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ICT技術の発展と働き方改革の普及により、テレワークを導入、もしくは導入を検討している企業が増えています。
しかし、テレワーク導入には、いくつかハードルがあります。ひとつはセキュリティ。もうひとつはオフィス外にいてもオフィスと変わらないネットワーク環境の構築です。
安全かつ快適なテレワークを実行するにあたり、有効となるのがリモートアクセスです。
今回は、リモートアクセスについて、VPNとの違いを交えて解説します。
リモートアクセスが注目される背景
リモートアクセスとは、自宅や外出先などオフィス外から社内ネットワークやPCに接続すること、またはそれを実現するITシステムを指します。端的に言うと、ネットワーク上につながったITシステムを遠隔操作が可能で、リモートコントロール、リモートデスクトップとも呼ばれています。
これまでは業務は、セキュリティの観点からもデバイスの観点からもオフィス内で行うのが一般的でしたが、国内で働き方改革が急ピッチで進むなかで、リモートアクセスの利便性が注目されるようになりました。
テレワークなど多様な働き方の拡大
リモートアクセスが注目される背景のひとつに、テレワークの拡大が挙げられます。
釈迦に説法かもしれませんが、テレワークについて端的に説明すると「ICT(情報通信技術)を活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」のことで、在宅勤務、出先近くでのカフェやコワーキングスペースで働くリモートワーク、サテライトオフィスの活用などのワークスタイルが代表的です。
テレワークの最大のメリットは、移動時間の短縮や育児・介護などの事情があっても働けるといった業務効率の向上やワークライフバランスの確保にあります。
IDC Japanの調査によると、2017年現在で日本国内の14万社がテレワークを導入(大企業で23.6%、中堅中小企業4.7%、全体で4.7%)。しかし、2022年には29万社、全体で9.7%まで拡大すると予測しています。
また総務省では、日本企業のテレワーク導入率は2012年の11.5%から2017年には13.9%と徐々に増加しています。IDC Japanの調査と数字の幅に違いはありますが、テレワークが拡大していることは間違いありません。
デバイスの発展やデジタルサービスの普及
テレワークが近年まで浸透しなかった最大の理由は、オフィスとオフィス以外の労働環境の格差です。少し前までは、業務を効率的にこなすスペックを装備しているPCはデスクトップが主流でしたし、通信回線も整備されていませんでした。そのため、仮に社外で働いても非常に業務効率を下げる結果となり、現実的ではなかったのです。
近年の技術革新により、軽量かつ高スペックのモビリティの高いノートPCが誕生し、高速の通信回線も網羅されています。この環境に加えて、リモートアクセスを利用すれば、社内ネットワークや社内PCに接続することができます。
つまり社外のデバイスから社内データにアクセス、閲覧ができ、社内PCに接続すれば持ち出しているデバイスにインストールされていないソフトウェアやツールも利用できます。
同時に、クラウドサービスの台頭も多様な働き方の普及の追い風となっています。クラウドサービスは、インターネット環境さえあれば、特別なツールや機器を必要とせずに業務を効率的に行うことができます。
このような技術革新がオフィス外でも労働環境の格差をなくしました。そのためスマートフォンやタブレットのビジネス利用も増加しています。
リモートアクセスのメリット
では、改めてリモートアクセスの機能と、活用することで得られるメリットについて解説します。
社内データにどこからでもアクセスできる
最大のメリットは、社外から社内ネットワーク、PC、サーバなどに接続できることです。オフィス外でもオフィスにいるのと同様の環境を実現できるため、テレワークなどの多様な働き方には欠かせません。
働き方改革・業務効率化を促進できる
オフィスと変わらない労働環境を実現できるため、働き方改革や業務効率化を促進することができます。天候の悪化による交通網の乱れやインフルエンザが蔓延し外出することで感染のリスクがある場合など、出社せずに在宅勤務に切り替えるなどフレキシブルかつ自由な働き方を選択できます。このような多様性は、採用や従業員満足度の向上に期待ができます。
情報漏えいリスクの低減
社内システムにアクセスすることで、社外にデータを持ち出さずに作業を行えるので情報漏えいのリスクも低減できます。リモートアクセスの一種であるシンクライアントや仮想デスクトップを使えば、端末にデータを残さずに業務を行うことが可能です。また万が一端末を紛失した場合でも、遠隔操作でデータを消去できる機能が付いたサービスもあります。
BYODの活用とソフト導入、管理コストの削減
テレワークの普及に合わせて、個人所有端末をビジネス利用するBYOD(Bring Your Own Device)を認める企業が増加しています。BYODは、端末購入の初期コストを抑えられるなどのメリットがありますが、つきまとうのは情報漏えいのリスクです。リモートアクセスの活用で、個人所有の端末にデータを保存せずに作業を行えるのでBYODの最大のデメリットを潰すことができます。
◎BYODとは? 企業が知っておくべきメリットとセキュリティリスクを解説
またBYODに限らず、持ち出し用端末に必要なソフトウェアをインストールする必要がなくなります。
リモートアクセスの代表的サービス
次に代表的なリモートアクセスサービスを、特徴とともに紹介します。
TeamViewer
ドイツで生まれ、世界中で高いシェアを誇る「TeamViewer」。接続の安定性、堅牢なセキュリティ、マルチデバイスへの対応、使いやすさなど多くの面で高い評価を得ています。企業規模に合わせた料金プランが用意されていますが、まずは無料版でその機能を試用してみましょう。
Google Chromeリモートデスクトップ
2019年6月にGoogle Chromeの拡張機能として正式にリリースされたのが「Google Chromeリモートデスクトップ」のWEB版(アプリ版のサポートはすでに終了)。価格が無料という大きなメリットはありますが、使い勝手に関しては正式リリースから日も浅く、今後改善の余地がありそうです。今後テレワーク制度の導入を検討している企業は、試験的にリモートアクセスの概念を理解するために利用してみることをおすすめします。
LogMeIn
企業規模問わずに支持されていますが、特に中小企業向け、ベンチャー、スタートアップのシェアが高いサービスです。リモートアクセスはもちろん、監視、管理機能にも優れ、エンドポイント管理も可能です。機能や速度はTeamViewerと明確な差はありませんが、同時接続台数や接続方法などに違いはあるので、担当者の作業内容や負荷を考慮して検討しましょう。
よりリモートアクセスを安全に行うVPN
テレワークを導入する際に、セキュリティで考慮しなくてはいけないのが「端末の保護」と「通信の保護」です。リモートアクセスでは、ローカルにデータを残さないことを徹底することで、「通信の保護」に注力することができます。
「通信の保護」では、VPN(Virtual Private Network)環境を構築して、安全な通信を確保するのが一般的です。VPNはその名の通り、仮想のプライベートネットワークのことで、認証ユーザー以外は接続できません。
基本的にリモートアクセスを導入する場合は、セキュリティ上、VPN環境を構築することになります。リモートアクセスを導入する際は、VPN導入コストも必ず計上するようにしましょう。
まとめ
テレワークを代表する柔軟な働き方や業務効率化を目指す制度は、生産性や企業ブランドに直結するものが多いですが、導入、安定的な運用をするには多角的な視点で検討する必要があります。また導入コストも考慮しなくてはいけません。
現在、厚生労働省や各自治体では、テレワーク導入や働き方改革の補助金が用意されているので、自社に必要な制度やITシステム、ツールをよく見極めて、効果を最大化できるものから一歩ずつ進めていくのがよいでしょう。