生産性

RPAは働き方改革の切り札となるのか———いまさら聞けないRPAと、その実力について。

執筆者:やつづかえり

働き方改革の流れの中で業務の生産性をいかに上げるか、あるいは深刻な人手不足をどう乗り越えるか、そんな課題を抱えている企業から、このところ熱い視線を浴びているのがRPA(Robotic Process Automation)です。

「2日間かかっていた事務処理が30分でできるように」――といった圧倒的な効果が喧伝されるRPAとは一体どのようなものでしょうか?基本的な解説の後、導入に当たって懸念されることや、結局それは企業と個人を幸せにするものなのか?を考えてみたいと思います。

 

 

RPAは、24時間働いてくれる「透明なロボット」

RPAは「Robotic Process Automation,ロボティック・プロセス・オートメーション」の略で、その実態はコンピューターの中で作業するソフトウェアです。人型ロボットのPepperや工場の産業用ロボットのように目に見える存在ではありませんが、事務作業を人間の代わりにこなすという役割から「ロボット」と呼ばれています。

実際、RPAが動く様子は、まるで透明なロボットがPCを操作しているかのよう。例えば、顧客からの注文票が添付されたメールを受信すると、その添付ファイルの内容を元に販売管理システムに受注内容を入力、納期を顧客にメールで伝える……といった複数システムをまたがる一連の処理を自動で行ってくれます。

RPAの性能は、自動化の作業に応じて3段階に区分されています。事前に決めた条件や手順に従った作業のみが可能なclass1、AIを搭載してある程度の例外や非定型な業務も任せられるclass2、その業務のプロセス改善なども自律的に行うclass3。今普及しつつあるRPAはclass1のレベルです。事前に定義していない作業はできないのですが、非常に大きな効果が見込めます。

 

費用が低く雇える超優秀なアルバイトのような存在

例えば、あなたの職場に新しいアルバイトが入ってきたと想像してください。全くの未経験者で、仕事はすべて一から教えなければなりません。でも、きちんとルールを教えれば、どんなに複雑な作業でも1回で覚えて絶対間違えず、尋常でないスピードでこなし(2日かかっていたことが30分で終わるくらい!)、24時間働かせても疲れを見せず、文句も言わない――。

もしそんなアルバイトがいたら、あなたの仕事は大変ラクになりますよね。RPAは、そんな超優秀なアルバイトのような存在なのです。しかも、これまで「生産性向上」や「業務プロセス改革」などの名目で導入されてきた情報システムと比べると、はるかに低コストかつ短期間で導入することが可能。そのため、まずはテスト的に使ってみて効果を実感し、大規模導入を決める会社が増えてきているのです。

 

 

RPA導入で懸念される3つのポイント

どんなシステムにも言えることですが、RPAは万能薬ではありません。導入する際に注意が必要な点をいくつか挙げてみます。

業務プロセスによっては効果が出にくい

RPAは、パソコン上で操作できることしかできません。FAX受信機から出力された紙を取ってきてその内容を入力するとか、作成した書類を課長のデスクまで持っていってハンコをもらうとか、そういう作業はできないわけです。

この場合、FAXで届いた内容をデータ入力するところや、プリントアウトされた書類を課長に持っていくところは人間がやり、それ以外をRPAにやらせるという方法が考えられます。でも、人間が介在する部分がある限り、RPAの処理がいかにスピーディでも、結局は人間の作業に足が引っ張られます。特に、一連の処理の途中に人間の作業が介在すると非常に非効率なので、RPAを導入する前に、なるべくRPAだけで作業が完結するような流れを考える必要があります。

 

RPAは意外と気が利かない

導入時点では最適な形で自動処理が行われるようになっていたとしても、そのやり方が永遠にベストかどうかは分かりません。

例えば、「ゴールド・コーヒー・スタンド」というコーヒーチェーンを運営する会社で、インターネットで自社に関する口コミ情報を検索してレポートにまとめるという業務があったとします。このとき、担当者は「ゴールド・コーヒー・スタンド」と「ゴールド コーヒー」というふたつのキーワードで情報を検索していたとすると、これをRPAで自動化するのは簡単です。

ただ、人間がこの業務をやっていると、ある時に「最近うちの店を『金コー』と呼ぶユーザーがいるようだ。これからは『金コー』も検索ワードに加えよう」とか、「うちの業態に似た新しいチェーン店が進出してきたから、競合の口コミも集めよう」といったことを思いつき、レポートを充実させるということが自然に起こり得ます。しかしclass1レベルのRPAの場合、人間が設定を変えない限り、最初に覚えさせた処理をそのままやり続けるだけです。

