Windows OSの延長サポートが2020年の1月14日をもって終了となるWindows7ですが、いまだ使用している方は多いのではないでしょうか。サポート終了後は更新プログラムなどの重要なサポートが受けられなくなるため、さまざまなリスク発生の恐れがあります。まだWindows7をお使いの企業では、一刻も早くWindows10へのバージョンアップを検討しなければなりません。
今回はWindows7を使い続けるとどんなリスクがあるのか、そしてOSの移行の方法やメリットについてお伝えします。
Windows7のサポートは2020年1月14日に完全終了
Windows OSを提供しているマイクロソフトは、基本的に製品を発売してから最低5年間はメインストリームサポートを提供しており、その後の5年間は延長サポートを行っています。ここでいう「サポート」とは、いわゆる電話対応などのカスタマーサポートではなく、リリース後に「アップデートプログラムを提供して品質を高める」というソフトウェア面でのサポートのことを指します
例えば、Windows7の前バージョンであるWindows Vistaは2006年に提供が開始され、延長サポートが終了したのは2017年でした。では、Windows7はどうでしょうか?
Windows7が提供開始となったのは2009年9月です。メインストリームサポートは2015年に終了しており、現在は延長サポートが行われています。そしてこの延長サポートが終了するのが、2020年1月14日なのです。
もちろん、サポートが終了する時期についてはかなり以前からアナウンスされていましたが、多くのPCを所有する企業の中には、Windows10へのアップデートを済ませていないケースもあるでしょう。
サポート切れのWindows7を使い続けることで、セキュリティリスクが増大
サポートが切れた後もPCが使えなくなるわけではありません。しかし、大きなリスクが存在します。
それはセキュリティの脆弱性が高まることです。Windowsアップデートでは、セキュリティを高めるプログラムが提供されており、つねに最新のバージョンにアップデートすることで、マルウェア(いわゆるコンピュータウイルス)からPCを守ることが可能でした。
しかし、サポートが終了したWindows7には、更新プログラムが提供されません。仮に脆弱性が発見されても、サイバー攻撃からPCを守る手立てがなくなってしまうのです。具体的には次のような被害が考えられます。
フィッシング詐欺
偽のメールで本物そっくりにつくられた偽サイトへ誘導し、個人情報やアカウント情報(IDやパスワードなど)を入力する手口のことです。
個人情報の流出
マルウェアに感染してしまうと、企業にとって絶対に避けなければならない個人情報流出のリスクが増大します。情報を盗み出すだけでなく、感染したPC内の情報を勝手に暗号化し、もとに戻すのと引き換えに“身代金”を要求する「ランサムウェア」というタイプも存在します。個人のPCと違い、企業で扱うPCの場合はセキュリティのリスクが業務用のネットワークを介して社内外に拡大する恐れもあります。
PC本体を乗っ取られてしまう被害
PCを動かなくしてしまう“破壊活動”を行うものや、本体を乗っ取って遠隔操作する危険なマルウェアも存在します。遠隔操作されたPCは、ときに他のPCを攻撃するための“踏み台”となってしまい、知らず知らずのうちに犯罪に加担してしまっていた……という可能性も起こりえます。
これらの攻撃は、主に攻撃者から送られたメールの添付ファイルを開いてしまったり、改ざんされたウェブサイトを閲覧したりすることが発端となります。最新のセキュリティ更新プログラムを適用していれば、そうした攻撃を防ぐこともできますが、サポートの終了したWindows7では対処が難しくなります。
Windows10に移行することで得られるメリット
Windows7を使用し続けるリスクについて説明しました。次にOSをWindows10にアップデートする方法と移行のメリットについて解説します。
Windows10への移行方法
マイクロソフトはWindows10への無償アップグレード期間を設けていましたが、2016年7月29日に終了しています。一部例外を除き、Windows10のアップグレードを無償で行うことができません。主にWindows10にアップグレードする代表的な移行方法を紹介します。
●Windows10搭載のPCを購入する
●Windows10のパッケージ版、ダウンロード版を購入する
買い替えはせずにWindows10へのアップグレードを行う際は、使用しているPCのスペックや使用しているソフトが移行後も使えるかどうかを確認する必要があります。
