アップデートとは、ソフトウェアの性能強化や新機能の追加、不具合の解消などの目的で行われるものです。特に、企業のシステム管理者にとって、アップデートは重要な要素となります。なぜなら、常に最新のセキュリティー対策や新機能を取り入れることで、企業のソフトウェアの安定性や利便性を向上できるからです。
ソフトウェアのアップデートは時代や環境の変化に対応するために行われます。また、最新のセキュリティー対策を実行することで企業の信頼性を高め、情報漏えいやウイルスによるデータの損失などを防ぐ効果があります。
本記事では、アップデートの目的や種類、注意点などを解説します。アップデートを通じたセキュリティー強化やソフトウェアの機能性向上に役立ててください。
アップデートとは何か
アップデートとは、ソフトウェアを最新の状態に保つための作業を指します。企業のシステム管理者にとって、アップデートはセキュリティーの強化や新機能の導入に必要な要素となります。
アップデートは、既存のソフトウェアの機能やセキュリティーを改善したり、不具合を修正するために行われます。具体的には、新機能追加や既存機能の改良、パフォーマンスの最適化、セキュリティーの強化、互換性の改善などが含まれます。アップデートを実行することで、ユーザーはより優れた機能や性能を活用できます。
アップデートの種類
ソフトウェアを最新の状態に保つための作業であるアップデートは、ファームウェアアップデートとソフトウェアアップデートの2種類に分けられます。それぞれ詳しく説明します。
ファームウェアアップデート
ファームウェアアップデートは、PCや電子機器の仕様変更やバージョンアップを行うため、ハードウェア上で実行するファームウェアを最新バージョンに更新することを指します。ファームウェアはデバイスの制御や動作を管理するプログラムであり、通常はデバイスのROMやフラッシュメモリーに組み込まれています。
ファームウェアアップデートは通常、デバイスのメーカーから更新ファイルが配布されます。しかし、ファームウェアの中には、製品が発売されてから更新されないものも少なくありません。
新OS対応や製品に重大な欠陥が見つかった場合など、さまざまな理由でファームウェアアップデートは行われます。
ファームウェアアップデートを実行しないまま電子機器を使用した場合、アップデート内容によっては不具合により動作しなくなる恐れがあります。更新ファイルが配布された場合は、できるだけ早くアップデートを行い、最新状態を保ちましょう。
ソフトウェアアップデート
ソフトウェアアップデートは、ソフトウェアの機能や画面のデザインなどを最新バージョンに更新することを指します。
アップデート用のプログラムは通常、ソフトウェアの開発元やベンダーから提供されます。WindowsのOSなど一部のソフトウェアは、自動的にアップデートを検出し、ユーザーにダウンロードやインストールの手順を案内する機能を備えています。
PCのソフトウェアアップデート情報は、定期的な確認をおすすめします。
バージョンごとのアップデート
一般的に、ソフトウェアのアップデートは「1.0.1」といった形でバージョンに番号を付けてアップデートが管理されています。バージョンごとのアップデートは、整数と小数点以下の数字のどちらがアップデートされるのかによって呼び方が変わります。
メジャーアップデート
メジャーアップデートは、「1.0」から「2.0」といったかたちで整数の数字がアップデートされるもので、ソフトウェアの大規模な変更や新機能の追加を含むアップデートを指します。
マイナーアップデート
マイナーアップデートは、「1.0」から「1.1」といったかたちで小数点以下の数字が更新されるもので、小規模な機能追加、修正、改善を含むアップデートです。通常、メジャーバージョンの下位バージョンとしてリリースされます。
メジャーアップデートとマイナーアップデート以外にも、バージョンの数字が3桁、4桁となるとビルドやリビジョンなども存在します。
アップデートとアップグレードの違い
アップデートとアップグレードは、ソフトウェアの変更や改善を指す用語であり、それぞれ異なる意味を持ちます。企業のシステム管理者にとって、これらの用語の違いを理解することは重要です。
アップデートは、前述の通り、既存のソフトウェアを最新バージョンに更新することを指します。アップデートの主な目的は、バグ修正、機能追加、パフォーマンスの改善、セキュリティーの強化などです。アップデートは通常、小規模な変更や修正を含み、ソフトウェアの継続的な改善を促します。車に例えるなら、エンジンオイルの交換といったメンテナンスです。
