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ここ数年、WEBサービスの説明などで「API」という単語が欠かせないものになってきています。これに派生して「APIエコノミー(API経済圏)」という単語も生まれ、昨今のITサービスを活用する上では、APIやAPI連携について正しく理解する必要があります。
APIとは具体的にどのようなもので、どのようなメリットや注意点があり、どのような場面で使われているのか。本記事では、注目度が高まるAPIエコノミーの基礎知識について解説していきます。
API連携とは?
まずは、APIおよびAPI連携とは何かについて解説いたします。
APIとは
APIとは「Application Programming Interface(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)」の略で、直訳すると「アプリケーションをプログラムするための接点」です。もう少し意訳すると、「異なるソフトウェア同士をつなげるもの」とも言えます。
世の中には様々なITサービスがありますが、それらすべてが運営会社によって開発されているかというと、必ずしもそうではありません。たとえば、地図上でピンを立てるなどして店舗の位置情報を可視化させたい場合、ゼロから地図データを作成するのではなく、すでに地図データをもっているGoogleなどのデータを連携させることで実装することが可能です。その連携に必要なのが、APIです。
普段エンジニアリングを行っていない方にとってはなかなかイメージしにくいかもしれませんが、このような既存の外部サービスをAPIで活用する事は、機能開発を進める上で非常に重要で一般的な手法です。ゼロからプログラムを組むことなく、開発工数やコストをおさえてソフトウェアの機能を拡張するための仕組みがAPIだと捉えてください。
API連携とは?
API連携とは、「APIによってソフトウェア同士をつなぐこと」を示します。たとえば先述したGoogle Maps(以下、Googleマップ)は地図表示に関するAPIを公開しているので、エンジニアはそれとAPI連携することによって、自社アプリにそのままGoogleマップを実装することができます。
APIの多くはネット上で一般公開されているため、契約することなく利用できます。先ほどの地図アプリのケース以外にも、会員登録の際のSNSアカウント利用など、私たちの生活の身近な場面で使われています。
API連携のメリット
次に、API連携のメリットについて説明いたします。
開発効率化によるコスト削減
APIを利用することで、エンジニアは該当機能の開発の手間を省けるため、開発プロジェクトを効率化させることができます。もちろん、それによって開発コストは大きく削減でき、他社との差別化となる機能等に資源を集中させることができます。
多様なサービスの展開が可能になる
世の中には様々なAPIが公開されているので、組み合わせ次第で実に多様なサービスの展開が可能になります。たとえば、航空会社とバス会社のデータをそれぞれAPI連携させることで、飛行機の搭乗時刻に合わせたバスの予約を可能にするようなサービスの開発が簡単にできます。
このように、組み合わせの発想によってサービス内容を拡張し、ユーザーの利便性を上げることができるのも、API連携の大きなメリットと言えます。
顧客満足度の向上
ここまでは主にサービス提供者サイドのメリットについてお伝えしましたが、サービス利用者にとっても、前述したサービスの質や利便性の向上、そしてセキュリティ面での安全・安心など、メリットは多いものとなります。
たとえばアプリにログインするときに「Facebookでログインする」というボタンを押すことで、いちいちIDやパスワードを入力しなくてもログインできる体験をされた方も多いのではないでしょうか。これも、API連携の恩恵の一つです。
API連携の注意点
一方で、API連携には注意点もあります。
当然ながら、外部サービスと連携した機能の実装になるので、連携先のサービスが提供停止になると、そのまま自社サービスの運用にも影響が出ることになります。仮にAPIを含めたGoogleマップの一連のサービス提供が停止した場合、GoogleマップをAPI連携して利用しているアプリの地図はすべて表示されなくなるでしょう。
また上記のようなサービス停止でなくとも、たとえばAPI連携先のサーバーで障害が発生した際にも、自社サービスで同機能を使った箇所で不具合が発生する恐れがあります。
このように、外部サービスの運用に機能を依拠しているが故に外部サービスの影響を直接的に受ける点が、API連携の注意点となります。