最新のウイルス対策機能とセキュリティ思考
Windows7からWindows10へ移行することで最新のセキュリティ更新プログラムによるアップデートが適用され、上記で挙げたマルウェアなどのリスクを回避することができます。また、標準でウイルス対策機能が搭載されていることもWindows7にはなかった魅力です。
セキュリティに対する考え方も変わりつつあります。かつては「セキュリティ事故は絶対に防がなくてはならないもの」として考えられており、Windows7もそうした考えをもとにシステムが設計されていました。しかし、ウイルスも進化し続けているため、どんなに堅牢なシステムであっても、破られる可能性をゼロにすることはできません。よって攻撃を受けることを前提に、感染しても発症を抑えるなど、被害を最小化しようという考えが最新のセキュリティの設計思想なのです。Windows10は、この考え方をベースにシステムが設計されています。
OSの移行は今回が最後
マイクロソフトは、Windows10を「最後のOS」と位置づけています。つまり、今後「Windows11」がリリースされることはないということです。ただ、これは、OSのアップデートが行われないということではありません。これまでと同様にOSはアップデートされますが、それを新しいOSとして別に販売することはないという意味です。
つまり、Windows10に移行してしまえば、これまで数年ごとに発生していたOSの入れ替えは必要なくなるのです(スペック不足などによるPCの入れ替えは必要かもしれません)。
各種性能の向上
Windows10は業務利用の観点から見ても非常に完成度の高いOSです。例えば、タッチパネル搭載でタブレット利用もできる2in1PCを使う際は、タッチ操作に適した「タブレットモード」へ瞬時に切り替えることができます。
またアクションセンターでは、メールやアプリの通知、カレンダーの予定などさまざまな項目をカスタマイズして表示できます。必要な情報にすぐアクセスできるので、生産性向上にも直結します。
さらに起動中のアプリケーションのウインドウを見やすく並べてアクセスしやすくするタスクビュー機能や、複数のデスクトップを切り替えられるようになる仮想デスクトップ、クラウドストレージ「OneDrive」への自動バックアップなど、業務効率化につながる機能が多数搭載されています。
セキュリティ、インターフェース、各種機能——Windows10は総合的に見て、まさにこれまでの集大成ともいえるOSとなっているのです。
Windows10移行に伴う課題と注意点
サポート終了が迫ったWindows7を使い続けることには多くのリスクが伴います。セキュリティや業務効率化の面からも、Windows10への移行を急いだ方がいいのは間違いないでしょう。しかし、そうはいっても「明日からWindows10」とはいかないのが企業で使用するPCの難しいところです。ここでは移行に伴う課題と注意点を紹介します。
買い替えコスト
Windows10へ移行する際にまず障壁となるのが、PCの買い替えに伴うコストです。OSをアップデートするだけとはいえ、古いPCではハードの性能的に最新のOSに対応できない可能性があります。Windows10が快適に動くかどうかをまずはチェックし、動作に不安がある場合は、買い替えも検討すべきでしょう。企業規模が大きくなるほど莫大なコストがかかってしまいますが、セキュリティ事故による損害を考えれば決して無駄な出費ではないはずです。
周辺機器やアプリケーションとの互換性
プリンタなどの周辺機器や、業務で利用しているアプリケーションとの互換性も確認しておきましょう。Windows10がリリースされて4年ほどになるので、互換性に関してはそれほど問題になるケースはありませんが、すでにアップデートを終了しているようなアプリケーションを使い続けているなら注意が必要です。場合によっては別のアプリケーションへの乗り換えも視野に入れておかないといけません。
バックアップ
OSの移行やPCの入れ替えをする場合、現在利用しているPC内のデータをバックアップしておく必要があります。バックアップには手間と時間がかかるため、業務に支障が出ないようしっかりと作業の計画を立てて行いましょう。
まとめ
Windows10への移行は、多くのPCを所有する企業にとってすぐに行えるものではありません。今回ご紹介したような課題や注意点を意識しながら、計画的に進めましょう。一度移行してしまえば、セキュリティリスクに怯えることもありませんし、Windows10の魅力的な最新機能を生かして業務の効率化も進むはずです。