多くの企業がテレワークやハイブリッドワークを導入し、さまざまな場所からリモートで仕事ができるケースが増えています。そのためWeb会議をはじめとした遠隔コミュニケーションをいかに快適かつ確実にこなせるかという点から、「Webカメラの画質や性能」がビジネスPCの選定ポイントとして重視されるようになりました。新型コロナウイルス禍で2020年にWebカメラ付きノートPCを導入した企業はそろそろリプレイス時期に差し掛かかります。次回のPC導入に向けて、なぜカメラ画質や性能が重視されるのか理由や背景などを解説します。
Web会議に適したビジネスPCの条件とは
Web会議を快適かつ確実にこなすビジネスPCの条件として、比較的高い性能のPCが必要と考える人が多いかもしれません。Web会議では、映像や音声を長時間に渡り処理し続けるため、PCに高い性能を要求する場合が多く、その視点は正しいでしょう。
一方で見落とされがちなのが、「Webカメラ」の仕様です。ノートPCではWebカメラはほぼ標準で搭載されており、その仕様や性能までを確認する人は少ないのではないでしょうか。いくらPC自体の性能が優れていても、内蔵するWebカメラの性能が低ければ、相手に鮮明な映像を届けることができず満足のいくWeb会議をこなせません。Webカメラの仕様をしっかり確認することが重要です。
Webカメラの仕様は必ず確認しておこう
PCに内蔵するWebカメラの仕様は、製品カタログやメーカーのホームページに掲載されている「製品仕様表」に詳しく記載されています。その中で確認すべき部分は「有効画素数」です。有効画素数の数値が大きい方が高画質に撮影できることを示します。
最新ビジネスPCに搭載されるWebカメラの有効画素数は、ほとんどが「207万画素」または「92万画素」です。具体的には、「207万画素」のカメラではフルHD画質(1,920×1,080ドット)、「92万画素」のカメラではHD画質(1,280×720ドット)での撮影が可能です。
▲搭載カメラの有効画素数は仕様表に記載されているので必ず確認しましょう。
Webカメラの性能はどう影響するのか?
対面での会議や商談では、お互いに相手の表情を見ながら進めます。一方で、Web会議ではディスプレイに表示される映像から相手の表情を読み取る必要があります。そのため、相手に届く自分の映像の質が悪いと、相手が細かな表情の変化を読み取りづらくなり、会議を円滑に進行できなくなります。
例えば、映像の解像度が低いと表情がくっきり見えなかったり、逆光のため顔が暗く写り表情がまったく見えなかったりといった事態が発生してしまいます。このような問題を防ぐためWebカメラは、カメラ自体の性能に加えて、映像補正などソフトウェアの性能が求められます。
ハードウェアの性能は、先に紹介した有効画素数の部分です。この有効画素数が多いほど、鮮明でくっきりとした映像を相手に届けられます。ソフトウェアに求められる性能は、逆光補正や明るさ補正といった映像調整機能です。これらの機能があれば、逆光や薄暗い場所でも、顔が明るく写るように補正してくれるので、部屋の環境や光量に依存せず相手にクリアな表情を伝えられます。
一般社団法人オンラインコミュニケーション協会が2022年9月に発表した「オンラインコミュニケーションにおけるビデオONとビデオOFFの影響を検証」によると、Web会議で相手の映像がないと意思決定の質が悪化するという結論が得られています。これは、相手の表情を読み取れないということが大きく影響していること、つまりWeb会議ではカメラの性能が重要な要素と言えるでしょう。
カメラが違うとこんなに変わる「Web会議に適したカメラ」の選び方
ここからは、円滑にWeb会議を進行するために必要となるWebカメラの条件や、選び方を紹介します。
ビジネスPCの内蔵カメラは製品ごとに性能が大きく異なる
