働き方

ECサイト構築のecbeingに聞いた!ITツールの活用とアナログな活動で働き方改革はスピードアップする(後編)

ECサイト構築のecbeingに聞いた!ITツールの活用とアナログな活動で働き方改革はスピード化する(後編)

ECサイトの構築・運用のリーディングカンパニー、株式会社ecbeingは、4~5年前から働き方改革に着手してきました。ナレッジの属人化を改善するため、サーバー内に情報を保存し共有するルールを作り、Backlogによるステータスやリソース管理を実施。さらに、エイトレッド社のX-point(エクスポイント)を活用し、社内の申請などをすべてペーパーレス化し、承認コスト(紙代、承認時間の削減)の削減を実施しました。

後編では、働き方改革を遂行する上で欠かせないマインドの変化をどう行ったのか、また、新たな取り組みについてまとめます。

【前編】ECサイト構築のecbeingに聞いた!情報の共有が働き方改革推進のカギ

お話をお伺いした方

森 英一氏
株式会社ecbeing
企画制作本部 ディレクション第2部 部長

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事例共有の勉強会でマインドの変化を図る

株式会社ecbeing(以下、ecbeing)が働き方改革の最大の軸としてきた情報の共有は、現在では社内で習慣化されています。これに加え、Backlogによるステータス管理も行うことで、さまざまな効果が実感できるレベルになっています。

「ナレッジの属人化が減ってきたことに加え、仕事がしやすくなったことが大きなメリットです。以前は、プロジェクトの管理方法がバラバラでしたが、今では統一されているので、進捗の把握が容易になりました。」(森、以下敬称略)

こうしたITツールを活用した情報共有化に取り組む企業は多いのですが、思ったような成果につながらないこともよくあります。その違いはどこにあるのでしょうか? 森氏は「ツールに頼りすぎてもいけない」と言います。実際、ecbeingが情報の共有化に成功した背景には、マインドの変化という要因があります。そのために、社内では勉強会というアナログな活動を継続して行っています。

「週に一度、部内の社員が全員参加する勉強会を開催しています。どんな提案を行っているかといった事例報告や、そのプレゼン用に作成した資料やデータを共有するのが主な内容です。これには、サイボウズの「デヂエ」というWEBデータベースを活用します。勉強会で、多くの事例をインプットし、詳細は各自でサーバーに見に行くといったスタイルで進めています。」(森)

これにより、新しい提案を行う必要があるときは、デヂエで似たような提案を見つけ出すことができます。そのデータをベースに提案資料やプレゼン用のパワーポイントを作成すれば、圧倒的なスピード化を図ることができ、作業が効率化します。

「サイトの構築をする際も、他の案件のサイト設計を参照することで工数を削減することができます。かなり、効率化が実現していると思います。」(森)

この部内勉強会のほかに、全社が参加する土曜勉強会も開催しています。

「土曜勉強会は、実際にどういった導入があったかの事例共有会の役割を果たします。ecbeingのソリューションの導入に対し、開発や企画はどのようなことを行ったのかを発表するのです。これにより、サイト構築の仕方や開発の役割、最先端技術を知ることができます。また、開発担当者だけで客先に出向いたときに、『うちの企画なら、こんなこともできますよ』と、その場で提案することができるので、仕事の幅を広げることにもつながります。」(森)

情報共有の環境があるからこそ実現した同行人数の削減

森 英一氏 株式会社ecbeing
株式会社ecbeing 森 英一氏

シームレスな情報共有が当たり前になったことで、新たな取り組みも始めています。その一つが、客先訪問の人数の調整。打ち合わせに何人同行するのかは悩ましいところです。実作業の担当者を同行させ、その場で話を聞いてもらった方がスムーズに情報が行き渡るのも間違いではありません。

ところが、実際には、発言の機会のない人や行ってはみたものの担当の分野の話はでなかったというケースも出てきます。こうなると、時間と交通費のムダになってしまいます。

「最近の取り組みとして、打ち合わせに同行する人数は3人までとしています。以前は、6~7人で行くことも多かったので、大きな変化です。弊社の場合、開発と企画が同行することが多いので、追加できるのはプラス1人まで。それ以上増える場合には、許可制にしています。絶対に行ってはいけないとは考えていませんが、後から共有することで問題ないのであれば、わざわざ行かなくてもいいという考えです。」(森)

一昔前には、多人数で打ち合わせに行くことで、クライアントが喜んでいた時代もありました。ところが今は、その人件費もコストに反映すると考える企業が増えています。クライアントとしては、支障なく仕事をしてくれれば、打ち合わせの参加人数が少なくても問題ないのです。