RPAによるアウトプットの内容がいつの間にか陳腐化してしまい、それを受けとる人間の方もそのことに気づかないとしたら、ちょっと怖いですね。RPAで自動化した業務に改善の余地がないか、時々プロセスを見直すことが必要でしょう。

 

特定業務のブラックボックス化

RPAに業務を移管した当初は、元々その業務の担当者がいるので問題ないのですが、時間が経って担当者の変更などが生じると、RPAが何をやっているのか分からない、やっていることは分かってもその背景が分からない、という状況になりかねません。これは業務を外注化した時に、社内にノウハウがなくなってしまう「空洞化」の現象と似ています。

そうなると、例えば社内のシステムのバージョンアップや入れ替えなどがあったときに、そのシステムを使っているRPAが正常に動作しなくなり、大混乱に陥る、といったリスクがあります。

前項目で必要性を指摘したプロセス全体を見直す視点を持ったり、RPAには判断できない例外の発生やRPAが動かなくなるようなトラブルに対応したりするためにも、自動化した業務内容を、その背景も含めて社内でよく把握しておく必要があります。

 

 

もし、RPAに自分の仕事が奪われてしまったら……

「とにかく今やっている定型業務をどんどんRPAで自動化しよう」という考え方では、そもそもやらなくてもよい仕事をRPAにやらせたり、RPAに起因するトラブルの対応に時間がかかったりと、生産性の向上どころか逆に非効率を生み出す結果にもなりかねません。しかし、定型業務の中でも必要な業務を見極め、しっかり管理をしながら上手に活用できれば、企業の競争力を上げる強力な武器になるでしょう。

一方、働く個人としては、自分の仕事をロボットに取られてしまうのでは、と脅威を感じる人もいるのではないでしょうか。世間では、AIが高度に発達する将来、どの程度人間の仕事を奪うのかに関心を集めていますが、定形業務しかできないRPAのレベルでも十分に人間より速く上手に担えるのです。

この2017年9月、株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ取締役 代表執行役社長の平野信行氏が、国内の事務作業をRPAで自動化し、9,500人相当の労働量の削減を目指すと発言したことが話題になりました。9,500人というのは三菱東京UFJ銀行の国内従業員の約30%を占め、その労働量をより「クリエイティブな仕事」に振り向ける方針だそうです(※)。

「定型業務はRPAにやらせるから、あなたはもっとクリエイティブな仕事をして」と言われたら――。日頃から「もっと面白い仕事をやらせてくれよ」と思っていたような人にとっては、チャンスです。でも、「特別な知識もスキルもないから、単純作業しかできない」という人は不安ですよね。当面はまだRPAが導入されない会社や業界、職種に働き続けることが可能でしょう。ただ、やがては高度なAIの普及も相まって、やはり仕事がなくなる時代がやってきます。

 

人間にしかできないスキルを身につけることが大事

そうなる前に、AIにもロボットにもできないような仕事のスキルを身につけることをおすすめします。では、具体的にどのような仕事でしょうか。それは人に対するケアやおもてなしなど相手の感情にも配慮が必要なヒューマンタッチな仕事や、新たなモノやサービスを生み出すようなクリエイティブな仕事だと言われています。新たなスキルを身につけるには労力がかかりますが、自分にしかできない技術を身につけることで得られる充実感はきっと増すでしょう。今後は、新たなスキルの獲得を国が支援するような施策の充実も望まれます。

また自分の仕事は定形処理であっても、複雑な処理を正確に素早くやることや、プロセスの改善を積み重ねて生産性を上げることで組織に貢献してきた――そういう方は、自分の存在価値が急になくなってしまうような不安を覚えるかもしれません。その場合、上に挙げたRPA導入の際の懸念点をよく理解し、RPAの導入や運用に積極的に関わるのが得策でしょう。導入の際には現在の業務プロセスを熟知している担当者が不可欠ですし、導入後も環境の変化に合わせてRPAの処理内容をメンテナンスしていけるのは、やはり業務をよく知っている人だからです。そして、導入や運用を経験したことで、他の業務にRPAを導入するときにもお呼びがかかるかもしれません。

RPAの普及を脅威ではなくチャンスにするには、企業にとってはいかに賢く取り入れるか、個人にとっては自分自身が変化する転機と捉えられるかがカギになるでしょう。

 

参考

※1総務省〜三菱UFJ、9500人分の仕事自動化 国内従業員の3割:日本経済新聞

VAIOが提案する働き方改革

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