現在のように働き方革命が叫ばれる以前から、裁量労働制やフリーアドレスオフィスなど、先進的な働き方を推進してきた企業があります。それが、スカイライト コンサルティング株式会社です。会社の規範やルールで管理するのではなく、個々人が成果を出すことによって、順調に業績を伸ばしています。そこにはどんなカルチャーがあり、マインドを育てる仕組みがあるのでしょうか。前編では、スカイライト コンサルティングの自律的な働き方とカルチャーを、後編では、独自のカルチャーを支えるITツールやサポート体制について紹介します。
お話をお伺いした方
中澤 竜馬氏
スカイライト コンサルティング株式会社 取締役
林 俊輔氏
スカイライト コンサルティング株式会社 マネジャー
創業時から導入された裁量労働制とフリーアドレスオフィス
スカイライト コンサルティング株式会社(以下、スカイライト)は、2000年、6名のコンサルタントによって設立されました。ビジネスコンサルティングを主業務とし、戦略策定、新規事業立ち上げ、業務プロセス改善、システム導入など幅広い領域を担当しています。在籍する社員約130名のうち、100名強がコンサルタントです。
「コンサルタントは、お客様先に常駐して支援をします。プロジェクトの内容や規模によって差がありますが、1人のこともあれば、10~20名のチームを組むこともあります。契約期間は3ヶ月から半年が多いですが、リピート率も高く、次のフェーズの支援を行ったり、違うプロジェクトの支援を行ったりと、年単位で常駐するケースもあります。」(中澤、以下敬称略)
勤務体系は、常駐先の企業に合わせる形で、週5日、フルタイムで常駐するため、自社に戻ってくるのは四半期に一度というコンサルタントもいます。創業時からフリーアドレス制が採用されており、自社で仕事をする場合は、社内3つのワーキングスペースのうち好きな場所で仕事をすることができます。
「誰が何時に出社しているかは、気にしていません。我々が気にかけているのは、お客様に向き合って成果を提供できているかどうか。何時に来て、何時に帰るかは関係ありません。」(中澤)
勤務時間や場所が固定されていないと、ついつい気が緩みそうなものですが、そんな雰囲気はみじんも感じられません。そこには、高いプロ意識と仕事へのプライドがうかがえます。
アサインの機会を公平にする公募制と2つの評価制度
スカイライトのプロジェクトのアサインメントは個性的です。一般的なコンサルティング会社であれば、マネジャーが各コンサルタントのリソースやスキルをもとにアサインします。一方で、スカイライトでは「公募制」を採用しており、コンサルタントは自ら希望する案件へエントリーする機会を与えられています。
「公募制にしたのは、コンサルタントのアサイン機会を公平したかったことと、本人のモチベーションやエンゲージメントを大切にしたいとの考えからです。主体的にプロジェクトを選ぶことで熱量をもって仕事ができ、業務へのコミットメントも高くなります。」(中澤)
業務を遂行するためのスキルを持っていることは重要ですが、そのスキルを最大限発揮するには「モチベーション」が欠かせない要素となります。コンサルタントの業務には正解がないことも多いのですが、「自分で選んだ案件」だからこそ、分析や提案といった業務におけるパフォーマンスを高めることができるのです。
これに加えて、2つの評価制度がコンサルタントのプロ意識を向上させています。
「弊社では2つの評価制度を導入しています。会社の評価によって決定されるクラスと、自己申告によるコントリビューションです。まず、どんなパフォーマンスで、どんな役割ができるかという要素でクラスが決まり、標準年棒が適用されます。加えて、半年ごとにコントリビューション(=貢献)を評価して賞与を決定します。これは、お客様の求める成果を出せたかはもちろん、どれだけ会社に貢献したかも評価の対象になります。新入社員研修の講師や社内システムの改善活動なども対象となります。」(中澤)
