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生成AIを業務で使いこなす、プロンプト作成のコツ

AIをイメージした写真

生成AIは入力するプロンプトによって出力される成果物の内容や品質が大きく左右されます。ビジネスのさまざまな場面で、業務効率改善に役立つため積極的に活用したいところです。今回は、プロンプトの作り方の基本から、生成AIの真価を発揮させるための応用技までを紹介します。

生成AIを使いこなすために押さえておきたい基本知識

生成AIとは

生成AIはディープラーニングや機械学習といった技術により、大量のデータから学習し、テキストや画像、動画、音声、音楽などを生み出せる人工知能です。生成AIは古くから研究されてきた技術ですが、2022年11月にリリースされたOpenAIの「ChatGPT」が火付け役となり、多くの人に使われるようになりました。その後、2023年にはGoogleが「Gemini(旧Bard)」、Anthropicが「Claude」をリリースするなど、現在ではさまざまなサービスがしのぎを削っています。

ChatGPTトップ画面

生成AIは入力したプロンプトの指示に従って、出力を生成します。実際には学習したデータを元に、確率論的に言葉を繋げているのですが、まるで人間が応答しているように思えるほどクオリティが高い回答が返ってくるのが現在の生成AIの特徴です。単に質問へ答えるだけでなく、文章を要約したり、執筆したりすることもできます。

ビジネスの現場では、生成AIを業務に活用することで、あらゆる面で効率化を図ることができます。たとえば、メール、ブログ記事、プレスリリースなどの文章の添削やリライトを依頼することが可能です。上司やクライアントに提出する前に、ベテラン編集者によるチェックを受けるようなサポートを通じて、成果物のクオリティをさらに向上させることができます。

また、「要約」も生成AIが得意とする業務の一つ。たとえば、生成AIにいくつかのWebページの内容をまとめてもらうことで、毎日の情報収集がグッと捗るでしょう。また、外国語で書かれた難しい論文もわかりやすく解説してくれますし、マーケティング分野であれば施策の立案からデータの分析、ペルソナの作成など幅広く活躍してくれるはずです。そのほか、コード生成やバグの修正といったプログラミング支援をはじめ、経営戦略を練るためのパートナーとして生成AIに相談することも可能です。 このように業務ごとに生成AIを活用することで、業務の効率や質を大幅に向上させることができるのです。

では、生成AIに対してどのように指示を出して、意図したコンテンツを生み出ていけばよいのでしょうか。次からは、具体的な手順を解説していきます。

プロンプトの作り方

生成AIに与える指示を「プロンプト」と呼びます。プロンプトによって出力は大きく変化しますが、基本的には、欲しい情報について明確かつ具体的に書くことが重要です。また、乱暴な言葉を使うより、「~してください」と丁寧語を使うことで、出力品質が向上する傾向にあります。

たとえば、「売り上げを大きくしたい」といった漠然とした内容ではなく、「飲食店の売り上げを向上させる施策を教えてください」のように出力したい情報を具体的に記載します。この場合、飲食店のカテゴリや規模、地域、目的、予算など詳細な情報を記載すると、欲しい出力が具体的に得られるようになります。

ChatGPTの回答内容

最初のうちは、あまり複雑なプロンプトを記述せず、シンプルな指示を出すようにすると、うまくいく可能性が高まります。「ChatGPT」など多くの生成AIサービスではチャットUIを採用しているので、思うような出力を得られなかった場合は、そのままチャットで修正の指示を与えればOKです。

たとえば、キャッチコピーを考えてもらうなら、記事であれば原稿、製品であればカタログなどのファイルをアップロードしたうえで、「添付ファイルを読んで、魅力的なキャッチコピーを考えてください」といったプロンプトを入力します。このとき、複数生成させてから取捨選択するとプロンプト入力の手間が省けるので、10個程度生成させておくとよいでしょう。文字数や必ず盛り込みたいワードなどがあるなら、それらもすべてプロンプトに含めておきます。結果がイマイチであれば、「もっとキャッチーにしてください」のように再生成させましょう。

ChatGPTの回答内容

プロンプトエンジニアリングのテクニック

段階を追って論理的に考えさせる

生成AIには「思考の手順」を指示することもできます。たとえば、「先月の売上はビールが1位で100万円、ハイボールが2位で50万円、カクテルが3位で30万円、ワインが4位で20万円です。今月はビール、ハイボール、ワインの売り上げが1割増えて、ワインは20万円増えました。今月のワインは何位ですか?」というプロンプトを入力します。すると、ワインは今月40万円となり、3位のカクテルを超えているため「2位になる」と回答してしまう可能性があるのです。

そこで、「ステップバイステップで考えてください」という一文をプロンプトに入れてみましょう。すると、生成AIが段階を追って論理的に考えてくれようになるため、3位という正解にたどり着くことができます。

