働き方改革

働き方改革の代償?フラリーマンが増えた理由とは

政府が推進する働き方改革により残業を規制する企業が増えてきました。社員にとっては過度な長時間労働が課せられないのは一見良いことに思えますが、中には定時で帰ることを渋る人も。

せっかく定時で帰宅することができたとしても、「家に居場所がない」「早く帰っても、育児や家事を手伝わなければいけない」と理由から、あえて街をフラフラしてから帰る“フラリーマン”が急増しているそうです。

そもそも、フラリーマンとはどんな方がなってしまうものなのか。また、減少のためにできることはあるのか。今回はそんな“フラリーマン”について解説します。

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「家に帰りたくない」……街にあふれるフラリーマンとは?

そもそもフラリーマンとはどういった意味なのでしょうか。本来の意味は、目白大学の名誉教授であり社会心理学者の渋谷昌三氏が自身の著書で「家庭を顧みず、居場所を失いふらふらするサラリーマン」という意味で作った造語だったようです。しかし、働き方改革で残業を禁止する企業が増えたことにより、「仕事が早く終わったにも関わらず、まっすぐ家に帰らずにあちこちをふらふらする会社員」という意味に次第に変化していったようです。

しかし、なぜフラリーマンたちはせっかく定時に帰れるのに、まっすぐ家に帰らないのでしょうか。その背景には、「妻の邪魔をしたくない」「妻に煙たがられる」というフラリーマンたちの心理が働いているようです。例えば、早く帰って任せっきりだった家事を手伝おうとしても、「仕事を増やさないで」と怒られてしまう……。せっかく家事を手伝おうと思っても、結局足手まといになってしまうため、家事のゴールデンタイムに帰宅することをためらってしまうようです。

当然ながら、残業をしないと残業代も得られません。お小遣いが減ったフラリーマンたちは、ウインドーショッピングをしたり、公園のベンチで本を読んだり、街で缶チューハイを飲んだり、とお金のかからない時間の潰し方をすることが多いようです。

働き方改革でフラリーマンが増えた理由

会社員がフラリーマンとなるのは、上記で紹介した「家事や育児の邪魔をしたくない」という理由の他に、「自分の時間が欲しい」といった理由もあるようです。改めてフラリーマンが増える背景をより具体的にご紹介します。

働き方改革によって、残業が許されなくなった

従来の日本企業には、「残業をすればするほど偉い」「会社に残って長く働く人ほど優秀」という価値観が蔓延していました。しかし、労働人口が減少し、生産性が求められる昨今において、その価値観は過去のものとなりつつあります。仕事の効率化を図る人や残業をしない人ほど優秀、という価値観に多くの日本企業がシフトし始めているのです。

また、政府が残業削減を推進する背景には、ワンオペ育児などを解消して労働力を増やす狙いもあります。例えば、夫が早く帰りワンオペ育児をしていた妻の負担が軽くなれば、時間的にも精神的にも余裕を持った妻が再び働くことも可能になります。

家事や育児に協力できないと判断する

一方、定時で帰れるようになった会社員たちは「家事ができない」事実を苦痛に思った夫は家から遠ざかる傾向にあります。フラリーマン化した結果、「育児も家事も手伝ってくれない夫といる意味がわからなくなった」と、妻から離婚を切り出されてしまった……という人もいるようです。

フラリーマンは決して「家(妻)が嫌だから帰らない」わけではありません。むしろ、「早く帰ったところで家事を手伝えない」「早く帰って妻と過ごすにしても、何をしたらいいのかわからない」と思う人がほとんど。それゆえ、「自分が遅く帰ることで妻の負担を減らそう」という判断に至るケースが多いようです。

息抜きの時間が欲しい

「定時で帰ったところで待っているのは家事と育児」「仕事や家事・育児から解放される息抜きの時間を作りたい」という理由から、憩いの時間を求めてフラリーマン化する人も。ビジネスパーソンとしての肩書きや、家庭での自分の役割から解放され、何者でもない自分になる。そんな自由な時間を求めて、家に帰られない人もいるようです。