給与は、モチベーションに大きく関わる要因です。金額の多い少ないではなく、その評価に納得できるかどうかが重要なのです。その点、スカイライトでは評価基準やガイドラインが明確になっているため不満が生まれにくい。これはスカイライトの経営陣が、コンサルタント一人ひとりのキャリアアップに真剣に取り組んでいる成果ともいえるでしょう。
自由な働き方の背景にある自主自律の精神
では、仕事の進め方はどのようになっているのでしょうか。
「弊社は、命じられて何かをすることが非常に少ない会社です。おそらく、皆さんが想像している以上に、会社の管理に依存しない働き方になっていると思います。何かに取り組もうとするとき、目的は伝えられても、手段はまでは指示されません。たとえ上司と意見が異なっても、自分が思うやり方で進めさせてもらうこともあります。」(林)
自由に仕事ができることは喜ばしいことですが、その分、責任も多くなりそうです。スカイライトのコンサルタントは100名強。その一人一人が自主自律の精神を持っていなければ、このカルチャーを継続することはできないでしょう。
「設立当時、どんな会社にしていくか考える中で、『管理する会社ではなく、皆が大人でプロの集まりにし、自由に規律をもって活躍できる場にしたい』と話していました。監督の指示の元に動く野球型ではなく、選手が自律して動くサッカー型の経営をしたいのです。フィールドに送り出した後は、選手一人ひとりが状況を判断して自律的に行動し、周りを見て連携して成果につなげる。それが理想です。」(中澤)
創業時に、理想像を掲げる経営陣は多いでしょう。しかし、それを十数年守り続けることは非常に難しく、事業の拡大により、社員数が何倍にも増えた場合、なおのこと困難になってきます。自主自律の精神を育てるには、会社がカルチャーを守り続けようと努力する、ぶれない軸が重要です。
高い意識を持ち、個々人に規範があれば規則は不要
社内ではコミュニケーションツールを積極的に活用しています。各ツールの詳細については後編で紹介しますが、ここで驚くのは、ツールの利用に関するルールブックや規定集が存在しないことです。
「ツールを使ったコミュニケーションは公私ともに盛んですが、お客様のことをチャットに書き込んだり、機密情報を気軽にメールで送ってしまったりする人はいません。私たちは、お客様の役に立ちたいという根本的な欲求を持ち、それに反することはしないという判断ができるプロフェッショナルです。それぞれが個人の規範をもって行動しているので、管理の必要がないのだと思います。」(林)
コンサルタントは、機密性の高い経営情報を扱うことも多くあります。配慮に欠く行動をすれば、信用を失うことになりかねません。大人の集団であるがゆえに、各人がその意識を持ったうえで自由かつフランクなやり取りを行う——高いマインドをもつ集団が築くカルチャーの下では、ルールさえ必要ないのかもしれません。
カルチャーが完成すれば、共感する人が集まってくる
高い意識を持ったプロ集団であり続けるスカイライトですが、どのようにして人材を集め、個人のマインドを育てているのでしょうか。
「働き方改革は、働く人が個々人の状況・志向にあわせて未来を選択できることだと認識しています。スカイライトは、その点は実現できており、社員みながこの価値観を共有しています。」(林)
とはいえ、ただ待っているだけでは人材は集まりません。スカイライトでは、10年以上前から学生を対象としたインターン制度を開始しています。
「毎年、4~5人の新卒採用を行っています。新卒はポテンシャル採用なので、採用後の可能性を正確に見極めるためにもインターン制度は欠かせません。入社後は3ヶ月の研修の後、マネジャーの元でアナリストとして実務経験を積んでいきます。」(中澤)
研修後の新入社員は、常駐先で仕事をし、全員が本社に集まる機会は多くありません。それでも、スカイライトのカルチャーを体現できる人材に育っていくのは、実に興味深い点です。インターンを通じて、同じ感覚で仕事に臨むことができる人材を採用しているだけでなく、自律した働き方で成果を上げる先輩社員との経験が関係しているのでしょう。
後編では、スカイライトの独自のカルチャーを支えるITツールやサポート体制について紹介します。