PCを導入する場合、購入以外にもリースとレンタルの選択肢があります。PCのリースとレンタルは、どちらも月額制ではあるものの、料金体系や料金相場、所有権の所在などが異なります。
本記事では、PCのリースとレンタルの特徴から、実際に導入するまでの流れを詳しく解説します。リースとレンタルの違いやメリット・デメリットについて理解し、自社にとって最適な形でPCを導入しましょう。
PCのリース・レンタルとは?大きな違いは契約期間の長さ
まずは、PCのリースとレンタルのそれぞれの特徴を解説します。両者の大きな違いとしては、契約期間の長さが挙げられます。
PCのリースとは?
PCにおけるリースは、リース会社が借り手の要望に合わせてPCを販売メーカーから購入し、そのPCを貸借することです。貸し出し期間は中長期となり、2年・3年・5年など任意の期間を指定した契約を結びます。
リースは、最新機種や細やかなニーズに沿ったPCを賃借しやすい傾向にあるため、スペックを重視したい場合に向いています。ただし、貸し出し期間が長期になるため、総支払額がかさみ、購入した場合より費用がかかりやすくなる点には注意しなければなりません。
PCのレンタルとは?
PCにおけるレンタルとは、レンタル会社が保有しているPCの中から機種を選び、一定の費用を支払って貸借することです。一般的に短い期間での貸し出しを行い、主流である短期レンタルでは1日・週単位・月単位など、1年未満の期間でPCを貸借できます。
レンタルでの注意点は、リースと比較して月額の支払いコストが高くなる傾向にあることです。また、レンタル会社が保有するPCの種類や数は限られているため、最新機種や細かなニーズに応えた機種が必ずしも提供されるわけではない点も注意しましょう。
【比較一覧】PCのリースとレンタルの違い
PCのリースとレンタルには、サービス形態や仕組みに細かな違いがあります。それぞれの特徴や違いは以下の通りです。
リース | レンタル | |
---|---|---|
借り手が希望するPCをリース会社が購入して賃借する | レンタル会社が所有するPCから選択して賃借する | |
PCの所有権 | リース会社 | レンタル会社 |
契約期間 | 比較的長期(最低2年以上) | 比較的短期(日単位、月単位) |
中途解約 | 原則不可 | 可能 |
契約終了後 | 返却または再リース | 返却 |
PCが届くまでの期間 | 一定期間必要 | 比較的短い |
保守・修繕義務 | 借り手 | レンタル会社 |
料金体系 | PC価格×リース料率 | 一定の料金設定 |
料金相場 | レンタル料よりも割安 | リース料よりも割高 |
上記の表の内容について、各項目をより詳しく見ていきましょう。
PCの契約期間
リース・レンタルそれぞれの契約期間について詳しく解説します。
リース
リースは税務の関係上、法的に定められた耐用年数に基づいて契約期間が決まっています。
契約期間の具体的な算出方法は、貸借する対象の法廷耐用年数が10年未満の場合、「法定耐用年数×70%(端数切捨)」で計算されます。PCの法定耐用年数は4年のため「4×70%=2.8(年)」となり、基本的には2年以上の契約期間となります。
また、契約終了前に解除する場合、残りの契約期間分の費用を一括で支払う必要があります。この場合、「リース料÷契約年数」を基準として残りの支払い額を算出します。
リース契約終了後の所有権は、「所有権移転ファイナンスリース」と「所有権移転外ファイナンスリース」の2種類の取引形態に分かれます。
所有権移転ファイナンスリース
- 契約終了を以てPCの所有権が借り手に移行し、借り手の所有物となる
- ローンを組んでPCを買い取るイメージ
所有権移転外ファイナンスリース
- 契約終了後も再リース料や買取費用を別途支払うことで、引き続き借り手が利用できる
- 所有権はリース会社が保持する
一般的には、所有権移転外ファイナンスリースを採用しているケースが多いです。
レンタル
レンタルの契約期間は、短期契約と中長期契約の2つに大別できます。主流となっているのは短期契約で、1日・1週間・1カ月と、リースと比べて短いスパンでPCを貸借できます。
中長期レンタルでは、1年以上の契約ができ、満期前に契約解除した場合の違約金はかかりませんが、リースと同じく満期までの差額分を清算する必要はあります。
レンタルの契約終了後は、PCをレンタル会社に返却します。特別な事情がない限り、リースのようにPCが譲渡されることはありません。
PCが届くまでの期間
リースは、リース会社が販売メーカーからPCを購入してから借り手に貸し出すため、PCが届くまでに数週間程度かかります。
一方でレンタルは、レンタル会社にPCの在庫がある場合、翌日配送などすぐに発送されるため、リースと比べて短期間で届く場合が多いです。
何らかの事情ですぐにPCが必要な場合は、素早く手配されるレンタルを活用すると良いでしょう。
PCの保守・修繕義務