「リソースを減らし、その効果をお客様に反映することは、これからますます重要視されることでしょう。一般的には、同行人数を減らすことで属人化しやすいデメリットが出てきます。弊社がもし、情報の共有化やBacklogの活用ができていなかったら、この施策は実現していないことでした。」(森)

仕事をシェイプしコストを下げることは、双方の企業にとってプラスとなり、効率化を実現することが、対外的な評価を高める時代になっているのです。

各自が得意領域を活かすことで見えてきた効果

ECサイト構築のecbeingに聞いた!ITツールの活用とアナログな活動で働き方改革はスピードアップする(後編)_01他にも、情報の共有化によって変化が起こってきたことがあります。それが人材育成の方向性です。ecbeingは、元々はシステムベンダーとしてスタートした企業で。その後、プロモーションやユーザーインターフェイス設計、リテンションマーケティングといった包括的な業務を行うようになってきました。この流れの中で、企画制作本部も人数が増え、現在の80名を抱える大きな部署に成長しました。

「以前は、オールマイティな人材を作ろうという方向に動いていました。ところが、慣れないことをやらされて効率が下がったり、不得意なところに評価軸を設けられてモチベーションが下がったりしたのです。その様子を見て方向転換し、それぞれが得意な分野をしっかりと広げ、それを共有していく方針にシフトしました。」(森)

IT分野の進化は特に早く、最新のツールやサービスであっても、すぐに別のものが登場します。不得意な分野を追求する間に、得意としていた部分まで遅れてしまっては本末転倒です。それは個人にとっても企業にとっても、決してプラスとは言えません。

「自分がやりやすいこと、得意な分野は深堀しやすいものです。新しいサービスが次々生まれる中で、できるだけ多くのことをキャッチアップしていかないとお客様にもついていけません。それなら、各々が自分のフィールドで新しいことに挑戦していき、モチベーションを上げていこうと考えています。」(森)

自分の得意を活かし、それを共有することでお互いに高めあう体制ができれば、豊富な知識を持つ集団形成が可能です。仕事のデータを共有することに端を発し、そこから派生して、あらゆる情報を共有し管理する体制を築いたところに、ecbeingの働き方改革成功の秘訣があります。

情報共有の中で行われる徹底したセキュリティ対策 

最後に、ecbeingの進んだ情報共有とセキュリティの両立について紹介します。ecbeingは、サイト構築をする中で、個人情報に分類される情報やクライアント企業の経営情報も扱います。そこで、情報共有に取り組む一方で、特定の情報については徹底した管理体制を取る必要がありました。

例えば、ノートパソコンを使ってリモートワークを行うことで、ほとんどの仕事を社外で行えますが、お客様管理画面へのアクセス等は、社内のセキュリティルームでしか操作ができないようになっています。ウイルス感染や情報漏洩がないよう、システム的にも人的にも、最大限のセキュリティ対策が施されているのです。また、脆弱性があると言われるオンラインストレージにはアクセスができない、USBを使用できないなど、ノートパソコンから情報が洩れることがないように対策もされています。

情報システム部から擬似的な攻撃を想定したメールが送信されてくるなど、人為的なミスを減らすため、不定期に社内テストが実施されているのも特徴的です。

「このメールが曲者で、メールの送信者が社長名だったり、社員間レクリエーションの写真の案内だったりと、実に巧妙な手口で作成されています。何の疑いもなくメールを開き、案内URLをクリックすると、モニターに警告が表示されます。改めて確認するとアドレスが違ったり、メッセージ内容に不備があったりするのですが、不意打ちなので、毎回誰かが開いてしまいます。」(森)

該当ファイルをダウンロードした人はペナルティとなり、後日、情報システム部が実施する研修を受けることになります。「ちょっとした気のゆるみがリスクにつながる」と再認識し、より入念なチェックを行うようになるそうです。

ecbeingの働き方改革の軸は情報の共有です。そのためにITツールを導入していますが、それだけでマインドが変化するわけではありません。勉強会を行うことでツールを使うシーンを具体的に伝え、そのメリットを感じることで、ようやく働き方改革へ動き始めたことになります。同時に、セキュリティに対する意識を徹底して身に付け、万全の体制を維持することも欠かせません。ecbeingが行った様々な取り組みは、働き方改革推進を目指す企業にとって、おおいに参考になる事例と言えるでしょう。

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