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オフィス用パソコンといえば、デスクトップのイメージが強かったものの、低価格化や基本性能の底上げ、消費電力の低さへの注目などが影響し、ここ数年ノートパソコンが脚光を浴びています。
一般社団法人 電子情報技術産業協会 JEITAによると、2018年度のノートパソコンの国内出荷台数は、485.2万台。デスクトップは152.4万台となっており、国内市場の概ね3/4をノートパソコンが占める勢いです。
従来のデスクトップとノートパソコンの欠点を補う製品が日進月歩の勢いで開発され、モバイルパソコンやタブレットの人気も沸騰。企業の担当者の迷いは尽きません。ここでは基本に立ち返ってデスクトップとノートパソコンを徹底比較するとともに、従業員の多様な働き方に対応するためのパソコン導入ポイントについても説明します。
デスクトップとノートパソコンの徹底比較
高いスペックとカスタマイズが可能なデスクトップパソコンと、コンパクトで持ち運びに適したノートパソコン。それぞれの特徴を比較しながら、性能ごとにおすすめのパソコンを紹介します。
デスクトップパソコン | ノートパソコン | |
---|---|---|
コストパフォーマンス | 高い | 低い |
CPU | 高性能 | 高性能~低性能 サイズや機種による |
メモリ | 増設可能 | 機種によっては固定的 |
ストレージ | ノートパソコンより多い | デスクトップパソコンより少ない |
拡張性 | 高い | 低い |
設置スペース | 設置スペースが大きい 収納性が低い |
設置スペースが抑えられる 収納性が高い |
コストパフォーマンス
IT調査会社であるBCNの調べによれば、デスクトップ・ノートパソコンとも、2012年を底値として低価格化は一段落ついたことがうかがわれます。特に2017年に入ってからの平均単価は上昇傾向にあります(2017年3月のデスクトップの平均単価は11.7万円、ノートパソコンは9.9万円)。これは、Windows Vistaのサポート終了(2017年4月11日)やWindows 10の企業導入が行われていること、Windows 10の大型アップデート(Anniversary UpdateとCreators Update)が済み安定化が進んでいることなどが、買い替え需要を刺激していることによると同社は分析しています。
コストパフォーマンスを考慮すると、同じような性能・条件で比較した場合、デスクトップパソコンの方が性能は高いです。理由は、ノートパソコンは小型化に伴い各部品にかかるコストが高くなってしまうからです。技術進歩によりノートパソコンのコストパフォーマンスは上がっていますが、よりコストを抑え性能の高いパソコンを購入したい場合は、デスクトップパソコンがおすすめです。
特筆すべきはモバイルパソコンの人気沸騰ぶり。電子情報技術産業協会(JEITA)の統計によればモバイルパソコン(ここでは重さ2キロ未満、またはB5サイズ以下と定義)の平均単価は12万879円、対前年同月で8%高い数値となりました。また、法人向けでも高価格製品の人気が高まっています。重さが1キロ前後で、丈夫さやセキュリティー性能を備えた20万~30万円台のモデルが売れ筋。場所や時間にとらわれずに働くテレワークやフリーアドレスの広がりが背景にあります。
CPU
CPUとはパソコンの「頭脳」となる中核部品で、処理速度を表しています。パソコンの性能や金額を決める最大の要因でもあり、その性能はパソコンのサイズに関係します。処理能力の高い高性能なCPUほど、発熱量が多くなってしまうため、内部スペースの広い放熱性に優れたサイズの大きいパソコンが求められます。
そのため高いCPU性能を求めるのであれば、デスクトップパソコンがおすすめです。中でもタワー型のデスクトップパソコンであれば、最高クラスのCPUを搭載することができます。
ただし、サイズの小さいノートパソコンのCPU性能が低いというわけでもありません。モバイルパソコンなどのサイズが小さいパソコンへの高性能CPU搭載は難しいですが、技術進歩により、ノートパソコンでも動画・画像編集など、用途に沿った性能を満たすCPUの搭載されたノートパソコンを検討できます。
メモリ
メモリとは、データを記憶する部品を言います。また、メモリはCPUが処理を行うための「作業台」でもあります。つまり、いくら高性能なCPU「頭脳」を搭載していても、メモリ「作業台」が広くなければ処理速度は落ちてしまいます。