PCが破損・故障した場合のリース・レンタルそれぞれの保守・修繕義務について解説します。
リース
基本的に保守・修繕の義務は、借り手側に発生します。一般的にリース契約には、保守・修繕のサービスは含まれておらず、日常的なメンテナンスやPCが故障した場合の修理は借り手が行わなければなりません。
そのため、リース会社とは別に販売メーカーやメンテナンスと別途保守契約を結び、PCの保守・修繕のサービスを用意しておくケースも多く見られます。
レンタル
リースとは異なり、借り手ではなくレンタル会社に保守・修繕義務が発生します。そのため、原則的にPCのメンテナンスや故障時の修理などは、レンタル会社が行います。また、災害などでPCが破損・故障した場合においても、レンタル会社に保守・修繕義務が発生します。
料金体系と料金相場
リース・レンタルそれぞれの料金体系と料金相場について詳しく見ていきます。
リース
月々の料金は「PC価格×リース料率」で算出されます。この内訳は「PCの購入費用」「金利」「動産総合保険」「手数料」となっており、これらに加えて固定資産税も必要になります。
PCリースのおおよその料金相場は月々3,000円~5,000円と、レンタルに比べて割安です。
レンタル
あらかじめ設定された一定の料金が月々の支払額になります。日・月などの単位での貸し出しを前提としているため、リースのように料金が変動することはありません。
PCレンタルのおおよその相場は月々7,000円~12,000円と、リースよりも割高に設定されています。
会計や税務の勘定科目
税法上の取り扱いにおいて、リースは、勘定科目の「リース料」として損金計上する場合と、勘定科目の「リース資産」として資産計上する場合があります。リースは「ファイナンスリース」「オペレーティングリース」の2つに大別でき、それぞれのリース形態によって会計処理の方法が異なります。
レンタルの場合は、PCの所有権がレンタル会社にあるため、勘定科目の「賃借料」を用いて経費計上できます。
以下では、リースのそれぞれの形態の会計処理について解説します。
所有権移転ファイナンスリース
所有権移転ファイナンスリースでは、契約成立時からPCを資産として考え、契約期間が終了した時点でPCの所有権が借り手に移行します。会計処理においてもローンによる資産の購入と同様の手順が踏まれ、貸方は「リース債務」、借方は「リース資産」としてPC価格の全額を計上します。
毎月のリース料金支払い時には、月額料金を分割、リース債務と支払利息を分けて借方に記録し、合計金額を現貯金として貸方に仕訳します。また、決算時にはリース資産の金額に基づき、減価償却を算出します。
所有権移転外ファイナンスリース
所有権移転外ファイナンスリースでは、PCの所有権がリース会社にあり、PC本体もリース会社に返却します。そのため、決算時には「リース期間定額法」を適用し、リース契約期間を法定耐用年数と残存価額をゼロとみなして会計処理します。
リース契約の締結時や月々のリース料金の支払いは、所有権移転ファイナンスリースと同じ手続きが行われます。また、決算時には、リース資産の総額と契約期間から月ごとの金額を算出し、減価償却費を計算して記帳します。
ただし、借方が中小企業である場合や少額のリースである場合、一定の条件付きではあるものの、下記で解説しているオペレーティングリースと同様の、簡略化された会計処理を用いることも可能です。
オペレーティングリース
オペレーティングリースは、PCの賃借契約として扱われるため、単純に「賃借料」として考えます。会計処理はシンプルで、契約時に特別な仕訳を行う必要はありません。月々のリース料金の支払い時には、貸方は現預金、借方はリース料として計上します。
また、オペレーティングリースではPCを資産として扱わないため、決算時に減価償却費を計上する必要もありません。
IFRS16号による会計処理
国際会計基準審議会が策定する会計基準(IFRS)により、IFRSを任意適用している企業には、2019年からIFRS16号(新リース会計基準)が適用されています。IFRS16号では、オペレーティングリースとファイナンスリースの区分を廃止し、いずれの場合でも資産計上するとされています。この点は注意しておく必要があります。
PCを廃棄する際の対応
リース・レンタルで利用しているPCの廃棄に関しては、所有権の所在がどこにあるかによって対応が変わります。
リース・レンタル会社に所有権がある場合
リース・レンタル会社に所有権がある場合、借り手が賃借している会社にPC本体を返却し、PCの廃棄はリース・レンタル会社が行います。ただし、リース・レンタル会社が行うのは基本的にPC本体の処分のみのため、返却前のデータ消去に関しては借り手側で行う必要があります。
また、数百台以上の単位でPCをリース・レンタルしている場合、個別のPCのデータ消去や返却のための梱包の手間や、返却までの保管スペースの問題が出てくる可能性があります。これらの対処も行ってくれる会社ばかりではないため、リース・レンタルを行う際には、契約終了時の対応も考慮して利用する会社を選択すると良いでしょう。
