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新型コロナウイルスの感染対策として、「テレワーク」が注目され、日本の働き方が大きく変わろうとしています。昨年度(2020年度)の新入社員が「入社式なし」「在宅勤務からスタート」することが多かったのに対し、2021年度入社のみなさんは、新型コロナ感染対策を実施した上で、出社とテレワークを組み合わせた形での社会人生活が始まったかと思います。
テレワークだと、「満員の通勤電車に乗らなくていい」「面倒な”おつきあい”がなくていい」「自分の時間を確保できる」という声がある一方で、「同期や先輩とのコミュニケーションがとりにくい」「会社の雰囲気がわかりづらい」「他部署の人や仕事を覚えられない」などの悩みを耳にします。
本記事では、コロナ禍における働き方はそれ以前と比べどう変化したか。変化の中で見えてきた課題に対し、どう対処しているのか。
そして、最後には、長年テレワークを推進してきたコンサルタントとして、また、企業の経営者として、みなさんへの「これからの働き方アドバイス」も、お伝えしたいと思います。
「テレワーク」と「リモートワーク」は違うの?
コロナ禍において、公共交通機関やテレビ等で何度も耳にした「テレワーク」という言葉。みなさんは、その本当の意味をご存じでしょうか?
「リモートワークとテレワークって、同じ意味でしょう?」
「テレワークって、電話の仕事みたいで、ダサい」
そんな声も聞こえます。言葉というのは、使われ方によって変化するものですが、実は「テレワーク」には、「リモートワーク」とは違う歴史や思いがある、という会社の先輩も知らない、ちょっとした「ウンチク」から始めましょう。
たとえぱ、『在宅勤務』という言葉は、「在宅」と「勤務」が組み合わされた用語ですね。「在宅」は家にいること。「勤務」は「会社などに勤めること」。つまり、『在宅勤務』は「会社員が自宅で勤務する」ことです。『リモートワーク』は、同様に「リモート(遠隔)」と「ワーク(仕事)」という言葉が組み合わされた用語で「離れた場所で仕事をする」という意味ですね。
これに対し『テレワーク』は、一般的な言葉が組み合わさった用語ではなく、実は「造語」です。離れたという意味の接頭語「テレ」と、「ワーク」が語源ではあるものの、新しい言葉として定義されています。そして、その定義をしているのは、『国』です。
『情報通信技術(ICT)を活用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方』
これが、日本における「テレワーク」の定義。「少子高齢化」「労働力不足」「都市集中」「大災害」など、日本のこれからの課題を解決する働き方として、国が長く推進してきました。でも、なかなか広がらなかったのも事実です。
しかし、コロナ禍でその状況が一変しました。今こそ、みなさんが、テレワークという働き方の意味を正しく理解し、自分事として正しく実施していただくことに、日本の未来がかかっていると言っても過言ではありません。
コロナが終息したら「テレワーク」を止める?
「テレワークを止めて、出社に戻る会社が多い。」という話を、ニュース等を見かけることがあります。確かに、昨年春に発出された緊急事態宣言解除後は、テレワークを止めて出社に戻る企業が続出しました。ただそれは、準備無しで無理をしてテレワークを実施した企業が多かったからです。自宅では仕事ができず、「在宅勤務」といいつつも、実際には「自宅待機」に近かった会社も少なくないと聞きました。
以下、昨年の緊急事態宣言前後の「テレワーク実施企業」の推移グラフをご覧ください。
コロナ禍におけるテレワーク実施企業の推移
確かに急激に実施率が下がっていますが、そこから、少しずつではありますが、増える傾向にあります。これらの企業にヒアリングをしていると、
「コロナ禍でテレワークの重要性がわかった」
「課題は多いが、新しい働き方に移行したい」
「テレワークの課題が見えたので、解決したい」
そんな、前向きな声が聞こえてきました。
そこで、働く人に「自宅での勤務で効率が上がったか」と聞いたアンケートをご覧ください。
日本生産性本部「第5回 働く人の意識に関する調査」
「自宅での勤務で効率が上がったか」という調査
昨年の緊急事態宣言から、「効率が上がった」という人が増え続けています。これは、働く人がテレワークに慣れてきたことも含め、継続した企業がテレワークの課題解決にとり組んでいる表われではないでしょうか。
テレワークの課題は解決できるの?