一方、アップグレードは、ソフトウェアをより高いバージョンまたは新しいバージョンに置き換えることを指します。車に例えるなら、現在使用しているエンジンをより性能が優れているエンジンに交換するようなものです。交換することにより、車全体の性能が向上します。
アップデートの目的と利点
ソフトウェアのアップデートを行う目的と利点は多岐にわたります。以下でいくつかの主な目的と利点を示し、アップデートの必要性について解説します。
セキュリティー性能の向上
アップデートはセキュリティー上の問題や脆弱性を修正するために行われます。ソフトウェアがリリースされた直後は最新のセキュリティー性能だったとしても、時間がたつとIT技術の進化により変化した最新のサイバー攻撃を防げない可能性が高まります。
ソフトウェアの開発元メーカーは、新たな脆弱性や攻撃手法が発見されると、対処することを目的にセキュリティーに関するアップデートを行います。
独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)のソフトウェア等の脆弱性関連情報に関する届出状況[2022年第4四半期(10月~12月)]によると、ソフトウェア製品の脆弱性の原因として、ウェブアプリケーションの脆弱性が全体の54%を占めています。「ファイルのパス名、内容のチェックの不備」「アクセス制御の不備」などその他の原因は各数%であることから、ソフトウェアの脆弱性対策が重要であるとわかります。
ソフトウェアのアップデートを行うことで、最新のセキュリティー対策を講じることになるので、企業にとってアップデートは必須と言えるでしょう。
新機能の追加や既存機能の安定性向上
アップデートには、新しい機能の追加や既存の機能の改善、そしてバグや不具合の修正が含まれます。ユーザーのフィードバックや市場の需要に基づいて、開発者はソフトウェアの機能性を向上させるための変更を行います。
通常、インターネットを通じてアップデートを行えるので、既存のソフトウェアへの新機能の追加や機能の改善やバグや不具合の修正は容易に行えます。
ですが、アップデートを行わなければ、新機能の追加や機能改善は適用されず、不具合も修正されません。
さらに、アップデートを行わなければ、既存機能が改良されないことによって、今後使用する製品要件を満たせず、使用できない恐れがあります。
日々の業務に支障をきたさないためにも、ソフトウェアのアップデート情報はこまめに得るようにするとよいでしょう。
サポートの継続
アップデートは、メーカーや開発者のサポートを受けるためにも重要です。アップデートが何度か実行された後、古いバージョンはサポート終了となる場合があるので、ソフトウェアは最新状態に保つ必要があります。
例えば、Windows 10に関するサポートは2025年10月14日に終了すると発表されています。Microsoftのように、新しいバージョンをリリースした後、旧バージョンについてサポート期限を設けることは珍しくありません。
サポートが終了したOSは、セキュリティーアップデートされません。そのため、新たな脆弱性が発見されたとしても対処されないので、無防備な状態でサイバー攻撃のリスクにさらされることになります。
顧客情報や企画書、従業員の個人情報など重要なデータを守るためにもアップデートを定期的に行いましょう。
動作速度の向上
アップデートによって、ソフトウェアの動作速度が向上することがあります。ソフトウェアのアップデートにはバグや不具合を修正するものがあり、実行すると動作速度が改善してパフォーマンスが向上します。
デザインの変更
アップデートは、ソフトウェアの見た目やユーザーインターフェースのデザイン変更を含むことがあります。デザインの変更により、使いづらさを感じていた機能の操作性が高まり、業務効率化につながることがあります。
ソフトウェアのアップデートを行えば、業務効率化を図り、生産性の向上につながると考えられます。
アップデートを行わない場合のデメリット
本項目では、アップデートを行わない場合の主なデメリットについてお伝えします。
セキュリティー上の問題に対処できない
新しいマルウェアや攻撃手法は日々生まれています。ソフトウェア開発者はそれに対処するための更新プログラムをリリースしますが、アップデートを行わない場合はセキュリティー上の問題に対処できず、ソフトウェアが攻撃や不正アクセスのリスクにさらされる可能性が高まります。
機器の不具合が続く
古いバージョンのソフトウェアを使い続けると、動作が遅くなったり、突然画面がフリーズしたりするなどの不具合が起きることがあります。
アップデートを行わない場合、上記のような不具合が解決されず、意図した操作ができない状態が続くかもしれません。これによって、パフォーマンスや生産性の低下などの問題が引き起こされる可能性があります。
最新の機能やアプリが利用できない