借り手に所有権がある場合
所有権が借り手にある場合、「回収費用」「データ消去」「証明書発行の手数料」「リサイクル費用」といった費用を借り手側が負担しなければなりません。
PCにリサイクルマークが付いている場合は、販売メーカーに依頼することで、無料廃棄してもらえるケースもあります。その際、配送時の費用やデータ消去、証明書発行の手数料などは、借り手側が負担する必要があります。
PCのリースのメリット・デメリット
どのようなサービスも特徴を理解したうえで利用することが大切です。ここではPCのリースの特徴をメリット・デメリットに分けて解説します。
PCのリースのメリット
PCのリースには以下のようなメリットがあります。
- 高性能・高価格帯のPCを利用できる
- 初期費用を抑えられる
- ランニングコストを把握しやすい
- 全額を経費で計上できる
高性能・高価格帯のPCを利用できることがリースの大きなメリットです。耐用年数に合わせて契約すれば、常に最新のPCを利用し続けることもできるでしょう。
新規事業を立ち上げる際や部署単位でPCをまとめて導入する際には多額の費用が必要になりますが、リースであれば初期費用を抑えてPCを導入できます。
また、ランニングコストを把握しやすいため、資金計画を練りやすいでしょう。月額にかかる料金の全額を経費で計上できるのも特徴です。
PCのリースのデメリット
メリットがある一方で、リースには以下のようなデメリットがあります。
- 保守・修繕義務を請け負う必要がある
- 中途解約ができない
リースでは、保守・修繕の義務が借り手にあります。日常的なメンテナンスや故障・破損時の修理などの維持管理費用は、全額借り手が負担しなければなりません。
また、PCを使用する中で、使いにくい・自社に合わないと感じても、中途解約ができません。どうしても中途解約したい場合は、前述した通り、残りの契約期間分のリース料金を一括で支払い、半ば強制的に契約を満了するしかありません。リース会社によっては違約金が発生する場合もあります。
PCのレンタルのメリット・デメリット
続いて、PCのレンタルのメリット・デメリットを紹介します。
PCのレンタルのメリット
PCのレンタルには以下のようなメリットがあります。
- PC導入時の業務や保守運用を委託できる
- 契約期間の自由度が高い
- 中途解約ができる
- 無償で交換や修理などのサービスが受けられる
PCのレンタルでは、キッティングやクローニングといったPC導入時に必要な作業や、導入後の保守・修繕をレンタル会社に委託できます。情シスにとっては、手間や時間のかかるPC管理業務から解放され、DX推進やセキュリティー構築といった付加価値の高い業務に注力できるようになります。
1日~1週間単位の短期で貸借することも可能なため、リースと比較して契約期間の自由度が高いのも魅力でしょう。
また、レンタルでは中途解約ができます。PC本体の購入代金の回収が必要ないため、レンタル会社も契約期間にこだわる必要がありません。ただし、契約期間の残りのレンタル費用を清算する必要はあるため注意しましょう。
レンタル会社に保守・修繕の義務が発生するため、借り手は定期メンテナンスや修理などの費用を負担する必要がありません。レンタル会社から無償で交換や修理といったサービスを受けることができます。
PCのレンタルのデメリット
PCのレンタルには以下のようなデメリットも存在します。
- 料金が割高
- PCの選択肢が限られる
保守・修繕、保険、固定資産税負担といった費用はすべてレンタル会社側が負担してくれますが、その分月額料金は割高となっています。
また、レンタル会社が保有するPCの中からしか機種を選べないため、選択肢が限られます。基本的にレンタル会社が所有しているPCは中古品であり、型が古い製品だったり、希望するスペックのPCがなかったりする場合もあります。
PCのリース・レンタルの手順・流れ
PCのリースやレンタルは、具体的にどのような手順・流れで利用できるのでしょうか。ここからは、リース・レンタルそれぞれの申し込みから利用までの手順・流れについて解説します。
PCのリースの手順・流れ
PCのリースは、以下のような手順でリース契約を行い、PCを賃借できます。
1.見積書取得・リース会社への申し込み
借り手は、希望するPCの見積書を販売会社・メーカーから入手し、リース会社へ申し込みを行います。PCの見積書とリース期間から、リース会社がリース契約の見積書を作成し、借り手に提出、双方が合意した場合に契約が締結されます。
2.PC本体の発注・納品・リース開始
リース会社は、契約内容に基づいて販売会社・メーカーにPCの発注を行い、借り手の元に配送します。その後、手元に届いたPCを借り手が検収し、希望要件に合っているかを確認して問題がなければ検収完了証を提出します。
