働き方

日本政府が導入を検討するサマータイムとは?メリット・デメリットについて

執筆者:田尻 亨太

昨今、日本政府が導入を検討しているサマータイム。2019年の試験実施に向け政府は臨時国会に関連法案の提出を検討していますが、慎重派の声も多いようです。しかし、なぜこれほどまでにサマータイムの導入が議論されているのでしょうか。そもそも、サマータイムとは一体なんなのでしょうか。そこで今回は、サマータイムの概要やメリット・デメリット、働き方改革との関連性などについてご紹介します。

サマータイムとは

サマータイムとは日照時間の長い夏の一定期間に標準時間を1〜2時間進めること。明るい時間を有効活用でき、省エネや余暇時間の有効活用につながることから、日照時間が長い欧米諸国をはじめとする世界60カ国が導入しています。英語圏の国ではdaylight saving time/DST(日光節約時間)と呼ばれているようです。

なぜ今、日本でサマータイムの導入が議論されているのか

戦後の日本でもGHQの指示によりサマータイムが導入されたこともありましたが、国民の理解を得ることができず、結果的に4年で制度が廃止されました。その後も日本国内では省エネを目的としたサマータイム導入が度々議論されてきましたが、慎重派の声が多く結果的に導入には至っていません。

では、なぜ再びサマータイムの導入が議論されているのでしょうか。昨今、欧米メディアが連日の猛暑をみて、世界的スポーツ大会を東京で開催することを不安視する報道を続けていました。これを受けて日本政府内では「何らかの対策を講じる必要がる」という声があがっていたようです。

そして、2018年8月に安倍総理がスポーツ大会の組織委員である森会長と会談した際に、「暑さ対策の一環としてサマータイムの導入を検討してほしい」と要望を受けたそうです。これをきかっけに国会でもサマータイムの導入について議論されるようになりました。

しかし、スポーツ大会期間中の猛暑対策のためだけに国民全体を巻き込んでサマータイムを導入する必要が本当にあるのでしょうか。ここからはサマータイム導入のメリット・デメリットについてご紹介していきます。

サマータイム導入のメリット

メリット1:照明の節約

実際にサマータイムが導入されることになれば、朝の涼しい時間帯や夕方の明るい時間帯を活用できるので、省エネ対策や地球温暖化対策にも効果が期待できます。

メリット2:経済の活性化

明るい時間に仕事が終われば、買い物や飲み会などアフター5を満喫する人が増え、サマータイム対応の家電製品や電波時計などの売り上げも伸びるため、数億円の経済効果があるとも言われています。

さらには、明るい時間が増えることで観光や文化産業の振興も見込めます。

メリット3:交通事故や犯罪の防止

学校や仕事から帰る人や買い物をする人が最も多い夕方の時間帯が比較的明るくなることから、交通事故が減少するとの意見も。また、これに伴い経済的損失が減少し、その額は年間数百億円とも言われています。さらには、女性のひったくり被害が減少し、犯罪発生の抑制にもつながります。

サマータイム導入のデメリット

デメリット1:健康リスクが高まる

2012年3月、「一般社団法人日本睡眠学会 サマータイム制度に関する特別委員会」は「サマータイムー健康に与える影響—」という資料を発表しました。この資料の中で、イギリスがサマータイムの開始時期と終了時期に1週間にわたり起床時刻の気分や計算能力について調査したときの研究結果が紹介されています。

研究によると、まず開始時期の1週間では、一度は新しい時間に適応はするものの、結局また元の生活リズムに戻ってしまい、1週間後も新しい生活リズムに適応することはなかったとのこと。調査期間中、被験者たちには眠気や集中力低下などの症状が伴っていたそうです。

一方、終了期間の被験者たちは新しい起床時間に慣れるまで1週間はかかるものの、時間変更前に比べ寝起きの気分は良好で、計算能力も高くなっていました。こうした結果から、サマータイムが心身に大きな影響を与えていたことがわかります。

また、ロシアなどの一部の国ではサマータイムが終了する時期に心筋梗塞で死亡する人や救急車で搬送される人が増加し、省エネ効果もほとんどなかったそうです。結果、ロシアでは2011年3月末の夏時間移行を最後に、サマータイムを廃止したそうです。

デメリット2:時間調整やシステム改修に工数とコストがかかる

2018年8月、立命館大学情報処理工学部・上原哲太郎教授は「2020年にあわせたサマータイム実施は不可能である」というスライドを発表しています。

スライドによると、世の中で稼働している多くの情報システムは「時間」を基準に動いていて、こうした全てのシステムに関わる「時間」を変更するとなると、莫大な工数とコストがかかるとのこと。

通常、何年もかけて改修する作業をたった1〜2年で行うわけですから、当然ITエンジニアに相当な負荷がかかり、そのコストも3000億円程度になると言われています。結果、現在国をあげて推進している働き方改革が阻害され、「経済被害は兆単位になる」と上原教授は警鐘を鳴らします。

また、サマータイム対応のために配布されている修正プログラムに紛れて、ウイルスが入った偽の修正プログラムが出回ってしまうリスクも。サマータイムの導入はサイバー攻撃を仕掛ける側にとってはまたとないチャンス。本来対策すべきはずのサイバーテロのお膳立てをしてしまう恐れもあるのです。

デメリット3:残業時間が増える恐れがある

定時になっても外がまだ明るいため、特に屋外作業者の就業時間が延びることはほぼ確実です。需要を期待して営業時間を延期する飲食店や小売店も増えるでしょう。

また、ホワイトカラーの職場でも、外が明るいうちに帰ることに罪悪感を感じる人も多いはず。サマータイムを導入することで、結果的に出社時間が早まり、労働時間が単純に延びるだけの恐れがあります。

過去に日本でサマータイムが廃止された背景には、こうした残業時間の増加や労働条件の悪化も要因にあったようです。また、韓国でも2009年にサマータイム導入で労働時間の増加を理由に激しい議論が展開されています。

サマータイムは働き方改革を促進するのか

日本国内でサマータイムを導入し、成果をあげている企業もあるようです。例えば、自動車部品大手の株式会社デンソーは2015年に夏の定時を1時間前倒しする朝方勤務制度を導入。メリハリある働き方の推進に効果があったとして、現在も朝方勤務制度を続けているそうです。

残業禁止など働く時間に制限を設ければ、たしかにサマータイムや朝方勤務の導入は一定の効果を発揮するかもしれません。しかし、労働時間の規制がないままサマータイムだけを導入してしまうと、単純に労働時間が伸びてしまう恐れもあります。

また、サマータイム導入に伴う「時間」の調整を必要とするシステムを扱っている企業やそのような仕事を請け負うシステム会社は、社員の過重労働に十分気を配る必要があるでしょう。

仮に2020年のサマータイム関連法案が可決された場合や、今後サマータイムを企業として導入する場合は、ここでご紹介したメリットやデメリットを参考にしたうえで、社員の健康を損なったり、働き方改革の推進を妨げたりしないような施策を検討してみてください。

<参考>
サマータイム導入のデメリットは 海外の一部では健康被害の例も | ライブドアニュース
サマータイム-健康に与える影響- |一般社団法人 日本睡眠学会 サマータイム制度に関する特別委員会
2020年にあわせたサマータイム実施は不可能である(Ver.0.1) 立命館大学情報理工学部 上原哲太郎 2018.8.10版 | SlideShare
生活構造改革を目指すサマータイム〜調査結果の概要〜 | 公益財団法人日本生産性本部

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