多くのノートPCは、Webカメラを標準搭載していますが、Webカメラの性能は製品によって異なります。従来は利用シーンが限られており、ビジネスユーザーが求める性能レベルは曖昧でしたが、コロナ禍以降Web会議が広く活用されるようになり、求める性能レベルが徐々に明確になりつつあります。そのひとつの基準が「フルHD画質(1,920×1,080ドット)」です。Web会議の円滑な進行には画質が重要なポイントになります。そのためビジネスPCのWebカメラは、高画質なフルHD画質で撮影できるかどうかという点が非常に重要な選択基準となります。
ここで気を付けたいのが、同じシリーズのPCでも異なる性能のカメラを搭載する場合があるという点です。例えば、上位モデルと下位モデルでカメラ性能が異なることがあります。また、購入時に仕様をカスタマイズできる製品では、性能の異なる複数のWebカメラから選択できることもあります。
フルHD以上で撮影できるカメラの搭載が必須
内蔵カメラ性能の基準となる「フルHD画質」は、なぜ必要なのでしょうか。それは、掲載した画像を見ると一目瞭然だと思います。
掲載した画像は、1,920×1,080ドット以上対応のフルHD画質カメラ、1,280×720ドット対応のHD画質カメラ、720×480ドット対応のSD画質カメラで撮影したように加工で再現したものです。フルHD画質では、顔がくっきり見えるのに対し、HD画質は表情がややぼやけています。そしてSD画質では表情を読み取るのが難しいと感じてしまいます。
▲フルHDカメラで撮影した映像。表情もくっきりと確認できます。
▲HDカメラの撮影を想定した映像。フルHDに比べるとやや表情がぼやけています。
※写真は加工しています
▲SDカメラでの撮影を想定した映像。こちらは、表情がかなりぼやけてしまいまい、相手に与える印象も大きく変わってしまいます。
※写真は加工しています
これは極端な例ではありません。実際にWeb会議で体験すると、同等の違いが実感できると思います。このことからもビジネスPCのWebカメラはフルHD画質で撮影できることが重要で、特にWeb会議を円滑に進めたいなら必須と言ってもいい条件となるのです。
映像調整機能やカメラプライバシーシャッターも重要な要素
先に紹介しているようにカメラ性能には、ハードウェア性能だけでなく「映像調整機能」というソフトウェア性能も含まれます。
映像調整機能は、例えば逆光補正や明るさ調節、ちらつき防止といった機能といったものです。背後が明るく顔に影がかかってしまう場合でも、映像調整機能によって常に顔を明るく表示することが可能です。以下に映像調整機能の有無による画質の違いを示します。
▲逆光の環境では、このように顔が全く見えなくなることがあります。
▲映像調整機能が搭載されていれば、常にクリアな映像を撮影できます。
また、映像調整機能がWebカメラの機能として用意されていれば、利用するWeb会議アプリを問わず有効になるというのも重要なポイントです。いくつかのWeb会議アプリにも映像調整機能はありますが、アプリごとに設定するのは面倒です。しかしPCのカメラ機能として備わっていればあらかじめ設定することであらゆるアプリで有効となるため、手間が省けます。
そして、もう1つ確認したいのが、Webカメラの撮影を物理的に遮断させるプライバシーシャッターの搭載有無です。ハッキング防止やカメラの消し忘れによるプライバシー情報の映り込みをさけることができます。
▲Webカメラにプライバシーシャッターがあれば、物理的に撮影を遮断できます。
高画質の内蔵カメラ搭載PCで快適なハイブリットワークを
ハイブリッドワークで欠かせないWeb会議を円滑に進行するには、ビジネスPCに搭載されるWebカメラ性能が重要な要素となります。これまでビジネスPCを選定する場合は、価格の他にはCPU性能やメモリ、ストレージ容量などが選択基準になることが多かったはずです。
しかし今後は、Web会議やWeb商談の生産性を高める意味で、Webカメラ性能も重要な要素の一つとなるでしょう。使い勝手の良い映像補正機能は従業員の満足度向上にもつながるはずです。内蔵カメラは基本的には交換ができないという側面もあるため、これからビジネスPCを新規に導入する場合には、高性能カメラの搭載を条件のひとつに含めてはいかがでしょうか。