring Your Own Device)、個人が契約するクラウドサービスをビジネス利用するBYOC(Bring Your Own Cloud)、個人契約のWebサービスを持ち込む(Bring Your Own Service)、個人のアプリケーションを業務用に利用するBYOA(Bring Your Own Application)などです。

特にBYODは、業務効率化、コストカットなど様々なメリットから日本でも導入する企業が増えてきています。しかしBYODにはセキュリティの低下など、見過ごせないデメリットもあります。これらの課題を解決し、スムーズにBYODを導入するにはどうすればいいのでしょうか。今回はBYODのメリット・デメリットや、企業が直面する課題とその解決方法をご紹介します。

BYOD導入企業が期待する4つのメリット

BYODを導入する企業が期待しているメリットには、主に以下の4つがあります。

  1. UX向上による生産性アップ
  2. 仕事環境のリモート化による業務効率化
  3. 端末支給コストの削減
  4. 端末の物理的分散による災害時の被害軽減

では一つ一つ詳しく見ていきましょう。

UXによる生産性向上

UX(User Experience:ユーザーエクスペリエンス)とは、文字通りユーザが製品やシステムを利用した際に得られる経験や満足を指します。BYODの文脈で言い換えるならば「使い慣れている」ということです。例えば自宅で使っている端末と会社で使っている端末のOSが違えば細かな操作方法も違ってきますし、人によってはキーボードの叩き心地が変わるだけで「使いづらいな」とストレスを感じる場合もあるでしょう。BYODを導入すればこうしたストレスがなくなるため、生産性の向上が期待できます。

仕事環境のリモート化による業務効率化

たとえば、退勤後に取引先から「今すぐ資料の修正をして欲しい」と連絡があったとしましょう。BYODを行なっていて、かつ退勤後持ち帰る端末の中にデータがあれば、こうした急な仕事にも即座に対応できます。一方、BYODをしていなければ取引先の依頼を断るか、わざわざ会社に戻って端末を開かなければなりません。外回り営業でもこれと同じことがいえます。BYODは仕事環境のリモート化を実現するため、こうした問題を解決できます。

端末支給コストの削減

企業側からしてみると、これまで支給していた業務専用の端末が必要なくなります。しかもそれまで予算をやりくりしてなんとか支給していた端末よりも、社員個人が所有している端末の方が高性能な場合もあるため、なおさらメリットは大きくなります。また端末を支給すると資産管理や、ソフトウェアのバージョン管理などの管理業務も必要ですが、BYODに移行すればこうした業務も軽減されます。

端末の物理的分散による災害時の被害軽減

企業で全ての端末を保有している場合、火災や震災などの災害に見舞われると事業に大きな打撃を受けることになります。これに対してBYODを導入していれば端末は各社員の自宅にあるため、リスクが分散されるというメリットがあります。

なぜBYODがスタンダードにならないのか?

これだけのメリットがありながら、なぜ日本ではBYODがスタンダードにならないのでしょうか。それにはBYODが持つ以下のようなデメリットが影響しています。

  1. 端末の購入費などの個人負担についての懸念
  2. ワークライフバランスへの懸念
  3. BYOD導入に伴う金銭コスト及び業務コスト
  4. 情報漏えいなどのセキュリティ面のリスクとコスト

それでは、より詳しくご説明していきます。

端末の購入費などの個人負担についての懸念

BYODを企業として正式に導入するとなると、まず個人用の端末を持っていない人にはメリットがないばかりか新たに購入しなければならない可能性も生じます。また新たに端末を購入する費用や通信費についても、「仕事でも使っているのに全額自分で負担しなきゃいけないのか?」と疑問を持つ社員も出てくるでしょう。

ワークライフバランスへの懸念

「退勤後や社外でも仕事ができる」ということは、仕事が私生活にまで入り込んでくる可能性を示唆しています。ビジネスとプライベートの切り替えに慣れていない人の場合、帰宅してからも仕事のことばかり考えてしまい、ワークライフバランスを損なう危険も高まります。

BYOD導入に伴う金銭コスト及び業務コスト

こうした社員の不安を取り除くために企業側は相応の導入コストをかける必要があります。端末の購入費用に関する規定を作ったり、端末の安全性等の検証作業を行ったりと、金銭コストだけでなく業務コストも必要です。またBYODを安全に導入するためには時間も人手も必要ですから、そのぶんの人件費もかかります。

