働き方改革が進む昨今、よく取り上げられる課題は、長時間労働の是正、ツール活用による生産性の向上、ノー残業など、残業時間削減など働きやすさなどにフォーカスされがちです。
たしかに、業務効率化による残業削減は大切ですが、重要なことは社員が「働きがい」を感じているかどうかではないでしょうか。
そこで、Work×IT編集部では従業員数が2000人前後の会社に勤める方を対象に、30人の方にアンケートを実施しました。「働きがい」を感じる要素について、リアルな声を通じて紐解きます。
そもそも「働きがい」の意味とは
「働きがい」に関する調査・分析を行う専門機関Great Place to Work(以下GPTW)は、「働きがい」を以下のように定義しています。
従業員からみた「働きがいのある会社」の定義
従業員が会社や経営者、管理者を信頼し、自分の仕事に誇りを持ち、一緒に働いている人たちと連帯感を持てる会社
マネジメント(会社)からみた「働きがいのある会社」の定義 「信頼」に満ちた環境で、ひとつのチームや家族のように働きながら、個人の能力を最大限に発揮して、組織目標を達成できる職場 |
※引用:GPTWジャパンHPより
GPTWの定義から、収入や労働時間だけが「働きがい」を測る指標ではないことがわかります。
「働きがい」を構成する要素
GPTWは多くの従業員や経営者への取材や調査を通じて、「働きがい」の土台となる要素を見出しました。
■信用
■尊敬
■公正
■誇り
■連帯感
この5つの要素を満たしている職場は従業員にとって「働きがい」のある環境と言えるようです。昨今、多くの企業で進めている働き方改革では、労働環境や労働時間などにフォーカスされた各種施策が講じられていますが、それだけでは「働きがい」を高めることは難しいのかもしれません。
働きやすさよりも「働きがい」が求められている
ここまでGPTWが定義する「働きがい」とその要素をご紹介してきました。続いて、Work×IT編集部が独自に実施したアンケート調査結果を発表します。最初にぶつけたのは、「最も会社に期待するものはなんですか」という質問です。
■会社のビジョンに共感できる
■福利厚生や待遇が充実している
■残業が少なく休みがしっかり取れる
■尊敬できる先輩や上司がいる
■事業やサービスに将来性がある
■社歴や年齢に関わらず、平等に評価される機会がある
対象者には上記6つの項目の中から最も会社に求めるもの1つを選んでいただきました。以下、回答結果をご覧ください。
アンケート調査の結果を見ると、「残業が少なく休みがしっかり取れる」ことを会社に強く期待している人は思いのほか少ないことがわかります。
それよりも、平等な評価制度があることや共感できるビジョン、将来性のある事業やサービス、といった仕事軸での魅力を感じられる環境を強く望んでいる人が多いようです。
従業員のリアルな声
では、具体的に従業員はどんなときに「働きがい」を感じ、どんなときにモチベーションが下がるのでしょうか。回答者のリアルな声をご紹介します。
働きがいを感じる要素
「地道な努力を認めてもらえることです。入社当初は、雑務や簡単な業務しか任せてもらえませんでした。しかし、目の前の仕事に一生懸命取り組んでいたら、その姿勢が評価され、徐々に責任のある仕事を任されるようになりました。成果だけでなく、仕事に取り組む姿勢も評価してもらえるとモチベーションに繋がります」
(男性/20代/メディア)
「自分のアイデアが製品化に繋がり市場で好調に売れたことがありました。新人の声にも耳を傾け、価値のあるものはしっかりと採用してくれる会社の懐の深さに感謝しています。製品開発の方針を決めるブレストでも、よっぽど間違っていない限り自分の意見が潰されることはありません」
(男性/20代/メーカー)
「自分の意見を尊重してもらえることです。目先の仕事や短絡的な視点で見れば、私のアイデアは却下されてしまうでしょう。しかし、それでも会社は気長に私が理想とする製品作りを応援してくれました。結果的に多くの人に私の思いが届いて嬉しかったです」
(女性/30代/メーカー)
「後輩がわからないことを積極的に質問してくれると嬉く思います。他にも社員はたくさんいますが、それでも私に聞いてくるということは、自分が頼りにされている証拠。後輩に頼られると純粋に働いていてよかったと思います」
(男性/30代/IT)
モチベーションが下がる原因
「努力や成果を評価されなかったときはモチベーションが下がります。パフォーマンスの低い年長者が降格もなく居座っているケースもあるので、定量的な評価をしてくれないと意欲的に働くことができません」
(女性/40代/家電)
「上司や経営層と価値観や情熱の方向性が噛み合わないこと。経営者にしかメリットのない一方的なトップダウンではなく、あくまでお客様や従業員のためにやらなければいけないことを経営層には考えてほしいです」
(女性/30代/IT)
「細かいところまで管理されるとやる気が出ません。新人のうちはたしかに上司が手取り足とり細かく管理することは大切かもしれません。しかし、全てをマニュアルに当てはめて管理するマネジメントはお客様のためにもなりませんし、モチベーションも上がりません」
(女性/30代/金融)
「明確なビジョン・客先・戦略がない状態で、なんとなく研究・開発を行うことです。なんのために仕事をしているのかわからなくなってしまいます。やはり仕事には明確な目的や意義がないと、意欲を持って働けません」
(男性/40代/メーカー)
こうした声から先ほどご紹介した「信用」「尊敬」「公正」「誇り」「連帯感」が、「働きがい」やモチベーションに大きく影響している要素であることがわかります。
「働きがい」を高めるための取り組み
では具体的に、「働きがい」のある会社にするためにはどうすればいいのでしょうか。GPTWの調査・研究によれば、マネジメント上では以下9つの重要な場面や機会があり、この各項目内で従業員の目線に立った取り組みを行うことが重要とされています。
■触発する:従業員に、「自分達の仕事は、“単なる仕事”ではなく、重要な意味がある」と感じてもらうための仕組み、取り組み
■語りかける:従業員と、組織の重要事項を共有化する仕組み、取り組み
■傾聴する:従業員の声・意見をマネジメント層が吸い上げ、対応する仕組み、取り組み
■感謝する:従業員の成し遂げた仕事・努力に対する感謝を示すための仕組み、取り組み
■育成する:従業員の能力開発の機会、取り組み
■配慮する:従業員を個人として大切にする仕組み、取り組み
■採用する:自社の良い企業文化を継続するための採用活動や新入社員歓迎の仕組み、取り組み
■祝う:成功体験・楽しい経験の中から連帯感を育む仕組み、取り組み
■分かち合う:利益を皆で(従業員だけでなく社会含む)分かち合う仕組み、取り組み
こうした取り組みを従業員の目線に立って行うことで、信頼関係が築かれ、従業員一人ひとりが誇りを持ち、組織全体が家族のような連帯感を持って協力し合うチームワークにつながります。従業員の「働きがい」を高めたいと考えている経営者の方は、ぜひ参考にしてください。
※参考:GPTWジャパン
※アンケート協力:ランサーズ(2000人規模の会社に勤める会社員を対象)
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