コロナ禍で多くの社員が長い期間テレワークすることによって、課題もたくさん見えてきました。みなさんも、いろいろ感じていらっしゃると思います。しかし、課題をそのままにしていては、せっかく広がったのに、戻ってしまうことになりかねません。今さら「毎日満員電車」はつらいですよね。
パソコン等の機材やインターネット環境の整備が進むとともに、『コミュニケーション』と『マネジメント』の課題が浮き上がりました。
コロナ禍で見えてきた「コミュニケーション」と「マネジメント」の課題
これらの課題を解決に導いてくれているのが、新しいICTツールです。
仲間や上司の様子が見えないため、声をかけにくい。その結果、チーム業務が進まなかったり、孤独感を感じたりするという、コミュニケーション不足を原因とする課題に対して、「バーチャルオフィス」というツールが注目されています。オフィスでのコミュニケーションは、従来からのWeb会議とチャットツールだけではカバーしきれなかったのです。そこで、クラウド上に仮想のオフィスを用意することで、毎朝、そこに出勤。仕事仲間の様子を見つつ、テレワークでも一緒に仕事をすることができます。
バーチャルオフィスツールの例「Sococo」
一方「自宅だと仕事の効率が落ちたり、逆に働き過ぎたりしてしまう」というマネジメントの課題に対して、「テレワークでも時間を管理し、仕事を見える化する」ツールが注目されています。従来からある勤怠管理システムの「jinjer」や「ジョブカン」等がテレワーク対応したり、小間切れであっても、時間を把握し画面を簡単に確認できる「F-Chair+」、顔認証機能を持つ「テレワークサポーター」など、それぞれ特徴があります。このようなツールの活用により、プライベートと仕事を曖昧にせずに働くことができます。「自分が仕事をしていることを証明」でき、「上司にさぼっていると思われているのでは?」というストレスからも解放されます。
テレワークは、新しい働き方です。それゆえに、初めてぶつかる壁も多いでしょう。そんなとき、若手のみなさんが「テレワークは、〇〇ができないからダメ」と戻ってしまうのではなく、「こういう道具を、こう使えば、テレワークでもできるよね」と、新しい発想で取り組んでいただけたらと思います。
テレワーク5つのお願い
いかがでしたか? 「テレワーク」について、少しイメージが良くなったら嬉しい限りです。テレワークは、日本の社会課題だけでなく、SDGsといった世界の動きなど、さまざまなキーワードに答えを出していく重要な働き方です。
テレワークがソリューションを提供する課題等のキーワード
最後に「テレワーク」という働き方が当たり前になる時代を生きるみなさんへ、5つのアドバイスです。
1つ「テレワーク」に真摯に取り組もう
「テレワーク」は、みなさんがこれからの時代を生き抜くための、未来の働き方です。
「在宅勤務は通勤が無いから楽」とか、「自宅だと、ついのんびり仕事をしてしまう」とか、「まわりの目が無いと、気がゆるんじゃうよね」といった考えでテレワークをしていると、いずれ自分が大変になります。この働き方を定着させるために、テレワーク環境下ではルールを守り、セキュリティを意識し、生産性を高める働き方を心がけることが、みなさんにとって働きやすい未来を作ることになります。
2つ「テレワーク」でも、しっかりコミュニケーションをとろう
テレワークだからコミュケーションがとりにくい、と思い込まないでください。離れているからこそ、意識的にコミュニケーションをとりましょう。オンラインだからこそ、自分の意思を伝える努力が必要です。
たとえば、オンライン会議。カメラ映り、音声、相手に与える印象など、ちゃんと意識しましょう。「会議だから声だけで十分」という部下と、目を合わせ、話にうなずきながら、表情が見える部下と、上司に与える印象は各段の差があると言われています。もちろん、伝わる熱量にも影響しますよね。
長年テレワークを推進してきたコンサルタントとしてはカメラONを基本にすべきとお勧めしています。
3つ「テレワーク」でも、時間を意識して働こう
「テレワークでは、管理されたくない」という人も少なくありません。テレワークなのに、時間にしばられたくない、と思うかもしれません。でも、時間は無限ではありません。会社にいるのと同様に、テレワークでも、サボらず、働き過ぎず、「時間あたりの成果を高める」働き方を心がけてください。
今から「タイムマネジメント」を意識して、効率よく働くことを心がけましょう。今からしっかり身につけておくことで、将来も、子育てや家族との時間を大切にしつつ、働き続けることができます。
4つ「テレワーク」だからこそ、ICTツールのルールを守ろう
テレワーク時はICTツールの使い方など、細かなルールがあります。たとえば勤怠ツールの場合、テレワークの日でも、オフィスに出社した時と同様に、仕事を始めるときに「出社」、終わる時に「退社」の操作をしましょう。チャットツールでも、「連絡可」「休憩中」等、自分のステータスを切り替えるルールがあれば、小まめに切り替えましょう。ついつい忘れてしまうことがあるかもしれません。でも、テレワークにおいては、それはあなたの「勤務態度」となります。
テレワークをしている時でも、オフィスにいる時でも、ルールを守って、しっかり仕事をしている自分をアピールしましょう。
5つ「テレワーク」だからこそ会うことを大切にしよう
このコラムには「テレワーク」がたくさん登場していますが、「テレワーク」が最高の働き方だと押し付けているわけではありません。テレワークすることが目的ではなく、テレワークできる選択肢があることが重要です。自宅も、サテライトオフィスも、カフェも、もちろんオフィスも、大切な仕事場であることに変わりはありません。
離れていても仕事ができる。だからこそ、「会うこと」を大切にしたいですね。毎日会っていると、その大切さを忘れがちです。久しぶりにオフィスで会えたので、たまにはゆっくり話をするか・・・という風になるといいですね。
まとめ
以上、5つのアドバイスをさせていただきました。これから社会人として活躍するみなさんが、テレワークのメリットを最も多く享受するということは間違いありません。
だからこそ、環境下でのルールやセキュリティ意識をしっかり持ち、適切に実施していただきたいと、心から願っています。