「功罪が語られることはあれど、会議は欠かすことのできないものである」
近年、その在り方が大きく変化してきています。これまでは、全員が会議室に集まるのが一般的でしたが、パソコンやスマートフォンの普及で、会議室の外から参加するケースが増えてきています。この会議スタイルの変化は、単に移動時間や交通費の削減にとどまらないメリットを生み出し、働き方の革命を後押しするものになっています。
今回は、遠隔コミュニケーションツールを提供する、プレミアコンファレンシング株式会社に最新の動向を取材しました。前編では遠隔会議システムの活用例と意外なメリットをお伝えします。
お話をお伺いした方
寺島 豪士氏
プレミアコンファレンシング株式会社
営業部 ヴァイスプレジデント
尾崎 めぐみ氏
プレミアコンファレンシング株式会社
マーケティング部 マネージャー
3つの遠隔コミュニケーションの手法
プレミアコンファレンシング株式会社(以下、PGi)は、世界中で遠隔コミュニケーションツールを提供するPGiグループの日本法人です。2000年に日本でサービスの提供を開始し、2002年には日本法人を立ち上げました。国内での導入実績はすでに3000社を超えています。
PGiでは用途に合わせて3つのソリューション(電話会議サービス、WEB会議サービス、WEBキャスティング)を取り扱っています。まずは、それぞれのサービスの違いを説明します。
電話会議
電話回線を利用し、複数拠点間で音声のやりとりができる会議サービス。固定電話回線や携帯電話回線でも利用することができるが、資料・映像の共有はできない。
WEB会議
インターネット回線を利用し、音声・資料・映像の共有ができる会議サービス。パソコンだけではなく、スマートフォンやタブレット、モバイル端末などからの参加も可能。
WEBキャスティング
インターネット回線を利用し、音声・映像・資料を配信できるサービス。インタラクティブなやりとりはできないが、受け取り側が数千人規模になっても、快適な音声・映像を届けることができる。主にトレーニングや講義で使用されている。
WEB会議と類似するサービスに「テレビ会議」があります。画面に会議参加者を映し出す点は同じですが、テレビ会議は専用回線と専用機器を必要とするのに対し、WEB会議はパソコンやスマートフォン、タブレットなどを使用し、通常のインターネット回線でも接続できるという違いがあります。
働き方改革推進のための一つのツールとして導入が進む遠隔会議システム
これまで会議と言えば、全員が会議室に集まり、同じ空間で行うのが一般的でした。そのため、わずか30分の会議のために時間をかけて会社に戻る必要があったり、本来であれば客先を訪問すべき時間が潰れてしまうなど、時間と交通費の無駄が出てしまっていました。
このデメリットの解消のため、遠隔会議システムを導入したという企業は多いそうで、実際、PGiに問い合わせてくる企業は、すでに何らかのシステムを導入している場合がほとんどだと言います。
「最近は、遠隔会議システムを使用していない大企業・中堅企業はほとんどありません。ただ、部署単位で導入していたりして、社内に複数のシステムが混在していることもあります。そのため、統一ルールを設けて全社に促進したいとか、コストメリットを出したいという要望が多くなっています。」(寺島、以下敬称略)
この背景には、導入目的が「移動時間や交通費などの無駄を省きたい」という限定的なものから、「業務効率を上げ、働き方改革を推進したい」という、より大きな目的に変わってきていることが関係していると考えられます。
そしてもう一つ、この1年で急激に増えた問い合わせがあると言います。それが、Skype for Businessの活用に関するものです。マイクロソフトのOffice365を導入すれば、Skype for Businessも利用できます。「Skype for Businessを使ってコミュニケーションを活発化したいのだが、もっと快適に使用するにはどうすればいいのか?」という問い合わせが増えているそうです。
「日本ではMicrosoft Officeを導入している企業が多く、Office365に切り替えるケースが増えています。Skype for Businessを含む、Office365の導入にはコストがかかっています。私たちが提案しているのは、かかったコストの費用対効果を高めていただくことです。我々の提供するソリューションとSkype for Businessを連携させることで、さらにリターンを大きくする方法を提案しています。」(尾崎)
ここで言うリターンとは、働き方改革の推進や、それに伴う社員の満足度向上なども含まれます。企業にとってメリットが大きく、導入に至るケースが増えているそうです。
WEB会議サービスの活用で優秀な人材確保も
現在、遠隔会議サービスは、実際にどういった使われ方をしているのでしょうか。
「もちろん会議や打ち合わせは多いでしょう。サービス名に会議とついているので、お問い合わせの段階では、会議での利用だけをイメージしている企業様が多いと思います。ただ、広い意味でのコミュニケーションへの活用が可能です。例えば面接や研修、遠隔同行といった場面ですね。」(寺島)
