業務の自動化・効率化は、どの企業でも長年の課題です。企業に勤務している方の大半が何らかの形で実現したいと考えているのではないでしょうか。最近ではノーコード/ローコードと呼ばれる概念が普及し始め、誰でも業務を自動化・効率化できるようになりました。ノーコード/ローコードを実現するツールの中で最も普及する可能性を秘めているのが「Microsoft Power Automate」です。
今回は、業務の自動化を強力に推進するMicrosoft Power Automateの概要やメリット、注意点、活用事例をお伝えします。
Microsoft Power Automateとは
特徴と実現できること
業務を自動化するノーコード/ローコードツールであるMicrosoft Power Automateは、繰り返しの作業や業務プロセスを自動化することによって、少ないリソースで最大の効果を発揮します。高度なプログラミングが不要で、ドラッグ&ドロップで業務フローを構築できます。
Microsoft Power Automateは、Web版のクラウドフロー 、Desktop版のデスクトップフローがWindows 10以降のOSで無償提供されています。
Microsoftアプリケーションとの連携
OutlookやExcel、Teamsなど、他のMicrosoftアプリケーションとスムーズに連携でき、アプリへのコネクタやテンプレートも豊富です。AI機能でデータの収集と分析にも対応し、メールの内容を判断して適切な宛先に送付するなどの処理も実装できます。
「ノーコード/ローコード」とは
「コード」とはプログラミングのコードを意味し、「ノーコード」とは、全くコードを書かずに開発することを指します。対して「ローコード」は、コードの記載を最小限に抑えて開発することです。ノーコードやローコードは、世界でみると既にメジャーな手法になりつつあります。
「ノーコード/ローコード」の今後の展望
アメリカにある市場調査会社IDCが2023年1月17日に発行した「IDC Forecasts Strong Growth for Low-Code, No-Code, and Intelligent Developer Technologies(英語)」によると、ノーコード/ローコードによる2026年までの全世界の収益について年間平均成長率(CAGR)が17.8%になり、最終的には2026年に210億ドルへ増加すると予測されていました。
また同じくアメリカの市場調査会社Gartnerが2022年12月13日に発行したプレスリリース(英語)内では、2026年までに、IT部門以外の開発者がローコード開発ツールユーザーの少なくとも80%を占めるようになるという予測も記載されています。これらのリリースデータから、今後「ノーコード/ローコード」ツールの普及は加速していくと予測できます。
Microsoft Power Automateを使用するメリット
業務の効率化によるコスト削減
人の手で実施すると時間を要する作業も、Microsoft Power Automateで自動化すれば数分で完了できます。これまでは自動化のためのプログラミングスキルが必須でした。しかしMicrosoft Power Automateでは、ドラッグ&ドロップで簡単にフローを作成でき、プログラミングのスキルがなくても簡単に自動化ツールの開発が可能です。
また、複雑な作業を人の手で実施する場合は、どうしてもミスが発生する確率が高くなります。セキュリティーインシデントや大規模システム障害などに結び付いた場合は、大きな対応コストが発生してしまうでしょう。Microsoft Power Automateで各種作業を自動化できれば、これらのミスが発生する確率を低減できます。
業務フローの見える化
Microsoft Power Automateでの自動化は、各業務のフローを明確にする必要があるため、自動化を進める中で業務フローを見える化できます。そして業務フローをただ自動化するだけではなく、改善したうえで自動化すると、自動化フロー設計の簡素化や業務フロー短縮化など、更なるコストメリットを生み出せるのです。
業務フローの見える化にあたっては、関係者にコツコツと根気強くフロー内容を確認していくことがポイントです。可能であれば関係者を全員集めて業務フローの認識合わせができると、改善案も同時に洗い出せるため、その後の対応がスムーズになります。
豊富なオプション
豊富なコネクタやテンプレートで、業務の自動化を支援できます。Microsoft Formで申請を受け付けた場合はTeamsの対象チームへ通知する、Outlookの添付ファイルをOneDriveに自動保存するなどの処理を、コネクタやテンプレートを利用して簡単に実装できます。
