目次クリックで該当箇所に移動します
働き方改革の一環として在宅勤務やサテライトオフィスなどでテレワークを取り入れる職場が増えつつあります。もちろんテレワークにはいろいろなメリットもありますが、すでに導入済みの職場で話を聞くと、逆にテレワークの問題点も見えてきます。テレワーク導入を業務効率化につなげるにはどうすべきか、そのヒントを紹介していきましょう。
テレワークのメリットとデメリット
テレワークは、在宅勤務やサテライトオフィス勤務などの「働き方改革」関連の施策として注目されていますし、導入する企業も増えています。私自身もさまざまな企業で話を聞く中で、テレワークを導入し始めた職場が増えているのを感じています。制度としては以前からあってもあまり導入されていなかったため、「週1日」などの基準を設定して、テレワーク導入を奨励しはじめた企業もあります。
テレワークの最も大きなメリットは通勤時間の削減や短縮ですが、それ以外にもメリットがあります。テレワークを導入したことで「仕事に集中できるので効率が上がった」という声もあるのです。
確かに、集中できる環境で仕事をすることにはメリットがあります。前回の記事でも紹介しましたが、人が集中して考えているときに別の用件で中断させられてしまった場合、最初の仕事に戻っても、すぐには元のペースに戻れないことがわかっています(10分以上かかる場合もあります)。中断させられることが多いと仕事の効率は上がらないのです。また、中断させられること自体にストレスを感じるという声もよく聞きます。それらの対策として、仕事に集中したいときに使用するための一人用のブースを設ける職場も増えていますが、テレワークをうまく使うことでも同様の効果が得られるはずです。
一方で、少し気になる点もあります。「テレワークの日に十分アウトプットを出せている部下もいるが、逆に普段よりもアウトプットが少なくなってしまう部下もいる」という意見を、上司側の人から聞くことがあるのです。
つまり、仕事の効率という観点では、テレワークにはメリットもあればデメリットもあるということになります。メリットを活かし、業務効率化に役立てていくには、どうすべきでしょうか?
事前申告は効果的
私がこれまでに聞いてきたなかで、「テレワークが比較的うまくいっている」という例には共通点があります。それは「この日にはこの仕事をやります」と、テレワークの日に行う仕事を事前に申告してもらっているという点です。
これには思い当たるところもあるのではないでしょうか? たとえば、その日に終わらせるべき課題が明確になっていないと、メールなどでいつも以上にのんびりと時間を使ってしまうという人もいるはずです。もともとテレワークでは緊張感は低くなりやすいですから、目的意識が低い状態でテレワークに取り組むと、デメリットが目立つ結果になることも十分起こり得るのです。
ですから、テレワークを行ってもらう際には「その日にどの仕事を行うか」を事前申告してもらうことをおすすめします。
タスクを管理できていると効果を高めやすい
さらに効果を高めるためには、テレワークに向いた仕事とテレワークにあまり向かない仕事の違いを考慮することが有効です。
仕事の中には「一人で集中してやる方が効率アップするタスク」もあれば、「周りの環境にあまり影響を受けないタスク」もあります。前者は集中して複雑な作業を行ったり、じっくり考えたりすることが必要なタスクで、後者は比較的簡単な内容のタスクです。この前者のタスクをテレワークの日に行うように計画できると、より効率を高めやすくなります。
そのためには、普段からタスクを管理する習慣が重要です。手軽にできて効果的な方法として、図のようにOutlookなどのソフトウェアを利用してタスクを入力しておく方法があります。
タスクはアポイントメントとは違い、実行する時刻を決める必要はありませんが、日付だけは決めておくわけです。この日付はタスクの期限ではなく、実行日(実行しようと思う日、実行できそうな日)であることに注意してください。このように、仮でもいいので実行日を決めておくことで、仕事を組み立てやすくなりますし、それぞれの日の仕事量を把握しやすくなるなど、多くのメリットが得られます。
普段からこのようなタスク管理ができていると「テレワークの日に行うタスク」や「その前にオフィスで終わらせておくといいタスク」を考えるのが容易になりますし、より効果的な組み立ても考えやすくなります。
スケジュールの実績を記録してもらう
また、どんなタスクにどれだけの時間を使ったか、実績を記録するのもおすすめです。自分が「時間をどう使ったか」という実績は、意外に記憶に残っていないものです。実績を記録し、どれだけ時間がかかったかを確認することでいろいろ気づくことがありますし、本人の時間意識や自己管理力を高める効果があります。
ただし、実績を記録すること自体が負担になってしまっては逆効果です。簡単に実績を記録するためにはスケジュール管理用のソフトウェアをそのまま利用するのがおすすめです。タスクに取りかかるときには(通常のアポイントメントと同様に)開始時刻を入力しておき、タスクが完了した時に終了時刻を入力するようにすれば、あまり負担にならずに実績を記録することができます(上記のOutlookの場合、タスクをそのままドラッグ&ドロップすることも可能です)。10分以内程度の短時間で終わったタスクは記録しなくても構いませんし、「メール処理」「事務処理」のようにひとまとめで記録しても構いません。普通、スケジュール管理ソフトやグループウェアは予定を入力するために用いますが、そこに実績も記録してもらうわけです。
このように「時間をどう使ったか」という実績を記録すると、本人にもさまざまな気づきがありますし、スケジュールを共有できていれば上司もテレワークでの部下の状況を確認することができて安心です。
テレワークの導入に際しては、制度やシステムの整備ももちろん必要ですが、各個人がテレワークのメリットを活かせるような働き方をしてくれることも重要だということがご理解いただけたと思います。まずは事前申告をしてもらうことから始め、タスク管理や実績の記録も実践してもらうように進めてみてはいかがでしょうか?