2022年に、AIチャットボットである生成AI「ChatGPT」や画像生成AI「Stable Diffusion」が登場して以来、生成AIの人気が急激に高まりました。AI(人工知能)そのものは古くから多様な分野で活用されてきましたが、問いかけるだけで文章や画像を生成する生成AIが登場したことにより、個人でもAIを使ってさまざまなことができるようになったといえます。
また2023年11月には、Word、Excel、PowerPointといったMicrosoft 365サービスと連携するCopilot for Microsoft 365の公開が一部の企業向けに開始されました。ビジネスの現場で使いやすく仕事効率化も期待できる生成AIとあって注目を集めています。
生成AIを使うために、プログラミング言語のような命令文を覚える必要はありません。日本語でお願いしたいことを入力するだけでよいのです。このハードルの低さもあって、プライベート目的でもビジネス目的でも生成AIの活用例が増えています。しかし、その便利そうであるという印象の反面、いったい何をしてもらうのか、どう活用するべきかが判断しづらいところがあるのは事実です。
導入検討をするときに知っておきたいこと
生成AIにはさまざまな種類があり、サービスによって得意とする分野が異なります。そのためみなさんのビジネスに組み込む前に、相性がよい生成AIを見極める必要があります。
ビジネスシーンで活用しやすいのはテキスト生成AI
生成AIが生み出すコンテンツは画像、動画、音楽、テキストなどに分類されます。画像や動画の生成AIは主にSNSでポストするなど個人での使用例が注目されてきましたが、ビジネスシーンでもプレゼンスライドに掲載用の画像を作成するために活用するケースが増えてきています。作曲する音楽生成AIは古くから存在しており、プロのミュージシャンやレコーディングエンジニアの間で使われてきました。
そしてオフィスワークともっとも相性がよいのがテキストの生成AIです。ビジネスメールの草案作成や言葉遣いのチェック、企画のアイデア出しなど、日常的に活用されています。オウンドメディアの記事制作や、企業SNSでの製品アピールの文章づくりに使っている人々もいます。
メリットだけではなくリスクもある
しかし、生成AIが生み出したコンテンツをそのまま使うのは危険な面もあります。
例えば、テキスト生成AIの場合はWeb上にあるさまざまな文章を元に学習したデータを使っていますが、そのなかには真実と異なる情報もあります。つくり出された文章の内容に間違いがある場合、企業の名前で発信してしまうとレピュテーションリスクの元となります。そのために人間による生成された内容の正誤チェック、校正・校閲は欠かせません。著作権に絡むトラブルが発生することもあるので注意しましょう。
また、セキュリティーリスクの存在も意識するべきです。入力した文章だけではなく、登録したユーザーデータが漏洩する危険性もあります。そのため、企業内で利用する場合は、情報システム部門で情報セキュリティー対策ガイドラインやポリシーを明確にして従業員に周知する必要があります。その際、利用してもよいセキュアな生成AIを指定すること(認可していないサービスへのアクセスを制限すること)、生成AIに送信する文字列を確認することが重要です。
全社で使っている業務効率化ツールと連携する生成AIを見つけ出す
ChatGPTを例に上げると、さまざまなプラグインを組み合わせることで業務効率化ツールをサポートする使い方が可能になります。しかしその反面、前述したセキュリティーリスクの危険性が高まってしまいます。そこで特殊なセッティングをしなくとも、みなさんの会社で使われている業務効率化ツールと連携する生成AIを探したいところです。
代表的な生成AIサービスと得意分野を知る
ここではテキスト生成AIのなかでも、特に注目度が高いサービスを紹介しましょう。
オフィスワークとの相性に優れたCopilot for Microsoft 365
2019年からChatGPTを提供するOpenAIに巨額の投資をしてきたマイクロソフトが、満を持してリリースした生成AIを活用したサービスが「Copilot for Microsoft 365」です。
このサービスは、Microsoft 365 E3やE5などのライセンスを持つ、主に大企業のユーザーが利用可能です。今後は中小企業 (SMB) や個人ユーザー向けのリリースも予定されています。
