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これから登場予定のWi-Fi 6E。ビジネスシーンでの導入のメリット・デメリットは?

働き方の変化によって、オフィスなどのWi-Fi環境を転送スピードと接続のしやすさの両面から見直す動きが見られるようになってきました。

ハイブリッドワークの普及に伴いさまざまな場所に点在して働く人とのコミュニケーションが重要視されるようになっています。ネットワークに流れるトラフィックは、従来のWeb閲覧や社内データアクセスだけでなく、各種クラウドサービスへのアクセス、Web会議やウェビナーの活用など多様かつデータ量の多いものへと変化しつつあります。オフィス内においては、Web会議の利用場所として、周囲の雑音などを考慮して人の少ない場所が選ばれることもあり、これまで想定していなかった場所でのWi-Fi環境の整備なども求められるようになってきました。

しかしながら、電波を利用するWi-Fiには、通信速度や利用可能な周波数帯などの制限があるため、単純に設備を増強すれば状況が改善されるというものではありません。こうした課題を解決できる可能性があるのが「Wi-Fi 6E (Extension)」です。

Wi-Fi 6Eは、簡単に説明すれば利用可能な周波数帯が増えたWi-Fi 6です。米国ではすでに認可されPCやルーターなど対応製品も登場しており、欧州や韓国でも認可されています。日本においては2022年4月時点ではまだ認可の手続き中ですが、認可の見通しや対応製品の発売といった目途は見えつつあります。

この記事ではWi-Fi 6Eとはどのような規格で、どのようなメリットがあるのか? デメリットはあるのか? について解説します。

現在主流のWi-Fiの課題

Wi-Fi 6Eの概要を説明する前に、まずは現在のWi-Fiが抱えている課題を整理してみましょう。

2.4GHz帯と5GHz帯を利用

現在のWi-Fiは、Wi-Fi 5(IEEE 802.11ac)およびWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)が多く利用されていますが、これらの課題は利用可能な周波数帯の狭さ(=利用可能なチャネルの少なさ)にあります。

Wi-Fiでは、大きく分けて2.4GHz帯と5GHz帯の2つの周波数帯を利用できます。2.4GHz帯(2,400~2,497MHz)では5MHzごとに1~13のチャネル(※)、5GHz帯は3つの周波数帯に分割されていて、20MHzおきにW52と呼ばれる5.2GHz帯(5,150~5,250MHz)で36~48の4、W53と呼ばれる5.3GHz帯(5,250~5,350MHz)で52~64の4、W56と呼ばれる5.6GHz帯(5,470~5,730MHz)で100~144の12のチャネルを利用できます。
※ IEEE802.11bでは2,484MHzまで含めた14チャネルを利用可能

現在主流のWi-Fi 6では、このうちの5GHz帯を利用した場合に、最大で160MHz幅(8チャネル分)をまとめて利用することで高速な通信が可能です。たとえば、Wi-Fi 6対応のノートPCでは、160MHz幅設定時に最大2402Mbps(2つの通信を同時に行う2ストリームMIMO時)の速度で通信できます。

しかし、1つの通信用に8チャネル分も周波数帯を確保してしまうと、隣接するアクセスポイントとの間で電波の干渉が問題になります。

前述したように、Wi-Fi 6に限らず、現在、日本で認可されているWi-Fiの5GHz帯はW52、W53、W56で合計20チャネルしかありません。このため、一度に8チャネルを占有する設定にすると、例えばW52の4チャネルとW53の4チャネルの合計8チャネル、W56のうちから連続する8チャネルと、干渉しないチャネルを2つ分しか確保できないことになります。

このため、オフィスのフロアに設置できるアクセスポイントの台数が限られたり、オフィスエリアに隣接する会議室、別のテナント、別の建物などで使われているWi-Fiとの干渉を避けたりと、Wi-Fiの設計が複雑になりがちです。

現状の5GHz帯のみの場合、Web会議などのトラフィック増の課題に対処することが困難なうえ、Wi-Fiの通信エリアを拡大しようとしても常に干渉を避けるための工夫が求められることになります。

Wi-Fi 6Eとは

Wi-Fi 6Eでは、こうした従来のWi-Fiの課題を利用可能な周波数帯の追加によって解決します。Wi-Fi 6Eが従来のWi-Fiと何が違うのかを解説します。

新たに6GHz帯が利用可能

Wi-Fi 6Eは、従来のWi-Fiで利用可能だった2.4GHz帯、5GHz帯に加えて、新たに6GHz帯を利用可能にする規格です。

米国と韓国では5,925~7,125MHzまでの1,200MHz幅を利用可能ですが、日本は欧州と同じ5,925~6,425MHz(※2)の500MHz幅が先行して認可され、残りの周波数帯の開放が可能かどうかは継続して検討される予定となっています。
※2 5,925~5,945MHzは他システム向けのガードバンドで利用不可

このように利用可能な周波数帯が追加されることで、Wi-Fi 6Eでは、6GHz帯でさらに24のチャネルを利用することができます。前述したように160MHz幅の場合、8チャネル分を占有するので、24÷8=3で干渉しない3つ分の帯域が追加され、従来の5GHz帯と合わせて5つの帯域を活用することが可能になります。