借り手が検収完了証を提出することで、リース契約が正式に開始され、借り手はPCを利用できるようになります。
3.契約期間終了
届いたPCは一定の契約期間の利用後、返却するか再リースするかを検討します。一旦返却し、PCの機種を刷新して再びリース契約を行うといった選択肢もあるでしょう。
PCのレンタルの手順・流れ
続いてPCのレンタルを行う際の手順・流れについて見ていきます。
1.申し込み・レンタル会社への見積もり依頼
借り手は、使用目的・必要台数・PCの希望スペック・契約期間をレンタル会社に伝え、見積書を依頼します。早急にPCが必要な場合はその旨を伝え、最短で受け取れる日時を確認しておきましょう。
申し込みが完了すると、指定したPCが素早く発送されます。状況・条件によっては翌日に受け取ることも可能です。
2.届いたPCのチェック・レンタル開始
借り手は手元にPCが届いたら、希望要件に合ったPCであるか、動作に問題がないかをチェックします。PCに問題・故障がある際は、代替のPCが提供されることになります。PCをチェックして特に問題がなければ、レンタルによる利用が開始されます。
3.契約期間終了
レンタルの契約期間が終了したら、PCを梱包してレンタル会社に返却します。レンタル会社によっては返却期限が設定されているため、事前に確認しておきましょう。レンタルを延長することも可能です。
PCの導入費用を抑えたい場合はリースやレンタルを上手に活用しよう
企業はどのような基準でPCのリースやレンタルを利用すれば良いのでしょうか。ここでは、リース・レンタルそれぞれの推奨ケースを解説します。自社の目的や状況に沿ってPCの導入を進めることが大切です。
PCのリース・レンタルがおすすめの企業/状況
大前提として、PCは月額料金を支払って借りた方が良いのか、購入した方が良いのかを判別することが重要です。リースやレンタルでPCを貸借した方が良い企業や状況は以下のような場合です。
- 新規開業やオフィス増設などで、初期費用を抑えてIT環境を整えたい
- これからテレワークを導入しようとしており、一度に何十台、何百台のPCが必要
初期費用を抑えたい場合や導入台数が多い場合は、PCのリースやレンタルを検討してみることがおすすめです。
PCのリースがおすすめの企業/状況
PCを貸借した方が良い企業の中でも、以下のような場合はリースがおすすめです。
- 導入したいPCが決まっている
- 最新機種を導入したい
- スペックを重視したい
基本的にリースは、性能に優れた高価格帯のPCを導入したいと考えている企業におすすめの方法です。
PCのレンタルがおすすめの企業/状況
PCをレンタルした方が良い企業は、以下のようなケースに該当している場合です。
- 繁忙期と閑散期の差が大きい
- 急にPCが必要になった
繁忙期と閑散期の差が大きい企業は、繁忙期のときにだけ増員して業務を行うケースが多いため、短期間だけPCを貸借できるレンタルがおすすめでしょう。また、比較的すぐに届くため、何らかの事情により急にPCが必要になった場合もレンタルが役立ちます。
リース・レンタルは長期的にみると購入より高額になることも
月額料金で見るとPCを購入するより格安なリース・レンタルですが、長期で見たときの総額では、購入よりも高額になる場合があります。そのため、リースやレンタルの特徴、メリット・デメリットを踏まえ、購入とも比較検討することが重要です。
まとめ
PCのリースとレンタルには、それぞれ特徴やメリット・デメリットがあるため、しっかり理解しておく必要があります。
リース | レンタル | |
---|---|---|
借り手が希望するPCをリース会社が購入して賃借する | レンタル会社が所有するPCから選択して賃借する | |
所有権 | リース会社 | レンタル会社 |
契約期間 | 比較的長期(最低2年以上) | 比較的短期(日単位、月単位)可能 |
中途解約 | 原則不可 | |
契約終了後 | 返却または再リース | 返却 |
PCが届くまでの期間 | 一定期間必要 | 比較的短い |
保守・修繕義務 | 借り手 | レンタル会社 |
料金体系 | PC価格×リース料率 | 一定の料金設定 |
料金相場 | 比較的レンタル料よりも割安 | 比較的リース料よりも割高 |
PCのリースは、PCのスペックにこだわることができ、レンタルに比べて料金が割安であるため、長期契約を主とした利用に向いています。しかし、保守・修繕の義務が借り手にあるため、日々のメンテナンスや故障時の修理などは、借り手が負担しなければなりません。
PCのレンタルは、1日・1週間など短期契約を行うことができ、届くまでの期間も短いため、迅速にPCを利用できます。一方で、リースよりも月額料金が割高で、レンタルするPCを細かく指定することができないデメリットがあります。
PCの導入を検討する際は、リースやレンタルも選択肢の1つになります。自社の状況や用途に応じて、最適なPCの導入方法を選択しましょう。