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ITに関する問題ならなんでも解決できると思われがちな情報システム部門(以下、情シス)。ITに関することだけならまだしも、「プリンターの紙が詰まったからなんとかして」「パソコン買ってきて」「電話壊れたみたいなんだけど」など、守備範囲外のトラブルまで相談され、社内ヘルプデスク状態に陥っていませんか?
「社内で波風立てるのが面倒だから」「自分でやった方が早いから」という理由でなんでも引き受け、勤務時間外に本業を行なっていませんか。中小企業や官公庁でITコーディネイターとして数々の相談を受けた経験から、こうした情シスあるあるを解決し、情シスとしての本来の役割を取り戻す方法をお伝えいたします。
情シスを悩ませる4つの問題
企業のIT成熟度によって、情シスの悩みもさまざま。問題がなかなか解決できず、トラブルに発展しかねない状況は、規模が小さく「一人情シス」がいるような企業に多いようです。
このような企業では、
- 社内のヘルプデスク業務が多い
- 上司に業務内容を理解されない
- 情シス自体の仕事内容がわからない、新しい技術についていけない
- トラブルがあればなんでも業務にされてしまい、自分の職務範囲がわかりにくい
という4つの大きな問題がある傾向にあります。
「社内のヘルプデスク業務が多い」原因として代表的なものは、ネットで調べればわかる程度の質問やトラブルにすぐに対応しなければならない雰囲気が社内に蔓延している点です。さらに、その事態を訴えても、上司が問題を理解できなければ、ますます状況は悪化。そして、知識やスキルを向上して本来の情シスとしての役割でもある業務を改善するという時間が無くなるばかり。たとえ、運良く勉強できたとしても、上司に仕事内容を理解されないし、正当な評価も得にくくなります。そして年月がたち、「パソコンに詳しい人」として、自分でも職務範囲もわからなくなり、責任も業務時間も悪循環のように増えていくことになるのです。
そんな問題を解決する4つの方法
本来の情シスの役割は、「業務を改善するためのシステムの企画・構築・運用・管理を行い、システムの安定効率的な運用を実施し、利用者に対しては技術的な助言・援助・教育支援」など。しかし、上述したような状況が続けば、情シスのなり手さえいなくなりそうです。ではそんな現状を変えるにはどうすればいいのでしょうか。以下、対応策をご紹介します。
社内ヘルプデスク業務を減らす方法
ずばり、嫌われる勇気を持ちましょう。「こんなことも教えてくれないの?」「教えるのが仕事でしょ!」「使えない!」「意地悪しないでやってよ」などなど、いちいち何でも聞いてくる困った社員には、正当なヘルプデスクの役割以外のヘルプなら、「ノー」と言いましょう。今からでも遅くはありません。
「ノー」を言うためには、「傾聴力」「質問力」を鍛え、冷静で誠意を感じられる丁寧な言葉づかいを身につけることが大事です。特にクレーム対応パターンなどは、トークスクリプトも書籍に紹介されているので、心を守る盾として紙に書いてデスクに貼り付けておき、すぐに活用できるようにしておくと良いです。さらに、情シスが使う用語集や、よくあるトラブル対応はマニュアル化して、情シスでなくても社内で対応でき、情シスをフォローする仕組みをつくっておくことも重要です。
上司に業務内容を理解してもらう方法
業務内容とその作業時間、重要性や優先度について、一覧にしてパーティションにでも貼っておきましょう。また、発展的な行動として、業務報告書もそのような形式にして、サービスレベルと効率化のKGI(Key Goal Indicator/重要目標達成指標)、KPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標)などを分析して、上司に対しても業務の査定ができるような業務説明書も準備しておくとよいでしょう。
このような整理をしておくと、将来ノウハウを承継したり、アウトソーシングしたりするときに便利ですし、そもそも自分の仕事の評価を自分で行ってアピールする材料ともなりえます。たとえば、特定非営利活動法人ITコーディネイター協会が主催している「ケース研修」などを受講することで、適切な文書の作成ができるようになります。
情シスの仕事内容を理解し、新しい技術についていく方法
上司にも業務内容を理解されない環境であったり、自然にパソコンやソフトの使い方や設定、ネットワークの設定、セキュリティ対策をなんとなく受けて作業してしまったりすると、情シスの仕事ってそもそも何をすべきかが分からなくなってしまいがち。
まず最初に、独立行政法人情報処理推進機構の「ITパスポート」の資格取得を目標に勉強することをおすすめします。この資格で、情シスで使って行くだろう用語や主な概念を押さえることが必須です。この資格は、年に何度でも受けられますので気軽に挑戦できます。
次に、「基本情報技術者」のテキストを勉強することで、ITを活用した戦略立案やシステムの設計や開発・運営についての知識や理解も深まります。これを踏まえて、新しい技術のトレンドや押さえておくべき法律、セキュリティ対策情報などを、情報処理推進機構のページやIT関連のネット記事などをクリッピングサービスやメルマガを利用して、定期的にチェックしておけば大丈夫でしょう。
自分の職務の範囲を明確にする方法
この問題の解決は、組織的なマネジメント力や社内人脈を構築する力も必要になります。まず、上司を動かすには信用を得ることです。たとえば、上司の信用を得るためには、本来業務をしたことで会社全体の業務効率が上がったと数字に示せる実績を報告する。あるいは、職務範囲を適正に定めることで、会社全体の業務効率が上がる可能性があることを示した企画書を提出しましょう。
企画書には、情シス自らが設定した職務の範囲に選択と集中ができれば、さらに効果があがると記載するのです。もちろん、いきなりそんな企画書を提出したのでは、上司の性格によってはマイナスイメージの場合もあるので、普段から上司や部内のキーマン、社内の情報通とはコミュニケーションをとって性格を分析し、報告するタイミングをはかっておきましょう。横断的なコミュニケーションができる機会を持てるのは、営業や経営サイドに近い部署、あるいは情シスくらいです。
御用聞きを卒業して、戦略的な仕事に注力しよう
上記を実践すれば、周囲からの評価も変わってくるはず。ただ言われたことだけをこなしていると、雑務でリソースが埋まってしまいます。その結果、「情シスはこんなこともやってくれるんだ」「情シスがやって当たり前」という雰囲気が社内に蔓延し、負のスパイラルから抜け出せなくなってしまいます。そうなる前に、ここでご紹介した対策を実践し、自分たちの身を守りながら、できる情シスを目指しましょう。