PGiでは、WEB会議サービスを活用した在宅勤務や採用面接が一般的になっています。たとえば採用面接の場合、海外にいるマネージャーとの面接が必須だからです。これは、地方の学生が都内の企業と面接するシチュエーションにも応用できそうです。「最近の学生は、スカイプやLINEの音声通話を使っている方が多く、WEB会議サービスで面接を受けることに対するハードルは高くない」と言います。実際に特別な準備をしなくても、ヘッドセットとノートパソコンだけで準備も整います。
「どの企業も人材不足が問題視されています。WEB会議サービスを使った面接を取り入れることで、優秀な人材を採用できたり、離職率を低下させる可能性が高まるのであれば、積極的に導入した方が良いと考えています。」(尾崎)
優秀な人材の確保は、企業の未来を左右する重大な問題です。そのための手段は、多く用意しておくべきでしょう。
また、遠隔同行という使われ方もあります。顧客との打ち合わせに、現場に行かずに参加する、という方法です。
「例えば建設業では、遠隔同行のニーズが高まっています。この業界では、営業担当者に比べて技術者が少ないのが一般的です。技術者が打ち合わせに同行できるのは1日2件程度。ところが、営業担当者がタブレットをもって現地に行き、社内にいる技術者とWEB会議でつながることで、1日5件の同行が可能になります。クライアントにはタブレットで映像を見せ、技術者が必要とする情報はWEBカメラで送れば、現地に行かなくても十分な対応ができるのです。」(寺島)
技術者が社内に居ながらにして、従来の2.5倍もの仕事をこなすことができるのであれば、WEB会議サービスを活用しない手はないでしょう。
意思決定のスピードアップ、会議時間の削減など多様なメリット
遠隔会議サービス導入のメリットとして注目したいのが、決断のスピードアップです。これまでは、スピーディに決断すべきことがあっても、会議のために参加者のスケジュールを調整し、会議室を予約する必要がありました。せっかくスケジュールを決めても、都合が悪い人がでてくれば、会議を延期することになってしまいます。本来であれば、即断即決をすべきところを「会議ができない」という理由で時間をかけるのは本末転倒と言えます。
「WEB会議サービスを活用すれば、移動中でも会議に参加可能です。これによりスケジュールの調整がしやすくなるでしょう。それも難しいという人は録画機能を使い、後から情報を共有することができます。」(寺島)
従来、会議に出席できなかった人が情報を得るには、参加者に聞くか、議事録が共有されるのを待つ必要がありました。どちらにしても、伝わってくる内容は限定的です。特に、文字情報では微妙なニュアンスが伝わらず、認識のズレを引き起こす可能性もあります。しかし、録画された映像であれば すぐに内容を確認できるだけでなく、会議でのやりとりのニュアンスまでキャッチアップすることができます。
また、コミュニケーションが活発になるというメリットもあります。
「今までなら、出張して現地に行かなければ会えなかった人とも、遠隔会議サービスによって気軽に話ができます。本当は3回話をすべきところを、遠いからと1回に限定してしまうケースがあると思います。遠隔会議サービスであればそういった制約はありません。例えば、新商品の知識をタイムリーにトレーニングするなど、情報交換を密にすることで、ビジネスのスピードが格段に上がっていきます。」(尾崎)
そして、会議の時間を短縮できるという、意外なメリットもあるそうです。
「WEB会議を使用して、話している相手が遠隔だったり、複数拠点だったりすると、不要な話をしにくくなり、参加者の雑談が比較的少なくなるようです。WEB会議を導入した結果、今まで1時間半かけて行っていた会議が、45分に短縮されたという例もあります。」(寺島)
会議時間の短縮は多くの企業が取り組むテーマです。それを遠隔会議サービスの導入により実現できる可能性があるとは、意外な解決策と言えるでしょう。
改めて、Face to Faceの必要性を考える
さまざまなメリットを生み出す遠隔会議サービスですが、「顔を合わせないと活発な議論はできない」と考えている人も少なからずいるでしょう。会議におけるFace to Faceの必要性について、PGiではどのように考えているのでしょうか。
「遠隔会議を日常的に行っている我々も、お客様先を訪問することもあります。これは、なくならないことだと思っています。ただ、すべてがFace to Faceである必要はないはずです。たとえば、本会議は全員が顔を合わせる必要があっても、事前打ち合わせやフォローアップミーティングはもっと簡単でよいかもしれません。それぞれの会議において、Face to Faceと遠隔会議のどちらが効率的なのかを判断していけばよいと考えています。」(寺島)
遠隔会議サービスの導入と聞くと、今までの会議を全面的に変えなければならないというイメージがあるかもしれません。しかし現実は、イチかゼロかを決めるようなものではなく、「より円滑な会議のために、選択肢を増やす」ことだと言えます。
ここまでは、遠隔会議サービスの活用事例や導入のメリットについて述べてきました。後編では、自社にあった遠隔会議サービスの選び方と賢い運用方法について解説します。