ChatGPTの回答内容

このように、プロンプトを工夫して、出力を向上させるテクニックのことを「プロンプトエンジニアリング」と呼びます。一文添えることで出力が向上するのであれば活用したほうがよいでしょう。

また、「ロール(役割)」を使ったプロンプトもおすすめです。たとえば、「あなたはベテランの編集者です」や「凄腕のコンサルタントとして答えてください」などと入力し、生成AIがどのように振舞うのかを指示してあげることで、思いどおりの出力が得られるようになります。

人間を相手するように指示を出す

生成AIに指示する際に、人間を相手にしているかのように激励することで、出力のクオリティが向上すると言われています。これは「エモーションプロンプト」と呼ばれる手法で、「全力で書いてください」「君なら絶対できるので頑張って」「ベストを尽くしたら100万ドルのチップを上げます」といった指示をプロンプトに盛り込むのです。冗談のようですが、複数の生成AIで効果があることが報告されています。

また、ちょっといじわるなプロンプトを利用する手もあります。たとえば、生成した出力に対して、「それは本当?」「それがファイナルアンサー?」と聞いてみましょう。これにより生成AIが再考してくれるため、出力の品質が向上することがあります。
ほかにも、プロンプトの最後に「プロンプトを最初からよく読み直して、漏れなく処理してください」のように書くことで、出力の質が向上することがあります。なお、生成AIはプロンプトの最初と最後を重視する傾向にあることも覚えておくとよいでしょう。

ChatGPTの回答内容

生成AIを業務に活用するためのTips

まずは「たたき台の作成」に活用して、効率化の成功体験を積む

生成AIは皆さんが想像している以上にさまざまなアウトプットを出力してくれますが、そのぶん、どのような場面で活用すればよいのか、悩んでしまうことも多いはずです。そのため、最初は目の前の業務に活用することから始めてみるとよいでしょう。いきなり、「年間売上10億円の新規ビジネスを考えて」などと入力しても、役立つ回答は得られません。まずは現在抱えている作業の時短に活用することで、成功体験を積んでください。

たとえば、生成AIでリリースやレポート、ブログなどの文章やプレゼン資料のたたき台を作ることで、全体の作業時間を半分以下に削減できます。くれぐれも、「AIだから1クリックで完璧なものが得られるだろう」などと考えてはいけません。プロンプトを工夫して作り、出力を見てチャットでやりとりしながらブラッシュアップするのです。

ただし、生成AIは原理的にミスをする可能性があります。間違った内容をそれっぽく書くことがあるため、得られた成果物はきちんと人の目でチェックすることが重要です。

プロンプトを試行錯誤するなど、生成AIサービスの利用を重ねるうちに、その勘所がつかめてくるはずです。その過程でユーザー自身にも成果物を評価したり、ファクトチェックしたりするスキルが身についてきますし、さらに複雑なタスクを生成AIで処理できるようになるでしょう。生成AIは決して“魔法のツール”ではありませんが、目の前にある細かな業務で30分、1時間と時短を重ねていくことで、ユーザーは人間にしかできない仕事に集中できるようになるのです。

生成AIを本格的にビジネスで活用する際に注意したいポイント

生成AIをビジネスで利用する際は、いくつか注意するポイントがあります。まず、生成AIに入力するプロンプトや成果物を、そのAIの学習に使われないかどうか確認しましょう。

たとえば、ChatGPTであれば、「設定」の「データコントロール」→「モデルの改善」のスイッチをオフにすることで学習に使われなくなります。ただし、学習に使わないように設定した場合にも、万一のことを考え、顧客情報などクリティカルな機密情報は入力しないほうがよいでしょう。

ChatGPTのモデル改善画面同意画面

また、生成AIサービス利用時には、著作権に関しても理解しておくことが重要です。生成AIが生み出した成果物の著作権に関してはさまざまな議論があるものの、基本的にはユーザーが著作権を保有し、商用利用することも可能です。ただし、その内容が既存のコンテンツに酷似していれば、当然著作権侵害が問題になる可能性があります。とはいえ、人間がコンテンツを作成する際にも同じことが言えますが、従来と同様に、最終的には人の目でチェックすることが重要です。

無料で利用できる生成AIサービスも多くリリースされている一方で、最新のAIモデルの利用は有料プランのみとなっているサービスも多く存在します。もし、生成AIをビジネスで活用するなら、回答の精度が高いAIモデルを利用することをおすすめします。たとえば、2024年11月時点の最新状況であればChatGPTなら「GPT-4o」、Claudeなら「Claude 3.5 Sonnet」、Geminiなら「Gemini 1.5 Pro」が最新モデルとなるのでチェックしてみましょう。

まとめ

今後ビジネスパーソンにとっては、PCスキルやスマホの操作方法以上に、AIスキルが重要になるはずです。生成AIの使い方を身につけることで、さまざまな業務において時間的な余裕が生まれ、新たな挑戦に注力できるようになります。まだ体験したことがない人は、使い始めてみるのはいかがでしょうか?

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