ソフトウェアのアップデートには新しい機能やアプリの追加が含まれることがあります。アップデートを行わない場合、新しい機能やアプリを試せず、非効率な業務を改善する機会を逃す可能性があると言えるでしょう。
アップデートをしなかった場合のサイバー攻撃に関するリスク
アップデートを行わなかった場合には、以下のようなサイバー攻撃に関するリスクが存在します。
不正アクセス
ソフトウェアの脆弱性が修正されていない場合、脆弱性を悪用して外部の攻撃者が不正にアクセスできてしまうため、個人情報や機密情報が盗まれるなどの被害が発生する恐れがあります。
なりすまし攻撃
サイバー攻撃を行う攻撃者は、なりすまし攻撃を行う可能性があります。なりすましにより、正規のユーザーであるかのように偽装して取引先や金融機関とやり取りを行い、不正な操作や権限を乱用される恐れがあります。
マルウェアへの感染
アップデートが行われない場合、セキュリティーの脆弱性を悪用したマルウェア(ウイルス、トロイの木馬、ランサムウェアなど)に感染するリスクがあります。マルウェアは個人情報の窃取やデータの破壊など、さまざまな悪影響を引き起こす可能性があります。
上記のリスクは、アップデートが重要である理由を示しています。アップデートはセキュリティーの強化や脆弱性の修正を含み、これらのリスクを軽減するために不可欠な要素と言えるでしょう。
アップデートの注意点
セキュリティー向上と業務効率化が期待できるアップデートですが、注意点があります。
技術者向け
技術者向けのアップデートの注意点として、以下のような注意点が存在します。
テスト環境でアップデートを行う
業務用ソフトウェアのアップデートを行う前には、本番環境を再現したPCなどを用意してテスト環境で、アップデートを実施して動作や互換性の確認をおすすめします。
アップデートによって業務の中断や互換性の問題が発生する可能性があるため、事前のテストが重要です。また、テストを行う際は、アップデートを行うソフトウェアが組み込まれているハードウェアや連携するアプリなどの動作も確認してください。数日から数週間ほど様子を見て問題なければ、本番環境でアップデートを行いましょう。
ユーザー向け
ユーザー向けのアップデートの注意点として、以下のような注意点が存在します。
事前にデータのバックアップを取る
基本的にはアップデートは保存されているデータに大きな影響を与えませんが、アップデート中に予期しない問題が発生して、デバイスを初期化するなどの不具合が発生する可能性があるため、重要なデータのバックアップを事前に取っておくことが重要です。
データの損失を防ぐために、バックアップをとる習慣を持ちましょう。
事前にストレージの空き容量を確認する
アップデートには、多くのストレージ容量が必要になることがあります。
デバイスに空き容量がない場合はアップロードできないので、アップデートを行う前に、デバイスのストレージ容量を確認しましょう。容量が足りない場合は、不要なデータを削除したり、クラウドストレージに預けたりして、十分な空き容量を確保してください。
すぐにアップデートを行わない
新しいアップデートがリリースされた場合でも、すぐにアップデートを適用する前に、他のユーザーや専門家のレビューやフィードバックの確認が重要です。
一部のアップデートは、予期せぬ問題や互換性の問題を引き起こす可能性があるため、他のユーザーや専門家の経験を参考にすることが良い判断材料となります。
セキュリティーに関するアップデートなど緊急性を要しない場合は、アップデートを遅らせることを検討してもよいでしょう。
充電しながら行う
アップデートは時間がかかる場合があります。ソフトウェアが組み込まれているデバイスのバッテリーが切れるとアップデートが中断してしまい、データが消えてしまうなど不具合が発生する可能性があります。
アップデート中はデバイスを充電して、途中でバッテリーが切れないよう気を付けましょう。
これらの注意点を意識してアップデートを行うことで、問題を回避しつつスムーズにアップデートを行い、セキュリティーの確保などを実現できる可能性が高まります。
まとめ
本記事では、アップデートについて解説しました。アップデートを行わず古いバージョンのソフトウェアを使用していると、セキュリティー上の脅威に常にさらされている状態なので、小規模のアップデートも含めてこまめにアップデートを行うと良いでしょう。
また、アップデートを行えば、セキュリティー面だけではなく、安全で快適な環境で業務に取り組めるようになるため、従業員の働き方にも良い影響を与えられると言えます。
アップデートの重要性を認識して、継続的なアップデートの適用を心掛け、ソフトウェアを最新の状態に保つことをおすすめします。