なお、6GHz帯はWi-Fi 6Eのさらに次の規格となるWi-Fi 7(IEEE802.11be)でも利用される見込みとなっています。Wi-Fi 7では、320MHz幅とさらに利用する帯域が広くなる見込みです。

関連リンク
周波数再編アクションプラン(令和3年度版)の公表
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban09_02000421.html

「6GHz帯無線LANの導入のための技術的条件」
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban12_02000142.html

Wi-Fi 6Eのメリット・デメリット

Wi-Fi 6Eは、オフィスのWi-Fiインフラにどのような変化をもたらすのでしょうか? そして実際に導入する価値のあるものなのでしょうか? Wi-Fi 6Eのメリット・デメリットを解説します。

高速かつ低遅延のWi-Fi環境を構築可能

Wi-Fi 6Eでは、これまでの5GHz帯と新たに追加された6GHz帯を組み合わせて利用することで、より柔軟なアクセスポイントの設置計画が可能になります。

前述したように160MHz幅(8チャネル)を利用したとしても、5GHz帯で2チャネル+6GHz帯で3チャネルの合計5つ分の帯域が、互いに干渉することなく利用可能になります。

これにより、例えば、2台のアクセスポイントを設置していたオフィスのフロアに、さらにもう1台アクセスポイントを追加して3台にした場合でも、3台それぞれが干渉しないチャネルを選択できます。Wi-Fiのカバーエリアを拡大したり、1台のアクセスポイントに接続されるユーザーを少なくすることで負荷を分散させたりしたいと考えた場合でも、電波の干渉やチャネルの設計が従来よりも簡単になります。

従来の5GHz帯のみの環境では、実質的に160MHz幅(2,402Mbps)での運用が難しく、80MHz幅(1,201Mbps)に速度を落として干渉しない帯域を多く確保する選択をするケースが多い状況でしたが、これにより160MHz幅を利用した2,402Mbpsの運用も現実的な選択肢になってきました。10Gbpsや2.5Gbpsなどの有線LANの高速化が進んでいることも併せ、ネットワーク全体のスピードアップを図ることで、より快適な通信環境を提供することができるでしょう。

なお、Wi-Fi 6Eは、利用可能な周波数帯として6GHz帯が追加されること以外、技術的な仕様はWi-Fi 6と同じです。もちろん、Wi-Fi 6にのみ対応している端末からWi-Fi 6Eの6GHz帯が設定されたアクセスポイントに接続することはできません。しかし、従来の2.4GHz帯や5GHz帯であれば問題なく接続できます。導入時に既存のWi-Fi 6対応製品とWi-Fi 6E対応製品との互換性について考慮すべき点が少ない点もメリットとなります。

一方で、デメリットとしては、新たに追加された6GHz帯は利用する周波数が高いため、従来の5GHz帯に比べると遮蔽物などで電波が弱くなりやすかったり、遠くまで電波が届きにくかったりする傾向があります。ただし、前述したように、より多くのアクセスポイントを設置することができるので、遮蔽物などを回避するための柔軟な設置計画が可能です。

なお、有線でのアクセスポイント間接続が難しい場所では、アクセスポイント間を電波で中継する中継機やメッシュシステムを利用することで、6GHz帯の課題を解決することもできます。

もちろん、機器の導入にコストがかかる点も考慮が必要です。前述したようにWi-Fi 6Eは、従来のWi-Fi 6との互換性が高いため、既存の設備などはそのまま活用できます。しかしながら、追加された6GHz帯を利用する場合は、アクセスポイントのみならず、オフィスのPCやスマートフォンなどの端末をWi-Fi 6E対応機に置き換える必要があります(一部、Wi-Fi 6E対応済みのPC/スマートフォンも存在する)。

ただ、Wi-Fiシステムの完全なリプレイスというよりは、アクセスポイントの追加やエリアの拡大など、部分的な導入から始められるため、大きなコストを一度にかけることなくWi-Fi 6Eへの移行ができるのも大きなメリットと言えるでしょう。

まとめ

ここまで、Wi-Fi 6Eの概要とメリット・デメリットについて解説しました。今までの内容をまとめておきます。

メリット

  • Wi-Fi 6Eは6GHz帯を利用できる新しい規格
  • 利用できるチャネルが増えるためオフィスのアクセスポイント配置は柔軟に設定できる
  • 高速な160MHz幅の導入も現実的になる

デメリット

  • 遮蔽物などに弱く電波が届きにくい可能性がある
  • アクセスポイントの追加やPC購入などのコストが必要

このようにWi-Fi 6Eは、追加でコストがかかってしまうといったデメリットはあるものの、従来のWi-Fiよりも高速なネットワーク環境を柔軟に設計できる点が魅力となります。Wi-Fiの通信エリア拡大やオフィスの増改築などに柔軟に対応可能なうえ、高速かつ低遅延で、安定性の高い通信環境をオフィスの利用者に提供可能できるため、今後の導入を検討する価値は高いでしょう。

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