拡大するAPIエコノミーと活用事例
次に、昨今拡大しているAPIエコノミーと、API連携の仕組みを活用した具体事例について、それぞれご紹介します。
APIエコノミーとは
APIエコノミーとは、APIを公開することで他社サービスを利用して広がっていく経済圏のことを示す用語です。これは、ユーザーが増えるほどに特定の製品・サービスのインフラとしての価値が高まる「ネットワーク外部性」と同じ効果として考えられます。
つまり、仮に1社だけがAPIを公開しているだけだと、企業が活用できる外部サービスも1社のものだけになるので、拡張性に欠けます。これが100社に増えると、100種類の機能をAPI連携させることができるので、より機能開発の選択肢が広がることになります。
このように、APIを公開するプレイヤーが多ければ多いほど、企業がAPI連携によって利用できる機能も充実していき、それによる経済活動が一段と活発化していきます。これが、APIエコノミーの醍醐味であり本質です。
APIエコノミーはあらゆる業界で進んでおり、特に金融分野での広がりに期待が寄せられています。
活用事例①:総務省
ここからは、具体的なAPIエコノミー事例をお伝えします。まずは、総務省による取り組みです。
同省が提供している「政府統計の総合窓口(e-Stat)」では、国土・気象や人口・世帯、労働・賃金といった多彩な統計情報をデータベースとして整備しており、そのデジタルデータをXMLなど機械判読が可能な形式で出力するREST方式のAPIで開放しています。これによって日本国に関する多様な統計データを、API連携して無償で活用することができるようになりました。
また2022年1月には、データサイエンスに関する講座「誰でも使える統計オープンデータ」をMOOC(Massive Open Online Course:インターネット上で誰もが無料で受講できる大規模な開かれた講義)プラットフォーム「gacco」でオンライン開講しており、e-Statを使ったデータ分析手法を学べるようになっています。
このような、行政によるオープンデータとAPIを組み合わせた取り組みは、APIエコノミーを加速させる上で非常に重要なものとなっています。
活用事例②:フードデリバリーサービス
次にご紹介するのは、フードデリバリーサービスです。
フードデリバリーサービスのような仕組みを作ろうとすると、配達者と店舗と利用者をそれぞれマッチングさせる機能の他に、利用者や配達者の現在地をリアルタイム表示させるマップ機能や、配達者と利用者がメッセージ等で連絡をとる機能、クレジットからQR決済まで支払いを済ませる機能などが必要となります。
これらをゼロから作ろうとすると非常に手間がかかる上に膨大なコストがかかるわけですが、マップ機能はA社のものを、メッセージング機能はB社のものを、そして決済機能として各決済事業者のAPIをそれぞれ「部品」として使うことで、複雑なアプリケーションサービスを構築できます。
代表的な例がUber Eatsです。Uber Eatsは、アメリカ発祥のライドシェア配車アプリを展開するUber社のサービスの1つです。同社はこのようにAPIを上手く活用し、コア技術である「マッチング」機能へと資源を集中し、今やグローバルで利用されるサービスを持つ会社へと急成長していきました。多種多様なサービスをつなげるAPIによって、誰もが高度な機能を簡単にアプリに組み込める時代を象徴するような企業がUberだと言えるでしょう。
活用事例③:家計簿アプリ
最後は、APIエコノミーの要として注目されているFinTech(金融テクノロジー)サービスである「家計簿アプリ」です。
家計簿といえば、ユーザーが日々の現金の出納を記録していくイメージが強いですが、ユーザーが継続的かつ正確に記録を続けていく必要があるため、なかなか長続きしないという声も多いものでした。
これに対して、金融機関が「参照系API」を公開し始めたことで、銀行口座でのお金の出し入れがそのまま自動で家計簿アプリへと連携できるようになってきました。
これによって、ユーザーは銀行由来の資産や支出を一括管理することが出来て、煩雑な記録の一部を大幅に軽減できるようになりました。使い勝手が悪く家計簿アプリに不満を感じていた方は、改めて使用してみてはいかがでしょうか。
APIエコノミーは今後も拡大する
以上、今回はAPIエコノミーを取り巻く状況についてお伝えしました。API連携を上手く活用することで、企業は業務効率化や顧客満足度の向上を期待できます。API連携には数多くのメリットがあります。自社のサービスや製品でAPI連携を活用できないか検討してみるとよいでしょう。
APIエコノミーは今後も拡大していくことが想定されるので、今後の動向にも引き続き要注目です。