現在、多くの企業が多様化していく社会で生き抜くために“未来の働き方”を模索しています。2017年11月17日(金)から勤労感謝の日である11月23日(木)に渋谷ヒカリエを中心に開催された“働き方の祭典”「Tokyo Work Design Week 2017」(以下、TWDW 2017)には、そのヒントが多く隠されていました。
7日間の会期中に“働き方”をテーマにした多角的なプログラムの中でも、Work x IT編集部が注目したのは、『パワーオブオフィス~働く場の力を再考する~』。
コワーキングスペースやリモートワークにテレワークなど働く場は、オフィスだけに限らない時代。そして、改めて考えてみたいオフィスの在り方。“ワークプレイス=働く場”の意義を、澤田 伸氏(渋谷区 副区長)、谷尻 誠氏(SUPPOSE DESIGN OFFICE 共同主宰)、山下 正太郎氏(コクヨ株式会社 クリエイティブセンター 主幹研究員/WORKSIGHT編集長)、横石 崇氏(TOKYO WORK DESIGN WEEK オーガナイザー)の4人とプログラム参加者によるトークセッションからを探っていきたいと思います。
あなたも一緒に未来の“ワークプレイス=働く場”を創造してみましょう。
オフィスマニア・山下氏が語る「世界はこのように変化している!」
“ただのオフィスマニア”と自己紹介した山下正太郎氏ですが、休日もオフィスのことを考え、プライベートの旅行でもオフィスを訪問し、結果的にこれまで世界30カ国50都市以上のオフィスを見てきたという“オフィス専門家”とも言うべき人物です。山下氏は世界のオフィス変革についてこう語ります。
「サンフランシスコのAirbnd(エアーアンドビー)、シリコンバレーではGoogleやAppleがこれまでとはレベルの違うオフィスを作っている。どこでも働ける時代なのに、オフィスに投資をしているんです。いま、企業は集まって働くことに見直しをかけている時代だと思っています」(山下正太郎氏)
働き方改革がまだまだ浸透していない日本では、いままさにリモートワークやテレワークが徐々に推奨されている段階なので、意外な事実です。その象徴的な例として、米Yahoo!を挙げて説明します。
「アメリカのYahoo!のCEO(2012年7月~2017年3月)だったマリッサ・メイヤーが就業規則を変えて、在宅勤務をやめてオフィス勤務にしようとしたんです。狙いは、“コミュニケーションをしっかりとってイノベーションを生み出す”ということなんですね。オフィスに集まることが新しい価値を生み出す“源泉”なのだ、というのがオフィス投資をする企業共通の理念だと思います」(山下正太郎氏)
では、世界にはどのようなオフィスがあるのでしょうか?
山下正太郎氏が紹介するアッと!驚く世界のオフィス
◆ Facebook……新本社屋“MPK20”では全長400メートルのオフィスに2000人が入り乱れながら働いている。空間を隔てる壁がほとんどないので、思わぬ人との出会いから新しいものが生まれることを期待されている。
◆ Zappos.com(ザッポス)……会社から予算を貰い、個性的な飾り付けなど自分たちでオフィスを作った。テンションがあがる空間を自分たちで創りあげ、世界中に“WOW”を生むためのサービスを提供するのが目的。
◆ Deloitte(デロイト)……世界的会計監査事務所のオランダ本社。オフィスビル“The Edge”に2万8000個のセンサーが設置されており、従業員の動きを感知し、空間全体で出会いをコントロールすることが計画されている。すでに暖房、照明、購買などがアプリでコントロール可能で従業員の効率をあがるハイテクオフィス。
さらに山下氏は、2017年9月に日本に進出したニューヨーク発のコワーキングスペース:WeWorkに言及しながら、新しいオフィスの在り方を提案してくれました。
「イノベーションを生むために特定の場所に人を集めるオフィス作りが進んでいる一方で、すでに盛り上がっている都市のように人が集まるところにオフィスを作るという発想も進んでいます。コワーキングスペースのWeWorkもそうですが、Googleもキャンパスという無料のコワーキングスペースをスタートアップが集中する世界6都市に開設をして、そこに集まる優秀な人材といち早く繋がることを模索しています」(山下氏)
効率が良いからオフィスに人が集まる。人が集まる場所にオフィスを作る。アプローチに違いがあるようにも思えますが、実は両立することも可能なこの2点。日本だとヤフー株式会社の新本社にある「LODGE」が近い存在かもしれません。
副区長が熱弁する渋谷区が挑むワークプレイス改革とは!?