デスクトップではスロットの数だけメモリモジュールを搭載可能です。マザーボードのスロット数やモジュール1枚あたりの容量上限次第ですが、希望すれば好きなだけ後から増設できるといえます。
一方で、現在のノートパソコンのメモリは固定的。特にモバイルノートの場合、オンボードでメインメモリを実装、メモリスロットが省略されている場合が多くメモリ増設が不可能な製品も存在します。メモリ増設(あるいは交換)可能な製品については、メーカーの多くがサポートメニューを用意しています。また、最近ではBTO(Build To Order)で販売されるメーカーも多く、会社の使用状況に応じカスタマイズで注文ができるサービスも増えてきていますので、それらを利用すると良いでしょう。
ストレージ
ストレージとは、データを保存するために必要な部品です。大きく分けてHDD(ハードディスクドライブ)とSSD(ソリッドステートドライブ)の2つに分けられます。HDDは、容量あたりの価格が安いですが、処理速度が遅く消費電力も大きいです。一方SSDは容量あたりの価格こそHDDよりも高いですが、処理速度が早く消費電力も低いです。
ストレージの容量やスペックも、パソコンのサイズによって変わります。サイズの大きいデスクトップパソコンであれば、容量の大きいストレージが搭載できます。サイズが小さくストレージ容量も小さいノートパソコンですが、外付けハードディスクやUSBの活用によって容量不足を解決できます。
拡張性
拡張性とは、パソコンが本来もつ機能に加え、拡張用の機器を接続することで、機能を向上させることが可能な設計上の特徴を言います。タワー型のデスクトップパソコンは、部品の交換や増設がしやすく、拡張性が高いです。ノートパソコンは内部スペースが狭く、持ち運びやすさに重点を置いているため、搭載できる部品には限りがあり拡張性は低いです。
設置スペース
ザイマックス総研の調査によれば、東京23区の1人あたりオフィス面積は3.85坪(2018年)。リーマンショック以降、2016年まで縮小傾向にありましたが、2017年、2018年と微増しています。オフィスに合わせPCの設置スペースを重視するのであれば、本体と液晶ディスプレイ、キーボードが一体になっているノートパソコンがおすすめです。
モニタと本体がセパレートであってもサイズを抑えたコンパクト型や、モニタと本体が一つになった一体型デスクトップの製品も多いため、設置スペースを抑える理由だけでデスクトップを切り捨てる必要はありません。なお一体型は、配線がすっきりしてインテリア性が高いことから人気を集めていますが、拡張性が低く修理費が高くつくといった課題もあるため注意が必要です。
多様な働き方への対応
多様な働き方を推進し、従業員の生産性が高くなるような職場環境作りが求められる「働き方改革」。中でもオフィス以外で勤務にあたる「リモートワーク」においては、通勤や移動負担の軽減、労働時間の短縮といった効果が期待されます。また、子育てや介護など、家庭での時間が多くなってしまう方にとって大きなメリットとなるでしょう。
これらの点から、持ち運びや場所の制限が少ないノートパソコンが、働き方改革を進めるにあたっては適したパソコンと言えるでしょう。
仕事の効率化、生産性の向上という点では、パソコンの買い替えによる改善も見込まれます。データの処理に時間がかかってしまうHDDなどのストレージを採用しているパソコンから、データ処理の早いSSDを搭載したパソコンに変えることで、業務時間の短縮化につながり、結果的に企業全体の生産性向上が期待されます。
まとめ
パソコン市場の今後の注目点として、官民を挙げての取り組みとなりつつある働き方改革が、市場押し上げ効果にどの程度つながるかが挙げられます。特に、モバイルなどを活用したリモートワークや在宅勤務等、多様な働き方を支える端末としての役割がパソコンに求められています。大企業を中心として、働き方改革への取り組みは盛り上がりを見せつつありますが、中小企業へも取り組みが波及すればさらに活況を呈することが期待されます。
JEITAによれば2016年度のPC出荷台数は前年度比2.1%増。Windows XP特需の反動が収まったことから法人市場も9.8%増と回復し、活気を呈しています。高い拡張性やデスクトップ級の高性能を兼備したノートパソコンのように、従来のデスクトップとノートパソコンのすみ分けを超えた新製品からも目が離せません。オフィスのニーズを的確に把握した上で、最適な製品を選択する手腕が担当者に求められています。