Copilotシリーズはほかにも独自のGPT/チャットボットを作成可能なCopilot Studioや、顧客管理システム (CRM)と連携して営業を支援できるMicrosoft Copilot for Sales、Windows 11に組み込まれたCopilot(2023年12月時点はプレビュー版)など、ラインアップが急速に拡充中です。
Copilotシリーズ以外にも、多くの生成AIサービスがあります。例をいくつかご紹介します。
代表格といえるChatGPTはオールマイティ
テキスト生成AIといえば思い出す方が多い存在であるChatGPT。自由度が高く、有料プランであれば数百のプラグインを組み合わせ、Webニュースから必要な情報をスクレイピングして要約、Googleスプレッドシートにまとめていくといった使い方が可能です。しかし、セキュリティーリスクが無視できないことから、利用不可としている外資系企業も多くあります。
Googleの各サービスと連携するGoogle Bard
GoogleドキュメントやGoogleスプレッドシート、GoogleスライドといったWebアプリと連携するのがGoogle Bardです。Googleドキュメントで文書をやりとりするような現場では即戦力といえます。ただし入力内容は技術改善の目的で情報収集されます。そのため秘匿性の高い要件では使えないのが現状です。
SNSやオウンドメディア運用に効くCohesive
Cohesiveは文章生成のためのテンプレートが多数用意されており、SNSマーケティングやオウンドメディアでの情報発信、ECサイトで販売する商品セールスコピーの手助けを行う生成AIです。生成される文体は生真面目という印象があるので、実際に使うときには語尾を書き換えるなど一工夫が必要になる可能性があります。
Copilot for Microsoft 365とMicrosoft 365の連携力を知る
Microsoft 365と連携するCopilot for Microsoft 365ですが、具体的にはどんな使い方が可能かをご紹介しましょう。
Teams会議中にも頼れるアシスタントに
Copilot in Microsoft Teamsを使うと、会議内容の文字起こしから要約までしてくれます。つまり、議事録のために人員を割く必要がなくなります。会議に遅れて参加した人がいても、すでに話した内容をテキストで確認してもらえるため、スムースに会議を進めることができます。また発言内容から、参照するべき情報が掲載されているWebページを探し出すことも可能です。
時間のかかる書類作成を手伝ってくれる
タイパ(タイムパフォーマンス)が重視されるこの時代。長文のレポートが届いたときにはWordでCopilot for Microsoft 365を使って要約できます。自分でレポートを記す場合も、箇条書きにしたテーマを元に原稿の草稿を作ることができます。意外と時間がかかりがちなメールの返信もCopilot for Microsoft 365が執筆をアシストします。
表データの分析や見やすい図をつくってくれる
2023年12月時点では英語のみ対応となっていますが、ExcelでもCopilot for Microsoft 365が使えます。売上予測など、入力済みのデータがどう関わり合っているのかの分析や、マクロの生成、図表の生成も可能です。
統一感のあるプレゼン資料を作成する
見栄えがよく要点を理解しやすいプレゼン資料をつくるためには、まずCopilot in PowerPointで指定したテーマに合わせたドラフトを生成しましょう。複数のスライドであってもフォントを統一するなど、全体的な完成度の底上げをしたいときにも活用できます。
Copilot for Microsoft 365でビジネスを加速させよう
Word、Excel、PowerPoint、Outlook、Teams、Loop、Whiteboard、OneNoteなどのアプリが集まったMicrosoft 365は多くの企業で導入されている業務効率化ツールです。生成AIを活用したサービスがこのMicrosoft 365をより身近な存在としてくれます。各アプリの機能を手軽に引き出しながらアイデアを加速させるための考察や提案も行えるため、ビジネスを一歩先に進める活動が期待できます。生成AIの導入を検討されている企業担当者の方は、チェックしてはいかがでしょうか。
※本記事の内容は、2023年12月10日現在の情報です。
※本記事メイン画像は、Copilot for Microsoft 365で画像生成しています。