また業務フローを自動化することで付随するデータの収集も容易になり、社内で発生しているデータを自動で収集することもできます。さらにPower BIなどの分析ツールと連携することで、効率のよいデータ分析を実施することもできます。
メンテナンスが容易
Microsoft Power Automateはクラウドベースのサービスであるため、どこからでもアクセスできます。
働き方改革が推進されて複数の企業でテレワークが普及した昨今では、どこからでもシステムにアクセスできることは大きなメリットです。緊急の場合でも障害対応が容易になります。
Microsoft Power Automateを使用する際の注意点
人の判断は代替できない
Microsoft Power Automateは業務を自動的に処理できますが、人の判断は代替できません。単純作業の部分はAI連携で自動化できたとしても、人の判断が必要な部分は代替できないことを覚えておきましょう。
頻繁に変更が発生するタスクには向かない
業務フローの中でも、サプライチェーン管理やデジタルマーケティングなど、市場のトレンドや競合他社の戦略などで頻繁に変更が発生するようなタスクが複数存在します。このようなタスクを自動化してしまうと、業務フローが変更されるたびに処理フローのメンテナンスが発生してしまいます。Microsoft Power Automateで自動化する業務は、定型作業に留めた方が効果を得られるかもしれません。
活用にはある程度のトレーニングが必要
Microsoft Power Automateはノーコード/ローコードツールであるとはいえ、その活用にはある程度のスキルを要します。場合によっては想定した内容と異なる処理が実行されてしまい、自社に不測の事態をもたらしてしまうといった可能性もゼロではありません。思わぬ挙動によってインシデントが発生する事態を極力避けるため、事前に研修やeラーニングなどで仕様を理解しておくことも大切です。
Microsoft Power Automateを使った業務改善事例
配置転換時の手続き自動化
配置転換の際には、社内システムや業務システムなどの情報変更や情報消去が必要になります。その内容は企業や部署により異なりますが、企業規模が大きくなるほど多岐に渡るのが一般的です。
システムの情報変更や情報消去を配置転換する一人ひとりに対して対応するのは非常に手間がかかります。特に4月や9月など人事異動が実施されるシーズンでは、細かい作業をいちいち実施している時間はないでしょう。
そこで各種操作をMicrosoft Power Automateで自動化し、漏れなく対応できるようにしておくとスムーズです。必要な情報を申請してもらうだけで各処理が実行されるようにしておけば利便性が向上します。
基幹システムの操作自動化
基幹システムにおける事務処理は多くの企業で実施されており、社員の勤怠管理から部門の資産管理、通勤費の申請など、さまざまです。
しかしこれらの動作はほぼ定型作業のため、工夫すればMicrosoft Power Automateで効率化できます。例えば、Microsoft Power Automateを使用してパソコン起動時とシャットダウン時の時刻を記録し、基幹システムへ登録するようにすれば、自動的な社員の勤怠管理が可能です。
同様に他の作業についても効率化できます。Microsoft Power Automateは他のアプリケーションと多種のコネクタやテンプレートの恩恵で他システムと連携しやすいため、対応も容易です。
セキュリティーチェックの自動化
セキュリティー対策は各企業で進んでいるものの、脆弱性を突かれる、情報が漏えいするといったセキュリティー事故は後を絶ちません。場合によっては、社員が定期的に実施すべきセキュリティーチェックを怠ったためにこうした事故が起こることもあります。
しかしセキュリティーチェックに必要な事項が明確になっていれば、Microsoft Power Automateで自動化できます。極力人の手を介さず自動でチェックできるようにすることがポイントです。
まとめ
Microsoft Power Automateを使えば、誰でも比較的簡単にドラッグ&ドロップで業務を自動化できます。従来は情シスに依頼する必要があった内容も、担当部門で自動化できるでしょう。
しかしMicrosoft Power Automateにはメリットばかりではなく、人の判断は代替不可、頻繁な変更が発生するタスクには向かない、操作を習熟する必要性などの注意点もあります。メリットに飛びついて導入を進めるのではなく、これらの注意点も踏まえて、導入を検討していきましょう。