「ちがいをちからに変える街。渋谷から」を標語に、『TWDW2017』の会期とほぼ同時期に、『DIVE DIVERCITY SUMMIT SHIBUYA』と題した都市型サミットを開催するなど、ダイバーシティインクルージョンを進めている渋谷区。その狙いについて、澤田氏は力説します。
「多様性があるからイノベーションが起きる。多様2性がないところにはイノベーションは絶対起きない。朝から晩まで同じ会議室で商品開発の話をしていても絶対アイデアなんて生まれない」(澤田氏)
元々飲料メーカー、広告代理店、外資系アセットマネジメントなどでマーケターを務めていた澤田氏の人物像は、“副区長”というお堅いパブリックイメージとは大きくかけ離れている。その民間と行政、双方の経験は、新しい渋谷区役所作りにも反映されています。
「働いている人間にとって、よりクリエイティブに脳を刺激してくれるようなオフィスを作らない限り、お客様の満足度は提供できない。これは一般的な民間のロジックですが、行政ではなかなか理解を得ることができなかった。いままでは、パソコンと机があれば良かった。そうではない。壁の一切ない、オープンな場所を作ります。業務を徹底的に改善して、クリエイティブな時間を増やして、質の高いサービスを提供していきます」(澤田氏)
2018年10月に竣工予定の渋谷区役所は、これまでの行政にはなかった“ワークプレイス=働く場”になりそうだ。周りからは雑音が多いと前置きしながらも、澤田氏はワークプレイスの重要性をより詳しく、熱く語ります。
「血税で給料もらっているんだから、そんなにお金をかけるんだったら福祉を充実させろと言われるんです。そこで我々はすべてをKPI設定して、可視化した財務戦略と組み合わせてルールを作りました。5年以内に100億円以上の行財政効果が生まれるんです」(澤田氏)
その内訳として、コピーの出力量数も変え、ペーパーレス化を進める一方で、1時間あたりの人件費単価から業務生産性まですべて計算しているとのこと。うちの経営陣は古臭い体質だから……なんて働き方改革を諦めている方にとって、澤田氏の改革は非常に勇気づけられるものではないでしょうか。
“未来の働く場”はどのようなカタチになるのか
新鮮なトピックが交わされるなかで、自由なワークプレイス実現の弊害になっているセキュリティ問題。その点に関しては、谷尻 誠氏と山下氏は独自の見解を述べます。
「セキュリティやフラッパーゲートをどうするか?という話は出てくるんですけど、2年後くらいにはフラッパーゲートはなくなっているんじゃなかと思っています。神社の鳥居のような概念がいいんですよね。仕切ってないのに、結界が引かれているような感覚。これはもうテクノロジーに強い人たちにオーダーするしかないって思っていますけど(笑)」(谷尻氏)
いわゆるハード面は、空間や制度は設計士である谷尻氏や副区長である澤田氏が構想する。そして、ソフト面も進化は顕著だ。クラウドストレージによるデータ保存や仮想デスクトップ、遠隔データ消去など様々なサービスが生まれている。こういった諸問題は、相互関係によって自然と解決されていき、コワーキングスペース、テレワーク、リモートワークは加速度的に進んでいくと言います。
「昭和の時代にお母さんが赤ちゃんをおんぶ紐でバッテンにして抱っこしながら商売をしている姿。あれが未来なんじゃないかなって思うんです。生活と働くことが一体になっている。どんどんシームレスになっていって、世界中のどこでも働く場所があれば、仕事と生活を分けなくなると思います」(谷尻氏)
その発言を受けて、澤田氏はこう続けます。
「“ワークプレイス=働く場”が多様化すればするほど、人と人が直接会う価値が増してくる。例えば握手したり、ハグすることの価値がいまの数十倍、数百倍になってくると思います。クリエイティビティを発揮することのできる“場”はずっとなくならないと思います」(澤田氏)
まとめ
今回は働き方改革のなかでも、“ワークプレイス=働く場”にフォーカスした記事をお届けしました。現在の日本では、まだまだテレワークやリモートワーク。コワーキングスペースなどが徐々に認知されている段階ですが、世界的な流れではさらにフレキシブルで多彩な“場”が創造されていることが理解できます。
大事なのは、当初の目的を失わないことでしょう。なんのためのリモートワークなのか?テレワークなのか?オフィスはなんのために存在するのか?この目的が見極めることができれば、多様な変化にも企業の競争力を失うことなく対応できるのではないでしょうか。