コロナ禍に伴うテレワークの浸透によって、通勤せずとも自宅で業務を遂行できる環境の整備が急速に進んでいます。
働き方改革を大きく推進する施策として便利になった反面、私たちはビジネスを進める上で、チャットやWeb会議など、さまざまな連絡手段を駆使する必要があるのも事実です。オフィス出社が前提のときは口頭で済んだコミュニケーションも、テレワークでは携帯電話での会話やチャットツール、Web会議などを経由する必要があります。
今回は、そんな多様化する連絡手段と働き方において注目されている「ユニファイドコミュニケーション」の概念について、具体的な手段やメリットを含めてご紹介します。
ユニファイドコミュニケーション(UC)とは?
ユニファイドコミュニケーション(Unified communications)とは、多種多様なビジネス通信ツールを統合して管理できる技術の総称です。
例えば仕事を進めるにあたって、先述したチャットやWeb会議ツールはもちろん、電話やメール、社内Wikiなど、通信を伴うビジネスコミュニケーションツールは多岐にわたるでしょう。
従業員はこれらを個別に立ち上げたり参照するなどして日々の業務を遂行しますが、すべてのツールが一つの通信規格で繋がり双方向的にやり取りができるようになり、コミュニケーションコストを劇的に下げることが期待されています。
昨今のテレワーク環境における業務も、場所を選ばない従業員同士の円滑なコミュニケーションを推進します。
ユニファイドコミュニケーションが求められる背景
ユニファイドコミュニケーションが注目される背景にあるのは、テレワーク文化の加速はもちろん、多くのクラウドサービス出現による選択肢の多様化が挙げられるでしょう。
特に後者について、企業はフロントオフィスからバックオフィスまで非常に多くのビジネスソリューションの選択肢をもっており、必要に応じて各種サービスを導入します。上述したようなビジネスコミュニケーションツールもあれば、マーケティングにおけるCRMやMAツール、給与計算をクラウド化するHR-Techソフトなど、実にさまざまです。
このような多様なビジネスツールが社内に増えていくことで、従業員のツール依存度は高まっていきます。一方で、ツール同士はシステム連携をしていないケースも多く、一方での作業を別システムに反映するのに、いちいち手動の作業が必要になることも多々あります。
乱立するITツールの利用・普及が、ユニファイドコミュニケーション注目の根本的な背景だと言えるでしょう。
ユニファイドコミュニケーションを実現した連携事例
次に、ユニファイドコミュニケーションを活用したサービス事例について、その有用性とともにご紹介します。
場所を選ばない、Web会議
ZoomやTeamsといったWeb会議ツールは、場所やデバイスを選ばずに、チャットや画面共有による会議を実現します。
デバイスによってツールを入れる・入れない問題があると、たまたま入れないデバイスを使っている人が会議に参加できず、業務チーム内での情報格差につながってしまうことが懸念されます。
どのような端末からでも問題なく利用できることが、ユニファイドコミュニケーションの大前提となり、それゆえにミーティングなどの社内コミュニケーションも促進されるでしょう。
複数人での作業を可能にするクラウドシステム
GoogleドキュメントやOffice 365など、複数人数で同時に編集や作業を可能にするクラウドシステムは、ユニファイドコミュニケーションを実現する上で欠かせないツールと言えます。
例えば議事録を作成する際、従来はWordファイルに議事録担当者が内容を記入し、ローカルに保存した後にメンバーへとメールなどで共有して、確認・修正をメールベースで行っていくのが一般的でした。
これが上述のツールが出現して一般的に普及してきたことで、会議中に議事録担当者以外でもリアルタイムで加筆されていく内容を確認でき、必要に応じて修正などを行えるようになりました。
このように、リアルタイム性が担保されたクラウドサービスを使うことで、これまで煩雑だった後続のコミュニケーションコストを一気になくすことができるようになるでしょう。
業務の煩雑さを軽減するプロジェクト管理ツール
BacklogやAsanaといったタスク管理ツールも、ユニファイドコミュニケーションの一種だと言えます。
何かプロジェクトを進行する際に、時にはGoogleドキュメントを参照し、時にはExcelを開き、またある時はDropbox上にあるPDFを参照することがあるかもしれません。
このように、それぞれのファイルを各起動経路に準じて開いていくのは、非常に煩雑です。タスク管理ツールを使って管理をすることで、必要な情報へのリンクが全て一つのプラットフォーム上で確認することができるようになります。
通話やタスク管理も可能なビジネスチャット
より広範な視点でのユニファイドコミュニケーションとして、電話とWebツールの統合が挙げられます。
業務を進める上で最も煩雑なツールの一つが電話でしょう。特に卓上の有線電話は、物理的に行動範囲を制限することになるので、働き方改革とは逆行するツールであるとも言えます。
例えばCiscoのVolP系製品であれば、電話機にログインすることで、自分専用の番号になり、ログイン状態や通話履歴を記録できます。通話中に同一のプラットフォーム上でメモをとるなど、よりリッチなコミュニケーションを行うことが可能です。
このように、通話やタスク管理も可能なビジネスチャットプラットフォームが実現すると、非常にシームレスなユニファイドコミュニケーションが実現すると言えるでしょう。
ユニファイドコミュニケーションは企業にどのような恩恵をもたらすのか
最後に、上記で説明したユニファイドコミュニケーションを活用した場合、企業にとってどのようなメリットがあるのかについてご紹介します。
業務効率化とコスト削減
ユニファイドコミュニケーションの導入によって、余計なコミュニケーションや各種ツールを横断した業務がなくなり、効率化がはかれます。複数に分化されていたデバイスが統合されることから、デバイス購入費用を抑えることも期待されます。
余計なコミュニケーションや煩雑なワークフローから解放されることになるので、必要なタイミングで必要な人への業務依頼が可能です。テレワーク環境では、対面に比べ従業員同士のコミュニケーションが鈍化しやすくなります。ユニファイドコミュニケーションを通じて、メンバー全員が共通の認識・スピード感を持った働き方ができれば、テレワークの業務効率性を後押しするでしょう。
場所を選ばない柔軟な働き方
クラウドベースのプラットフォームでコミュニケーションを統合すると、物理的な場所にとらわれる必要がなくなるので、場所を選ばない柔軟で臨機応変な働き方が可能になると言えます。
また、ユニファイドコミュニケーションは何もデスクワークだけではなく、実店舗や工場など、現場作業を伴う業務でも有効です。例えば統合プラットフォームと連携したARデバイスを使って遠隔支援ができるようになれば、これまで初学者とベテランの2名で現場対応が必要だったものが、ベテランは遠隔からの指導だけで足りるようになるかもしれません。
業種業態を問わず、多くの従業員の選択肢を拡張する点が、ユニファイドコミュニケーションの大きなメリットであると言えます。
自社に適したユニファイドコミュニケーションの構築がポイント
以上、今回は多様化する連絡手段と働き方において注目されている「ユニファイドコミュニケーション」の概念について、具体的な手段やメリットを含めて解説していきました。
ユニファイドコミュニケーションの手法やアプローチはさまざまです。自社に適したユニファイドコミュニケーションの構築が、ROIの高い業務効率化を進めるポイントだと言えるでしょう。