情報漏えいなどのセキュリティ面のリスクとコスト

企業側のデメリットとして最も大きいのがセキュリティ面のリスクとコスト。情報漏えいや情報改ざんなどを防止するためのセキュリティ体制を整えるにもコストはかかります。たとえセキュリティ体制を整えたとしても、情報漏えいや情報改ざんなどが起きるリスクはゼロにはなりません。BYODを実施しなくてもこうしたコストやリスクは必要ですが、BYODを実施するよりは安上がりで済みます。したがって企業はBYODで得られる利便性とリスクを慎重に天秤にかけなければなりません。

BYODの禁止・黙認のリスク

こうしたデメリットがあるために、日本ではBYOD禁止を明言している企業や、黙認している企業も少なからず存在します。しかしこれら禁止派・黙認派は、実は大きなリスクを抱え込んでいるのです。

たとえば、禁止派の企業が社内ルールとしてBYODの禁止を明文化し、罰則まで設けたとしましょう。しかしそこまでしても、支給する端末が性能の低いものだったり、社内の情報システムが不便なもののままだったりすれば、いくらかの社員は、必ず個人所有の端末を仕事に利用しはじめます。するとBYODの対策をとっていない禁止派の企業セキュリティは、悪意ある第三者によってあっさり破られてしまいます。一方、黙認派は社員がBYODを行わない理由がさらに少なくなるため、セキュリティ上のリスクは禁止派よりも高くなります。

冒頭で挙げた日本のBYOD導入企業の割合と個人所有の端末をビジネスでも利用している人の割合のズレは、日本の企業がそれだけセキュリティ上のリスクを抱えているということを示しています。したがって、個人が当然のように高性能端末を所有する時代においては、どのような立場をとるにしてもBYODへの対応は必要不可欠なのです。

BYOD導入の課題を解決する方法

BYOD導入には様々な課題がありますが、これを解決するための方法も様々なものが用意されています。以下ではそのうちのいくつかを紹介します。

BYOD禁止派は徹底したアクセス制御を行う

社内ネットワークから個人所有の端末を完全に締め出すためのアクセス制御を行えば、BYODを厳密に禁止することができます。例えばクライアント証明書と呼ばれる電子証明書を利用すると、パスワードやIDによる認証ではなく、端末そのものを認証するため、企業が許可した端末以外からのアクセスが不可能になります。例えば、このクライアント証明書に「Workspace MDM(Mobile Device Management、モバイルデバイス管理)」などのサービスを併用すれば、個人所有の端末からのアクセスを制限しつつ、許可した端末の管理を中央集権的に行うことも可能になります。

個人負担への懸念は「公私分計」サービスで解消可能

社員の懸念である仕事に関係する電話代やアプリ料金の負担については、各社から提供されている「公私分計」サービスを利用すれば比較的簡単に対応できます。このサービスはあらかじめ仕事に関係する電話番号などを登録しておき、その通信先に関連する費用を私用とは別に請求するというサービスです。これを利用すれば社員が取引先との電話を渋って業務に支障が出たり、社員が毎月のアプリ利用料金に悩んだりすることもなくなります。

セキュリティは「Android for Work」で確保する

Googleが提供する「Android for Work」などのサービスを利用すれば、組織全体が企業向けモバイル管理(EMM)プロバイダと契約することで、個人の端末での「ビジネスコンテンツ/個人用コンテンツ」の分類が可能になります。これにより企業側はビジネスコンテンツだけにセキュリティ機能をインストールできるようになるため、社員のプライベートやプライバシーに干渉することなくセキュリティ管理ができるようになります。

このようにシステム面の課題には様々なサービスが解決策を提示してくれています。しかし導入コストはどうしても必要ですし、ワークライフバランスといったソフト面に関しては各社各人が根気よく対応していかなくてはなりません。

早いうちからBYODが抱える課題に備えよう

メリットを享受するにせよ、デメリットに対応するにせよ、BYODを導入する企業は今後ますます増えていくことでしょう。BYODが抱えるリスクが顕在化してから慌てるのではなく、今のうちからきっちりとこの問題と向き合っておきましょう。それが企業にとっても社員にとっても、より良い未来に繋がるはずです。

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