「もしも夫がフラリーマンだったら」妻の本音は

では、フラリーマンについて、妻はどのようなことを思っているのでしょうか。

フラリーマンなんてありえない!怒りを感じる妻

育児と仕事を両立する女性が増えている昨今。政府が女性の社会進出を主要課題に挙げていることからも、今後はますます育児と仕事の両立が求められることになるでしょう。

だからこそ、「家事も育児も放棄してふらついている」というフラリーマンに女性が怒りをあらわにするのも不思議ではありません。仕事の帰りに保育園に子どもを迎えに行き、その足で夕食の買い物へ。帰宅すれば、子どもの相手をしながら夕食を作り、食べさせたら入浴させ、寝付くまで遊ぶ。息をつく間もなく、家事と育児をしなければいけないのです。

フラリーマンになる人の中には、「家事・育児は女性がやるのが当たり前」「男性には関係ない」という考え方を持っている方もいるかもしれません。しかし、「ふたりで協力して少しでも早く家事や育児を終わらせよう」という思いやりの気持ちがあれば、妻も早く帰ってくる夫を煙たがることはないはずです。

フラリーマンでも、仕方ない……共感する妻

一方で、「家事に参加してくれればいいけど、参加しないのであればいない方がいい」「迷惑をかけないなら、別にかまわない」と、フラリーマンを否定しない妻もいます。ただ、どれも賛成するのではなく、「仕方ない」とどこか諦めているのも感じられます。

フラリーマンを減らすには?

フラリーマンの存在は、賛否両論。しかし、少なくとも増加することで得られるメリットはありません。では、どうすればフラリーマンを減らすことができるのでしょうか。

企業が課外活動への参加を推進する

企業が働き方改革を推進する目的は人材確保だけではありません。従業員に自由な時間が増えれば、業務外の活動を通じてインプットや人脈作りを行う余裕が生まれます。その結果、従業員から新たなアイデアが生まれ、いい仕事につながります。具体的には、企業がボランティア活動団体などと連携し、従業員に活動への参加を促せば、フラリーマンは自然と減少するかもしれません。

また、子どものいる男性同士のコミュニティを企業側が意図的に作ることもおすすめ。フラリーマンに共通しているのは、「何をしたらいいのかわからない」「家事や育児に自信がない」というネガティブな思考。子どもを持つ男性社員のコミュニティに参加すれば、育児の“先輩”から、家庭内でのコミュニケーション方法や、自分でも協力できる範囲の家事・育児を学べます。その結果が、自信につながり、家に帰りたくなる従業員が増えるでしょう。

副業を推奨する

空き時間を活用した副業を推奨するのもフラリーマンを減らす方法のひとつ。自分の趣味に関わるもの、興味を持った分野に携わるものであれば、続けることも容易で、普段の業務へのヒントも得られるでしょう。

夫婦間のコミュニケーションを推進する

フラリーマンである夫と、それに不満を持つ妻は、「家事や育児を手伝ったところで、否定される」「手伝う気もないのに、否定されるのを言い訳に帰ってこない」と、お互いが被害者意識を持っていることがあります。

しかし、この被害者意識が改善されない以上、問題は平行線のまま。少しでも夫は家事や育児に取り組み、妻は適度にサポートに入る。お互いに歩み寄る姿勢が、「帰りたくなる家づくり」の第一歩です。

それだけでなく、「早く帰れるなら、家族で夕飯を食べよう」「子どもが寝たら、ふたりでゆっくりしない?」と、帰るための理由作りを妻から提案するのも有効。こうした夫婦間のコミュニケーションを企業側から従業員に提案するのも、フラリーマンを減らして従業員のパフォーマンスを高めるには効果的です。

おわりに

働き方改革による残業規制で1日に1時間ほど残業が減れば、1ヶ月で約20時間もの時間が、年間であれば10日分ほどの時間が生まれます。この時間をどう使うのかは社員ひとりひとりに委ねられていますが、できれば有効に活用してもらったほうが企業の競争力向上につながります。ぜひ社員に残業させない真の意味を伝えてみてはいかがでしょうか。

<参考>
“フラリーマン”あなたは夫を許せますか? | NHK NEWSWEB
フラリーマンの陰で泣くワンオペ妻 息抜きVS甘えすぎ | 朝日デジタル
「働き方の改革」分科会における議論の整理(中間報告案) | 内閣府

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